第25話 とあるロリババアの懺悔
文字数 3,380文字
子どもの頃からボクは天才と呼ばれていたんだ。
理系全般が大得意で、三歳の時には中学の数学を余裕で解いていたよ。タカシ君については親に日本語の解釈をしてもらっていたけどね。
天才なボクは超お嬢様が通う小学校に入学した。学校から是非にと請われてね。
ところが、実際に登校してみると、あまりにも教師が雑魚すぎる。あまりにも退屈だから、授業中にノーパソでゲームを作って遊んでたよ。
そしたら、怒られた。マナー違反だと。なんだよ、インチキマナー講師め!
えっ、ボクが悪い?
それはおいておいて、ボクは一ヶ月で小学校に行かなくなったよ。
家でゲームを開発して、とあるゲーム会社のサーバをハッキングしてプレゼントしてあげたんだ。売れっ子プロデューサー氏はボクの価値を認めてくれて、ボクのゲームが発売されることになった。音楽とキャラデザとかだけ変えてな。
ゲームはバカ売れ。全世界で三千万本だよ。大金持ちになって、平凡なだけが取り柄の研究者父にゲーム御殿を買ってやったよ。
で、稼いだ金で渡米する。アメリカってさ、ボクみたいな子を受け入れてくれんだぜ。そのぶん、自己責任も求められるけど。
とにかく、ボクは向こうで勉強した。十二歳で医学校に入学する。大学の医学部みたいなところだ。
医学校の三年目。研修医みたいな立場で働くことに。ボクが配属された病院は老人医療に強いところだった。
指導教官もアンチエージングが専門分野でさ。いかに人間は若々しさを保って、人生を豊かにすごすか。それが、イケメン師匠の目指すところだった。
すげーかっこよく思えるかもしれないけど、奴は最低だった。
とてつもない女好きだったんだ。彼の理想は、見た目は若く美しく、精神的には大人の女性を生み出すことにあったんだ。なんかロリババアみたいだろ。
当時、ボクは巨乳だった。アメリカ人に比べたら普通だけど、日本の女子中学生を圧倒的に上回ってたんだぜ。
奴は日増しに大きくなるボクの胸を挨拶代わりに触ろうとしてくるんだ。最初は揉まれたけど、ボクは反撃する技を身につけていく。コインで包丁を持った相手と戦えるようになったのも、セクハラのおかげだ。
十六歳で医学校を卒業したボク。向こうで医師免許を取ろうと思ったんだけど、日本から変なおっさんがボクのところに来たんだ。
イカ臭い大臣だったよ。ぜひ力を貸してほしいと頭を下げられて、ボクは日本に戻ることに。
配属先は高齢化社会対策センター。向こうで書いた論文が評価されてのことだ。
同期には、麗華がいたけど、堅物で喧嘩ばかりしてたよ。
そして、ボクは日本の現状を聞かされた。超高齢化社会の件な。
ボクは自説を上司に述べた。
老人が健康で働けるようになればいいんじゃね。定年が八十歳になれば解決やろ。ってな。
今にして思えば、サラリーマンに殺されそうな意見だけど。
冗談はさておき、どれだけ老人が元気でも日本を取り巻く環境は改善しないんだよ。圧倒的に労働力が不足していて。
というわけで、ボクは最初の意見を自ら取り下げる。新たな道を模索することに。
塾考した結果、思いついたのが――LB計画。正式名称は、ロリババア計画。って、君たち、ボクをバカにすんなし。
真面目な話、ロリババア計画の要は女性にある。
男って体力はあるけど、基本的にアホやろ。童貞君、悪く思え。学力的な能力も低いんだよね。まあ、分野にもよるけど。
くわえて、人口構成を考えた時に、女性の方が多いのはみんな知っていると思う。
つまり、質量ともに富む、女性の活躍が期待されているというわけ。
逆にいえば、女性が能力をいかんなく発揮しなければ、社会を維持できないまである。
そうはいっても、すべての女子にアイドルレベルの輝きを要求しても無理だし。全員がミュ○ズになれるわけじゃないからな。
そこでボクは若い天才に目をつけることにした。分野は異なれど、アイドル級の輝きを放っている子たちね。
すなわち、《Gの遺伝子》を持つ者たちである。《Gの遺伝子》って、天才に共通する遺伝子なのさ。ボクが発見したんだぞ。Gカップになりたいから、《Gの遺伝子》って名前にしたんだが、逆に貧乳になるって意味不明なんだが……。
