第28話◇木下優希の生活(シズネ視点)
文字数 3,423文字
『殲滅を確認、シズネ、帰投しろ』
「了解」
今日のお仕事終わり。今回はナメクジの部隊、車両が4で個体が12。
特筆するような、武器や戦術は無し。
自走戦車の乗っ取りを警戒して、非常停止のための装置を追加で組み込み、通信妨害対策に短距離赤外線通信も組み込んである。
ジャミングされても、こちらの赤外線通信からの指示を優先させてるから、通信距離は短くなるけど、いまのところ問題はおきてない。
ナメクジが持ってきてた羽虫、電脳ウイルスを持った羽虫型の機械も、こちらの虫殺しで駆除できている。蜂に似た小型機械が、虫を見つけては殺しているので、施設付近の昆虫も、ほとんど死滅してしまったけれど。
青い人型戦闘機を洗浄プールに浸けて、ハンガーに帰投する。その間、本部電脳に今回の出撃レポートを提出する。
自走戦車が緊急停止することを想定して、私の乗る人型戦闘機は、武装を強化してあるけれど、今回は自走戦車でなんとかなったので、持ってきたガトリングはあまり使わなかった。
トカゲもナメクジも、以前よりは、侵入してくる部隊の規模が、小さくなった。頻度も前より少ない。
ハンガーで手足をボゥイに着けさせて、操縦席から降りる。屈伸したり、手を握ったり開いたりして、動作を確認。
ウキネが出迎えてくれた。
「お帰り」
「ただいま」
「ガトリングの具合はどうだ?」
「狙いが甘くても、連射するから当てやすいよ。だけど重くて、射撃中は動きにくくなるから、回避に心配がある」
ボゥイの持ってきたシャツとスパッツを着ながら、返事する。
「ショットガンの方が良かったか?」
「安全装置が解除されるまで、相手に接近してるから……うん、ショットガンの方が近距離制圧にはいいかも。ガトリングは手持ちはやめて、右肩装備にしてみようか。遠距離狙撃が必要なら、補給車両にライフルを積んでおくとか」
「ガトリングをショットガンに替えて、予備にグレネードを積んでみるのもいいか。すこし訓練で試してみてくれ」
「ん、わかった」
万一のとき、自分の操縦する人型戦闘機しか使えないことも想定して、武装の選択は慎重にしないとね。
「しかし、妙だな」
「なにが?」
「トカゲとナメクジの動きが、だ」
「羽虫と蜘蛛足の効果が無くて、諦めたんじゃないの?」
「効果は、あっただろう。こちらも対策はとったから、同じ手はくらって無いが。それでも、1度試してこちらに損害はあった。ならば、そのやり方を改良してまた使ってくると予想していたが」
ナメクジは、たまに羽虫を飛ばしている。トカゲの蜘蛛足機械は、1回しか見たことが無い。
「もうひとつの対策が、うまくいったかな」
「だと、いいな。あのアイデアはシズネ以外には思い付けないが」
和国は鎖国している。憲法で、外国との交渉、貿易は禁止されている。
だけど、うっかりこの施設のことを教えてしまうのは、仕方ないことだよね。
時間が経って他の国の施設が、この施設の、この和国の報復装置のことを忘れているなら、思い出して貰えばいい。
この施設本体に手を出せば、どんなミサイルがどこに向かって発射されるか、それを思い出して忘れないように。
ウキネも本部電脳も、交渉そのものは思考の外だったから、これに気が付かなかった。あとは、電脳に任せて、資源回収機や廃棄物運送機に、和国の報復装置の情報の入ったデータチップを適当にばらまく。
トカゲとナメクジがデータチップを回収して、その背後にいる林檎と信仰集合体が報復装置のことを思い出してくれたらいい。
あと3回ぐらい、人類絶滅できる量の核ミサイルが、この施設にはある。世界一原子力発電所の多い国、日本の遺産。処分できずに溜め込んでた使用済み核燃料を、ちょっと造り変えれば世界一の核ミサイル保有国に。
