三十二 事件解決 その後

文字数 836文字

 十二月初旬、水曜日、朝、七時。
 長野市大山路の森田家に田上刑事から連絡が入った。
「朝の忙しい時間にすみません。
 昨夜、溝端浩造さん傷害致死の容疑者を逮捕しました。
 森田さんが話してくれたように、不正とは無関係でした。怨恨です・・・。
 オフレコですが、不正と政治献金の問題は、ここ厚木だけに留まりませんから、今後は東京地検が担当することになるでしょう・・・」
 田上刑事はしばらく事件の背景を説明した。

「溝端浩太郎会長が、溝端浩造社長の社葬を行う旨の死亡広告を、明日の全国紙に掲載すると言ってました。
 今後も、森田さんと奧さんに、殺人や不正と政治献金の問題で、ご協力をお願いすると思います。その説は、よろしくお願いします。
 荻原さんからも連絡があると思いますが、不正と政治献金の問題は二人だけの間で留めておいてください。 
 奥様に、助言をありがとうございましたとお伝えください」
 と話して電話を切った。
「智子ちゃん。田上刑事が、事件が解決した、智子ちゃんによろしく、と言ってたよ。
 容疑者は・・・」
 正俊は田上刑事の説明を智子に話した。


 その後、夜。
 荻原からお礼の連絡があった。
 荻原に寄れば、溝端浩太郎会長が溝端バッテリーの社長に復帰したとの事だった。
 荻原は溝端バッテリーの工場長として、妻の多惠は荻原工場長の片腕となって、仲睦まじく働いている。
「実は、多惠に子どもができた。母より先に、堀田に知らせたいと思ったんだ。
 いろいろありがとうな!」
「おおっ!良かったなあ!荻原も、喧嘩しないでガンバレよ!」
「ああ、わかってる。堀田には感謝してる。またリンゴを買いに行く!」
「子どもの生後の遠出は無理だろうから、来年の今頃、リンゴを注文してくれ」
「ああ、わかった。サンフジ四十個、今から予約しておく。
 住所は厚木市・・・」

 智美、お父さんはステキだね・・・。
 お父さん、だいすき・・・。
 智子は、心の声を聞きながら、電話で話す正俊の背後から、正俊の背中に抱きついた。

(了) 
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