胸のことは悲しくなるから、さておき。
ボクは天才少女たちの力を活かせないかと考えた。けどな、諸問題を解決するには物理的なパワーが足りないんだよ。
特に、介護とか。
ムッツリ君もわかってるだろうが、力がいるだろ。年寄り国家において、才女がいくら集まってもツラいんや。
理想をいえば、アンドロイドを作って介護してもらえばいいのだが。
十年ぐらい前のSF小説に、介護用アンドロイドが登場する作品があった。最初はマニュアル通りで失敗続きだったアンドロイドが成長していく物語。最後はボロ泣きしたよ。
アンドロイドの課題と希望が提示されていたんだけどな。その作品みたいなアンドロイドを実現するには数十年かかると見込まれる。ボクの頭脳を持ってしても。
数十年? ふざけんな、長すぎだろ。だいいち、経済が低迷したままだったら、いずれは研究費用を削減されるだろう。計画が頓挫する可能性も十二分にある。
それに、ただでさえシンドイ思いをしている若者が耐えるのは無理。
介護用アンドロイド計画は大学の基礎研究でよしなにしてもらうことに。
次に、ボクは考えたのは――。
ナノマシン。
ナノマシンを体内に埋め込み、秘められた力を解放するというもの。
人間は脳の10パーセントしか活用できていないって、よく聞くだろ。
なら、リミッターを解除すればいい。
そうすれば、人間はより明晰な頭脳を手に入れ、生産性は倍増する。
また、脳神経が活発化されることにより、身体能力も向上するのだ。より効率的に肉体を動かせるようになってな。
つまり、脳がすべてを解決する。脳は筋肉なんだな。
これぞ、まさに脳筋。
姿勢制御や人間同様の思考を持つAIが求められるアンドロイドに比べて、ナノマシンは脳の力を解き放てればいい。もちろん、健康への影響も念入りに調査しないといけないけど。
それでも、アンドロイドに比べ、早く実用化できる見込みだった。
ボクの考えた最強のナノマシン計画は……。
最初は天才少女の力を覚醒させ。
徐々に成人女性や男どもにも対象を広げていく。
やがては、老人にもナノマシンを埋め込み、若い脳を手に入れられるようにするんだ。年寄りなのに、若い脳なんだぜ。ロリババアみたいだろ。
日本の全老人をロリババア化する感じかな。
いわば、人類ロリババア計画なり。
上には、《人類ロリババア計画》のタイトルで提出してやったぜ。事前に、麗華に突っ込まれたけど、無視して。
課長のハゲバカ、却下しやがってさー。
駄々こねて辞職をちらつかせたんだ。
どうにか、《LB計画》ということで落ち着いたよ。もちろん、LBはロリババアのこと。
それから、五年にわたって、ボクは開発に打ち込んだ。
そして、試作品が完成したのが、一年半前。秋と言いながら、真夏の気温の日だった。
すぐに計画はフェーズ2に移行する。すでに、マウスでの動物実験は済ませていて、健康面においても問題ないことは判明していた。
とはいえ、いきなり人間にナノマシンを埋め込むのは危険すぎる。
そこで、限られた適性者を選び出し、ナノマシンの調整をすることになったんだ。三年計画でね。
ボクたちの組織は全国から十数人の天才少女を見つけていた。
その中には、小夜と美紅もいた。
今にして思えば、穂乃花が入っていない理由が気になるが……。推測だが、祖父母の死がショックで、《Gの遺伝子》が休眠状態に陥ったと思われる。それが、小夜たちと触れたことがきっかけで、再活性化したのだろう。
まずは、顔合わせということで、適当な理由をつけて、パーティーを開いたんだ。
それが大惨事を引き起こすことになろうとは……。
すまない。
ボクのせいで君たちの運命を狂わせてしまって。
理系全般が大得意で、三歳の時には中学の数学を余裕で解いていたよ。タカシ君については親に日本語の解釈をしてもらっていたけどね。
天才なボクは超お嬢様が通う小学校に入学した。学校から是非にと請われてね。
ところが、実際に登校してみると、あまりにも教師が雑魚すぎる。あまりにも退屈だから、授業中にノーパソでゲームを作って遊んでたよ。
そしたら、怒られた。マナー違反だと。なんだよ、インチキマナー講師め!