他の国の施設がこれを思い出してくれたら、この施設への攻撃は無くなるかな、と期待してたんだけど。
知っててやってたのなら、意味が無いんだよね。
報復装置への対策があるか、核ミサイル撃たれてもかまわないと考えているのかまでは、分からない。
「一応、気を付けておいてくれ。今のところトカゲもナメクジも、以前のような活動に戻っているように見えるが、またなにか仕掛けてくるかもしれん」
「わかった。私にはトカゲとナメクジの知能がどのくらいか、わからないけど。罠とか使うし、注意する。林檎と信仰集合体は、トカゲとナメクジを使って、この施設を乗っ取るつもりかな?」
「よほどの馬鹿でなければ、報復に警戒して施設本体に手は出さないはずだが。こちらの再地球化の妨害が目的……、これまでは、」
「なにか、変わったのかな。方針が」
「かもしれん。だからといって、私達のすることが変わることは無いが」
「じゃあ、シャワーでも浴びてくるかな」
「あぁ、休んでくれ」
林檎や信仰集合体が、自滅覚悟で全戦力で突っ込んできたら、敵わないだろう。どれだけの武装を隠し持ってるか知らないけれど、それをありったけ全部、トカゲとナメクジに持たせたら、私とウキネふたりじゃどうしようもない。
そのときは、和国最終報復装置で、みんな仲良く全滅しよう。新人類のトカゲとナメクジを巻き込むのは、ひどい話だけどね。
シャワーを浴びてさっぱりして、情報室に向かう。
「連結開始」
ちょっと、木下優希を覗いてみようか。
――――――――――――――――――――
「……あ」
なんだこれ、あったかい、やわらかい。
「ん……、優希ぃ、はぁっ…………」
目の前にあるのは、裸でベットに仰向けに寝る高瀬翔子。眼が潤んでる。息を荒くして、私――木下優希――にしがみついている。木下優希は、左手で高瀬翔子の頭を撫でながら、右手は股間に伸ばしている。
高瀬翔子に、もう一度顔を近づけて、深く口づける。高瀬翔子の舌を、その先端部から裏側を自分の舌でなぞりながら、右手を細かく激しく動かす。
ほんとに恋人同士だったんだ。それも、深い間柄の様子。してる真最中だった。
ウキネはかまわないって言ってたけど、見てはいけないものを、見てしまったような。
今は、木下優希の視界と感覚を私も共有している。だから、木下優希が口に含んだ高瀬翔子の乳首の柔らかさも、唇と前歯を通して感じられるし、その肌に浮かぶ汗の味も伝わってくる。右手の中指と薬指が、熱く潤って締め付けられているのも、分かる。
ふたりとも、慣れているみたい。
「んーっ、優希ぃ、あ、はぁっ」
高瀬翔子が私の頭を抱き締めて、胸に押し付ける。私――木下優希――は、それに応えるように、口に含んだ乳首を前歯で噛む。その間も右手は、優しく、ときに緩急をつけて撫でたり押し込んだり擦ったりして、その度、高瀬翔子の口から甘い声が漏れる。
私は女同士はどうか、と思っていたけれど。実際体験してみると、悪くは無いみたい。
ウキネとの格闘訓練、ボゥイの手足の脱着。それ以外では、久しぶりの人との肉体接触。恋人同士が抱き合うということなら、初体験。指で押せば返ってくる、肌の弾力、匂いに、声。やわらかくて、気持ちがいい。
私自身が高瀬翔子に思う事はさして無いけれど、木下優希が高瀬翔子に向ける気持ちが伝わってくる。激しくは無い、だけど、憎からず。つきまとってくるのを、少し鬱陶しいとも思っているけれど、それも悪くはない。
そんな気持ちというか、気分が伝わってくる。なんかいいなぁ、このふたり。
私も、ウキネとこういうふうになってみたいのだろうか。木下優希と高瀬翔子のような関係に、私とウキネがなることもあるのだろうか。
しばらくそのまま観察する。どうも、高瀬翔子がねだって、木下優希が応える、という状態。
「あぁーーー……」
高瀬翔子が一際大きく声を上げて震える。終わったのかな?
