第17話 サクラさんとノノハラさん、広場にて
文字数 1,205文字
アイザワ君の言う通り、潜水艇に乗った気分で地面の中を進んでいく。地球のコアまで落ちて行かなかったのは幸いだ。それについては、彼がこうコメントした。
「おれらがこの世界に入る時、空から落ちてくるだろう。でもそれほどの高度はなかった。なら地面だってそのはずだ。そう考えたんだ」
「そう思うと、地下にあまり深さはないね。ちょうどぼくらの身長と同じぐらいだ」
「下に関してはあまり実装する必要がなかったのかな。そもそも何らかの必要性にもとづいて設計されているかもわからないがね。ともかくこれで、時間的な限界と空間的な限界の両方が確認されたわけだ。この世界には幅がある。無限ではない」
「でもどうやって外に脱出しようか。山まで行っても、その地面の高さに表世界が無かったら外に出られないよ」
「行ってみるしかない」
ぼくらは再び、四時間の道のりを歩き始めた。直線でまっすぐなのはいいけれど、時間はそう短縮されないし、景色も楽しめないので退屈だ。ぼくはコントローラーのスティックを文房具で固定して、途中から本を読んでいた。
四時間後、ぼくらはおじさんの尻の下を失礼して、彼が将来通過することになる草木の生い茂る道を進んだ。
地面から出る方法を心配していたけれど、どうもその必要はないらしい。坂道を進むと地表面に沿ってぼくらの地面もなだらかに傾斜していった。
ログハウスを越え、その向こうにある巨大なコンクリートも越え、どんどんと水源に近づいていく。川の流れは荒々しく、滝の轟音が聞こえた。ぼくらは先に進み続けた。
そうして、遂にぼくらは見つけた。
向こう岸だ。まるで舞台のように、まぁるく木々の切り開かれたところがあって、そこに女の子が二人いる。とぼとぼと歩くその姿は悲しそうに見えた。
アイザワくんは苦しそうに言った。
「ここは、幼稚園の遠足で来た場所だ。おれとサクラが、友達になった場所だ。大切な場所。大切な……」
ぼくはその発言を訝しんだ。どうにも、彼の話には食い違うところが多い。記憶が混乱しているのだろうか。
二人の女の子はポニーテールにボブカット。ぼくにはどちらがサクラさんだかわからない。だがアイザワ君にはわかるようだ。彼は呟いた。「サクラだ。サクラがいる……」
ボブカットの女の子が、サクラさんらしい。とても可愛らしい子で、アイザワ君の言うような強烈な変人には見えない。彼女はポニーテールの女の子に肩をさすられていた。すると、あの子がノノハラさんということになる。
ぼくらはしばらく二人を見ていた。
すると後ろから、おじさんが追いかけてきた。彼はぼくらの真横にしゃがんだ。急なことで思わずぎょっとしたが、彼にはもちろんぼくらは見えていない。
「なにかあったら〈撃つ〉からな」
がしゃりと銃を構える重い音がした。ぼくらは地面の下にいるが、弾丸は壁を突き抜ける。「早まらないでね」とぼくは釘を刺した。「今回は様子を見るんだ」
「おれらがこの世界に入る時、空から落ちてくるだろう。でもそれほどの高度はなかった。なら地面だってそのはずだ。そう考えたんだ」
「そう思うと、地下にあまり深さはないね。ちょうどぼくらの身長と同じぐらいだ」
「下に関してはあまり実装する必要がなかったのかな。そもそも何らかの必要性にもとづいて設計されているかもわからないがね。ともかくこれで、時間的な限界と空間的な限界の両方が確認されたわけだ。この世界には幅がある。無限ではない」
「でもどうやって外に脱出しようか。山まで行っても、その地面の高さに表世界が無かったら外に出られないよ」
「行ってみるしかない」
ぼくらは再び、四時間の道のりを歩き始めた。直線でまっすぐなのはいいけれど、時間はそう短縮されないし、景色も楽しめないので退屈だ。ぼくはコントローラーのスティックを文房具で固定して、途中から本を読んでいた。
四時間後、ぼくらはおじさんの尻の下を失礼して、彼が将来通過することになる草木の生い茂る道を進んだ。
地面から出る方法を心配していたけれど、どうもその必要はないらしい。坂道を進むと地表面に沿ってぼくらの地面もなだらかに傾斜していった。
ログハウスを越え、その向こうにある巨大なコンクリートも越え、どんどんと水源に近づいていく。川の流れは荒々しく、滝の轟音が聞こえた。ぼくらは先に進み続けた。
そうして、遂にぼくらは見つけた。
向こう岸だ。まるで舞台のように、まぁるく木々の切り開かれたところがあって、そこに女の子が二人いる。とぼとぼと歩くその姿は悲しそうに見えた。
アイザワくんは苦しそうに言った。
「ここは、幼稚園の遠足で来た場所だ。おれとサクラが、友達になった場所だ。大切な場所。大切な……」
ぼくはその発言を訝しんだ。どうにも、彼の話には食い違うところが多い。記憶が混乱しているのだろうか。
二人の女の子はポニーテールにボブカット。ぼくにはどちらがサクラさんだかわからない。だがアイザワ君にはわかるようだ。彼は呟いた。「サクラだ。サクラがいる……」
ボブカットの女の子が、サクラさんらしい。とても可愛らしい子で、アイザワ君の言うような強烈な変人には見えない。彼女はポニーテールの女の子に肩をさすられていた。すると、あの子がノノハラさんということになる。
ぼくらはしばらく二人を見ていた。
すると後ろから、おじさんが追いかけてきた。彼はぼくらの真横にしゃがんだ。急なことで思わずぎょっとしたが、彼にはもちろんぼくらは見えていない。
「なにかあったら〈撃つ〉からな」
がしゃりと銃を構える重い音がした。ぼくらは地面の下にいるが、弾丸は壁を突き抜ける。「早まらないでね」とぼくは釘を刺した。「今回は様子を見るんだ」