えっ、ボクが悪い?
それはおいておいて、ボクは一ヶ月で小学校に行かなくなったよ。
家でゲームを開発して、とあるゲーム会社のサーバをハッキングしてプレゼントしてあげたんだ。売れっ子プロデューサー氏はボクの価値を認めてくれて、ボクのゲームが発売されることになった。音楽とキャラデザとかだけ変えてな。
ゲームはバカ売れ。全世界で三千万本だよ。大金持ちになって、平凡なだけが取り柄の研究者父にゲーム御殿を買ってやったよ。
で、稼いだ金で渡米する。アメリカってさ、ボクみたいな子を受け入れてくれんだぜ。そのぶん、自己責任も求められるけど。
とにかく、ボクは向こうで勉強した。十二歳で医学校に入学する。大学の医学部みたいなところだ。
医学校の三年目。研修医みたいな立場で働くことに。ボクが配属された病院は老人医療に強いところだった。
指導教官もアンチエージングが専門分野でさ。いかに人間は若々しさを保って、人生を豊かにすごすか。それが、イケメン師匠の目指すところだった。
すげーかっこよく思えるかもしれないけど、奴は最低だった。
とてつもない女好きだったんだ。彼の理想は、見た目は若く美しく、精神的には大人の女性を生み出すことにあったんだ。なんかロリババアみたいだろ。
当時、ボクは巨乳だった。アメリカ人に比べたら普通だけど、日本の女子中学生を圧倒的に上回ってたんだぜ。
奴は日増しに大きくなるボクの胸を挨拶代わりに触ろうとしてくるんだ。最初は揉まれたけど、ボクは反撃する技を身につけていく。コインで包丁を持った相手と戦えるようになったのも、セクハラのおかげだ。
十六歳で医学校を卒業したボク。向こうで医師免許を取ろうと思ったんだけど、日本から変なおっさんがボクのところに来たんだ。
イカ臭い大臣だったよ。ぜひ力を貸してほしいと頭を下げられて、ボクは日本に戻ることに。
配属先は高齢化社会対策センター。向こうで書いた論文が評価されてのことだ。
同期には、麗華がいたけど、堅物で喧嘩ばかりしてたよ。
そして、ボクは日本の現状を聞かされた。超高齢化社会の件な。
ボクは自説を上司に述べた。
老人が健康で働けるようになればいいんじゃね。定年が八十歳になれば解決やろ。ってな。
今にして思えば、サラリーマンに殺されそうな意見だけど。
冗談はさておき、どれだけ老人が元気でも日本を取り巻く環境は改善しないんだよ。圧倒的に労働力が不足していて。
というわけで、ボクは最初の意見を自ら取り下げる。新たな道を模索することに。
塾考した結果、思いついたのが――LB計画。正式名称は、ロリババア計画。って、君たち、ボクをバカにすんなし。
真面目な話、ロリババア計画の要は女性にある。
男って体力はあるけど、基本的にアホやろ。童貞君、悪く思え。学力的な能力も低いんだよね。まあ、分野にもよるけど。
くわえて、人口構成を考えた時に、女性の方が多いのはみんな知っていると思う。
つまり、質量ともに富む、女性の活躍が期待されているというわけ。
逆にいえば、女性が能力をいかんなく発揮しなければ、社会を維持できないまである。
そうはいっても、すべての女子にアイドルレベルの輝きを要求しても無理だし。全員がミュ○ズになれるわけじゃないからな。
そこでボクは若い天才に目をつけることにした。分野は異なれど、アイドル級の輝きを放っている子たちね。
すなわち、《Gの遺伝子》を持つ者たちである。《Gの遺伝子》って、天才に共通する遺伝子なのさ。ボクが発見したんだぞ。Gカップになりたいから、《Gの遺伝子》って名前にしたんだが、逆に貧乳になるって意味不明なんだが……。
胸のことは悲しくなるから、さておき。
