十三 座敷童と先祖と子ども
文字数 1,665文字
その頃。
(十一月初旬日曜、朝)
森田家の朝の食卓で、
「智ちゃん、昨夜・・・」
正俊は、昨夜、老人と子供たちが智子の部屋に現れたことを話した。子どもたちが話した内容は説明しなかった。
「ああ、現れたんだね。正俊を認めたんだよ、ご先祖が・・・」
智子はご飯を食べながら、座敷童と先祖が現れたと思った。これで正俊も認められた。森田家の家族になった。何も心配いらない・・・。
「子供たちは六人いた。智子ちゃんと俺を、お母さん、お父さんと呼んでた。その話を、眠ってる智ちゃんに話したら、智ちゃんは、知ってるよって言ってた・・・」
正俊は智子に茶碗を渡し、ご飯をお代りした。
「えっ、そんなこと言ったかな・・・」
茶碗を受けとった智子は何も言えなくなった。以前、祖母が語ったことと正俊が話したことはよく似ていた。祖母の話は子どもが一人だった。
「・・・」
両親と祖父母は黙って二人の話を聞いていた。
「家族がたくさん欲しいと話したから、夢を見たんだね」
正俊は食卓の雰囲気を読んでそう言った。
「いや、そうでもないぞ。家族が増えるんだろなあ・・・」
祖父はそう言って祖母にほほえんでいる。
十二月初旬、土曜日、午前。
十二月にしては暖かい曇り空の日だった。
「セイリ、なかったよ・・・」
朝食後、炬燵にコーヒーカップを置いて、智子は、ソファーの前の位置にいる正俊の隣りに座った。智子の自室は、フローリングに電気カーペットがしかれ、その上に電気炬燵が出ている。
正俊はソファーにもたれたまま智子を抱きしめて頬に唇を触れて、カップを取った。
「片づいてるよ・・・」
部屋を見わたしても部屋は片づいている。整理する物はない・・・。
「もおっ・・・」
智子は正俊の顔を両手で智子にむけた。
「セイリだよ。生理・・・」
正俊の目を見つめている。
「いつのが?」
正俊はカップをテーブルに置いて、智子を見つめかえした。
妊娠したのか・・・。
「先月末のがないの。待ってたら月が変った・・・。
赤ちゃんができたかもしれない・・・」
智子は正俊の目を見つめたまま、正俊がどう反応するか確認している。
「ホント!イヤッホッー!」
正俊は智子を抱きしめた。うれしかった。
「名前を考えてあるよ!智美だよ!」
女の子だぞ。俺の兄弟は兄だけだ。やはり、家族に女の子が居るとうれしい・・・。
「女の子なの?」
正俊の喜びようは期待以上だった。智子は安心した。
だけど、今から、女の子と決めていいのだろうか・・・。
「うん。先月、先祖が現れて、そう話したよ。そのこと、智ちゃんに話しただろう」
「うん、憶えてるよ」
「それなら、女の子だね。月末には妊娠がはっきりわかるね」
正俊は家族に話すタイミングを考えている。
「元気で健康で賢くて明るく美人な子が生まれるように祈るよ・・・」
正俊はその場で声に出して、先祖と神々に祈った。
「男の子だったら・・・」
男の子だったらどうするの、と言いかけて、美人という言葉は男の子に使ってもいいんだろうなと思い、智子は笑った。
「元気で健康で賢くて明るく美人な子が生まれるよ」
正俊は本当にそう思った。
智子と俺の子だ。どっちに似たって、そうなる・・・。
最後のリンゴの収穫は、家族で行うことになっていた。いつもは十一月の下旬の作業だが、暖かい十一月だったため、作業は十二月にずれこんでいた。
森田園のリンゴ畑は森田家の周辺だ。リンゴ畑のどこからも家を見守れる。
「智ちゃん、明日は、お祖母ちゃんたちと留守番してくれないか」
正俊は智子の身体を気づかった。暖かい十二月だが、畑に立てば足元は冷える。智子の脚部を冷えに晒せないと正俊は思った。
「明日はお祖母ちゃんたちと家に居るね」
「ああ、そうしてもらえると安心だよ」
正俊はホッと安堵した。
「今、足と脚は冷えないのか?」
「腰がちょっと冷えるかな・・・。正俊が言うように、リンゴ畑にいたら冷えちゃうね」
智子はそう言って、背をそわせているソファーと背中の間に座布団とブランケットを入れ、居心地良い背もたれにして正俊に抱きついた。