そのまま木下優希の腕を枕に、高瀬翔子が眠るまでそばにいる。人の頭の重さが、心地よい。
高瀬翔子が眠ると、そっとベッドを抜け出して移動する。
もうひとつの寝室、こっちが木下優希の部屋らしい。そのベッドで横になる。
エッチなことはしても、そのまま朝まで一緒に寝たりはしないみたい。
なんだろう、このカップルは。
「了解」
今日のお仕事終わり。今回はナメクジの部隊、車両が4で個体が12。
特筆するような、武器や戦術は無し。
自走戦車の乗っ取りを警戒して、非常停止のための装置を追加で組み込み、通信妨害対策に短距離赤外線通信も組み込んである。
ジャミングされても、こちらの赤外線通信からの指示を優先させてるから、通信距離は短くなるけど、いまのところ問題はおきてない。
ナメクジが持ってきてた羽虫、電脳ウイルスを持った羽虫型の機械も、こちらの虫殺しで駆除できている。蜂に似た小型機械が、虫を見つけては殺しているので、施設付近の昆虫も、ほとんど死滅してしまったけれど。
青い人型戦闘機を洗浄プールに浸けて、ハンガーに帰投する。その間、本部電脳に今回の出撃レポートを提出する。
自走戦車が緊急停止することを想定して、私の乗る人型戦闘機は、武装を強化してあるけれど、今回は自走戦車でなんとかなったので、持ってきたガトリングはあまり使わなかった。
トカゲもナメクジも、以前よりは、侵入してくる部隊の規模が、小さくなった。頻度も前より少ない。
ハンガーで手足をボゥイに着けさせて、操縦席から降りる。屈伸したり、手を握ったり開いたりして、動作を確認。
ウキネが出迎えてくれた。
「お帰り」
「ただいま」
「ガトリングの具合はどうだ?」
「狙いが甘くても、連射するから当てやすいよ。だけど重くて、射撃中は動きにくくなるから、回避に心配がある」
ボゥイの持ってきたシャツとスパッツを着ながら、返事する。
「ショットガンの方が良かったか?」
「安全装置が解除されるまで、相手に接近してるから……うん、ショットガンの方が近距離制圧にはいいかも。ガトリングは手持ちはやめて、右肩装備にしてみようか。遠距離狙撃が必要なら、補給車両にライフルを積んでおくとか」
「ガトリングをショットガンに替えて、予備にグレネードを積んでみるのもいいか。すこし訓練で試してみてくれ」
「ん、わかった」
万一のとき、自分の操縦する人型戦闘機しか使えないことも想定して、武装の選択は慎重にしないとね。
「しかし、妙だな」
「なにが?」
「トカゲとナメクジの動きが、だ」
「羽虫と蜘蛛足の効果が無くて、諦めたんじゃないの?」
「効果は、あっただろう。こちらも対策はとったから、同じ手はくらって無いが。それでも、1度試してこちらに損害はあった。ならば、そのやり方を改良してまた使ってくると予想していたが」
ナメクジは、たまに羽虫を飛ばしている。トカゲの蜘蛛足機械は、1回しか見たことが無い。
「もうひとつの対策が、うまくいったかな」
「だと、いいな。あのアイデアはシズネ以外には思い付けないが」
和国は鎖国している。憲法で、外国との交渉、貿易は禁止されている。
だけど、うっかりこの施設のことを教えてしまうのは、仕方ないことだよね。
時間が経って他の国の施設が、この施設の、この和国の報復装置のことを忘れているなら、思い出して貰えばいい。
この施設本体に手を出せば、どんなミサイルがどこに向かって発射されるか、それを思い出して忘れないように。
ウキネも本部電脳も、交渉そのものは思考の外だったから、これに気が付かなかった。あとは、電脳に任せて、資源回収機や廃棄物運送機に、和国の報復装置の情報の入ったデータチップを適当にばらまく。
トカゲとナメクジがデータチップを回収して、その背後にいる林檎と信仰集合体が報復装置のことを思い出してくれたらいい。
あと3回ぐらい、人類絶滅できる量の核ミサイルが、この施設にはある。世界一原子力発電所の多い国、日本の遺産。処分できずに溜め込んでた使用済み核燃料を、ちょっと造り変えれば世界一の核ミサイル保有国に。
他の国の施設がこれを思い出してくれたら、この施設への攻撃は無くなるかな、と期待してたんだけど。