ボクは天才少女たちの力を活かせないかと考えた。けどな、諸問題を解決するには物理的なパワーが足りないんだよ。
特に、介護とか。
ムッツリ君もわかってるだろうが、力がいるだろ。年寄り国家において、才女がいくら集まってもツラいんや。
理想をいえば、アンドロイドを作って介護してもらえばいいのだが。
十年ぐらい前のSF小説に、介護用アンドロイドが登場する作品があった。最初はマニュアル通りで失敗続きだったアンドロイドが成長していく物語。最後はボロ泣きしたよ。
アンドロイドの課題と希望が提示されていたんだけどな。その作品みたいなアンドロイドを実現するには数十年かかると見込まれる。ボクの頭脳を持ってしても。
数十年? ふざけんな、長すぎだろ。だいいち、経済が低迷したままだったら、いずれは研究費用を削減されるだろう。計画が頓挫する可能性も十二分にある。
それに、ただでさえシンドイ思いをしている若者が耐えるのは無理。
介護用アンドロイド計画は大学の基礎研究でよしなにしてもらうことに。
次に、ボクは考えたのは――。
ナノマシン。
ナノマシンを体内に埋め込み、秘められた力を解放するというもの。
人間は脳の10パーセントしか活用できていないって、よく聞くだろ。
なら、リミッターを解除すればいい。
そうすれば、人間はより明晰な頭脳を手に入れ、生産性は倍増する。
また、脳神経が活発化されることにより、身体能力も向上するのだ。より効率的に肉体を動かせるようになってな。
つまり、脳がすべてを解決する。脳は筋肉なんだな。
これぞ、まさに脳筋。
姿勢制御や人間同様の思考を持つAIが求められるアンドロイドに比べて、ナノマシンは脳の力を解き放てればいい。もちろん、健康への影響も念入りに調査しないといけないけど。
それでも、アンドロイドに比べ、早く実用化できる見込みだった。
ボクの考えた最強のナノマシン計画は……。
最初は天才少女の力を覚醒させ。
徐々に成人女性や男どもにも対象を広げていく。
やがては、老人にもナノマシンを埋め込み、若い脳を手に入れられるようにするんだ。年寄りなのに、若い脳なんだぜ。ロリババアみたいだろ。
日本の全老人をロリババア化する感じかな。
いわば、人類ロリババア計画なり。
上には、《人類ロリババア計画》のタイトルで提出してやったぜ。事前に、麗華に突っ込まれたけど、無視して。
課長のハゲバカ、却下しやがってさー。
駄々こねて辞職をちらつかせたんだ。
どうにか、《LB計画》ということで落ち着いたよ。もちろん、LBはロリババアのこと。
それから、五年にわたって、ボクは開発に打ち込んだ。
そして、試作品が完成したのが、一年半前。秋と言いながら、真夏の気温の日だった。
すぐに計画はフェーズ2に移行する。すでに、マウスでの動物実験は済ませていて、健康面においても問題ないことは判明していた。
とはいえ、いきなり人間にナノマシンを埋め込むのは危険すぎる。
そこで、限られた適性者を選び出し、ナノマシンの調整をすることになったんだ。三年計画でね。
ボクたちの組織は全国から十数人の天才少女を見つけていた。
その中には、小夜と美紅もいた。
今にして思えば、穂乃花が入っていない理由が気になるが……。推測だが、祖父母の死がショックで、《Gの遺伝子》が休眠状態に陥ったと思われる。それが、小夜たちと触れたことがきっかけで、再活性化したのだろう。
まずは、顔合わせということで、適当な理由をつけて、パーティーを開いたんだ。
それが大惨事を引き起こすことになろうとは……。
すまない。
ボクのせいで君たちの運命を狂わせてしまって。