(十一月初旬日曜、朝)
森田家の朝の食卓で、
「智ちゃん、昨夜・・・」
正俊は、昨夜、老人と子供たちが智子の部屋に現れたことを話した。子どもたちが話した内容は説明しなかった。
「ああ、現れたんだね。正俊を認めたんだよ、ご先祖が・・・」
智子はご飯を食べながら、座敷童と先祖が現れたと思った。これで正俊も認められた。森田家の家族になった。何も心配いらない・・・。
「子供たちは六人いた。智子ちゃんと俺を、お母さん、お父さんと呼んでた。その話を、眠ってる智ちゃんに話したら、智ちゃんは、知ってるよって言ってた・・・」
正俊は智子に茶碗を渡し、ご飯をお代りした。
「えっ、そんなこと言ったかな・・・」
茶碗を受けとった智子は何も言えなくなった。以前、祖母が語ったことと正俊が話したことはよく似ていた。祖母の話は子どもが一人だった。
「・・・」
両親と祖父母は黙って二人の話を聞いていた。
「家族がたくさん欲しいと話したから、夢を見たんだね」
正俊は食卓の雰囲気を読んでそう言った。
「いや、そうでもないぞ。家族が増えるんだろなあ・・・」
祖父はそう言って祖母にほほえんでいる。
十二月初旬、土曜日、午前。
十二月にしては暖かい曇り空の日だった。
「セイリ、なかったよ・・・」
朝食後、炬燵にコーヒーカップを置いて、智子は、ソファーの前の位置にいる正俊の隣りに座った。智子の自室は、フローリングに電気カーペットがしかれ、その上に電気炬燵が出ている。
正俊はソファーにもたれたまま智子を抱きしめて頬に唇を触れて、カップを取った。
「片づいてるよ・・・」
部屋を見わたしても部屋は片づいている。整理する物はない・・・。
「もおっ・・・」
智子は正俊の顔を両手で智子にむけた。
「セイリだよ。生理・・・」
正俊の目を見つめている。
「いつのが?」
正俊はカップをテーブルに置いて、智子を見つめかえした。
妊娠したのか・・・。
「先月末のがないの。待ってたら月が変った・・・。
赤ちゃんができたかもしれない・・・」
智子は正俊の目を見つめたまま、正俊がどう反応するか確認している。
「ホント!イヤッホッー!」
正俊は智子を抱きしめた。うれしかった。
「名前を考えてあるよ!智美だよ!」
女の子だぞ。俺の兄弟は兄だけだ。やはり、家族に女の子が居るとうれしい・・・。
「女の子なの?」
正俊の喜びようは期待以上だった。智子は安心した。
だけど、今から、女の子と決めていいのだろうか・・・。
「うん。先月、先祖が現れて、そう話したよ。そのこと、智ちゃんに話しただろう」
「うん、憶えてるよ」
「それなら、女の子だね。月末には妊娠がはっきりわかるね」
正俊は家族に話すタイミングを考えている。
「元気で健康で賢くて明るく美人な子が生まれるように祈るよ・・・」
正俊はその場で声に出して、先祖と神々に祈った。
「男の子だったら・・・」
男の子だったらどうするの、と言いかけて、美人という言葉は男の子に使ってもいいんだろうなと思い、智子は笑った。
「元気で健康で賢くて明るく美人な子が生まれるよ」
正俊は本当にそう思った。
智子と俺の子だ。どっちに似たって、そうなる・・・。
最後のリンゴの収穫は、家族で行うことになっていた。いつもは十一月の下旬の作業だが、暖かい十一月だったため、作業は十二月にずれこんでいた。
森田園のリンゴ畑は森田家の周辺だ。リンゴ畑のどこからも家を見守れる。
「智ちゃん、明日は、お祖母ちゃんたちと留守番してくれないか」
正俊は智子の身体を気づかった。暖かい十二月だが、畑に立てば足元は冷える。智子の脚部を冷えに晒せないと正俊は思った。
「明日はお祖母ちゃんたちと家に居るね」
「ああ、そうしてもらえると安心だよ」
正俊はホッと安堵した。
「今、足と脚は冷えないのか?」
「腰がちょっと冷えるかな・・・。正俊が言うように、リンゴ畑にいたら冷えちゃうね」
智子はそう言って、背をそわせているソファーと背中の間に座布団とブランケットを入れ、居心地良い背もたれにして正俊に抱きついた。