知っててやってたのなら、意味が無いんだよね。
報復装置への対策があるか、核ミサイル撃たれてもかまわないと考えているのかまでは、分からない。
「一応、気を付けておいてくれ。今のところトカゲもナメクジも、以前のような活動に戻っているように見えるが、またなにか仕掛けてくるかもしれん」
「わかった。私にはトカゲとナメクジの知能がどのくらいか、わからないけど。罠とか使うし、注意する。林檎と信仰集合体は、トカゲとナメクジを使って、この施設を乗っ取るつもりかな?」
「よほどの馬鹿でなければ、報復に警戒して施設本体に手は出さないはずだが。こちらの再地球化の妨害が目的……、これまでは、」
「なにか、変わったのかな。方針が」
「かもしれん。だからといって、私達のすることが変わることは無いが」
「じゃあ、シャワーでも浴びてくるかな」
「あぁ、休んでくれ」
林檎や信仰集合体が、自滅覚悟で全戦力で突っ込んできたら、敵わないだろう。どれだけの武装を隠し持ってるか知らないけれど、それをありったけ全部、トカゲとナメクジに持たせたら、私とウキネふたりじゃどうしようもない。
そのときは、和国最終報復装置で、みんな仲良く全滅しよう。新人類のトカゲとナメクジを巻き込むのは、ひどい話だけどね。
シャワーを浴びてさっぱりして、情報室に向かう。
「連結開始」
ちょっと、木下優希を覗いてみようか。
――――――――――――――――――――
「……あ」
なんだこれ、あったかい、やわらかい。
「ん……、優希ぃ、はぁっ…………」
目の前にあるのは、裸でベットに仰向けに寝る高瀬翔子。眼が潤んでる。息を荒くして、私――木下優希――にしがみついている。木下優希は、左手で高瀬翔子の頭を撫でながら、右手は股間に伸ばしている。
高瀬翔子に、もう一度顔を近づけて、深く口づける。高瀬翔子の舌を、その先端部から裏側を自分の舌でなぞりながら、右手を細かく激しく動かす。
ほんとに恋人同士だったんだ。それも、深い間柄の様子。してる真最中だった。
ウキネはかまわないって言ってたけど、見てはいけないものを、見てしまったような。
今は、木下優希の視界と感覚を私も共有している。だから、木下優希が口に含んだ高瀬翔子の乳首の柔らかさも、唇と前歯を通して感じられるし、その肌に浮かぶ汗の味も伝わってくる。右手の中指と薬指が、熱く潤って締め付けられているのも、分かる。
ふたりとも、慣れているみたい。
「んーっ、優希ぃ、あ、はぁっ」
高瀬翔子が私の頭を抱き締めて、胸に押し付ける。私――木下優希――は、それに応えるように、口に含んだ乳首を前歯で噛む。その間も右手は、優しく、ときに緩急をつけて撫でたり押し込んだり擦ったりして、その度、高瀬翔子の口から甘い声が漏れる。
私は女同士はどうか、と思っていたけれど。実際体験してみると、悪くは無いみたい。
ウキネとの格闘訓練、ボゥイの手足の脱着。それ以外では、久しぶりの人との肉体接触。恋人同士が抱き合うということなら、初体験。指で押せば返ってくる、肌の弾力、匂いに、声。やわらかくて、気持ちがいい。
私自身が高瀬翔子に思う事はさして無いけれど、木下優希が高瀬翔子に向ける気持ちが伝わってくる。激しくは無い、だけど、憎からず。つきまとってくるのを、少し鬱陶しいとも思っているけれど、それも悪くはない。
そんな気持ちというか、気分が伝わってくる。なんかいいなぁ、このふたり。
私も、ウキネとこういうふうになってみたいのだろうか。木下優希と高瀬翔子のような関係に、私とウキネがなることもあるのだろうか。
しばらくそのまま観察する。どうも、高瀬翔子がねだって、木下優希が応える、という状態。
「あぁーーー……」
高瀬翔子が一際大きく声を上げて震える。終わったのかな?
そのまま木下優希の腕を枕に、高瀬翔子が眠るまでそばにいる。人の頭の重さが、心地よい。
高瀬翔子が眠ると、そっとベッドを抜け出して移動する。
もうひとつの寝室、こっちが木下優希の部屋らしい。そのベッドで横になる。
エッチなことはしても、そのまま朝まで一緒に寝たりはしないみたい。
なんだろう、このカップルは。