23 オリハルコンのオリちゃん

文字数 1,542文字

(見えてきた……)

洞窟の奥にある、先祖伝来の場所。

天井が高くなって、柱のようなものもあり、石で階段もできている。


ちょっとした、地下宮殿のような建物。

ひっく……

明かりは間接照明とでも言うのか、はっきりと光源が見えているわけではなく、ぼんやりと洞窟内を照らしている。ボクは階段を上り、おじちゃんが作業している部屋へ向かった。

ぴ~

おじちゃんの作業部屋の前で、緑色の岩っぽい彼らが声をかけてきた。外見が岩みたいなだけで、もうちょっと、もそもそくにゃくにゃしている。


たまたまなんだけど、来客のベルのようになっていた。

騒がしいのが来たか……

おじちゃんがそう言っているのが聞こえた。

騒がしいって、ひどくない?

うっく……ひっく……

でも、すぐには声が出ない。

泣きじゃくりすぎた。

ぴー
彼らは心配そうに、ボクの方にやってくる。
うえっく……ひっ……ずず……
ボクは呼吸を整える。
ぴ~ぴ~
オリちゃん、ハルちゃん、コンちゃん……
ぴーぴー
三人合わせてオリハルコンちゃんが、嬉しそうに返事をする。
ボクは、大丈夫だよ。
ぴ~? ぴ~?
うんうん。
『本当にそうなの?』と聞かれたのでうなずいた。
ぴ(それならいいけど……)。
オリハルコンちゃんは、今は緑色をしているけれど、赤い色の時が有名。別名ヒヒイロカネ。緋色の金属という意味。

意思疎通ができる金属。でも、触るとけっこう柔らかい。今は岩のような外見だけど金属のようにもなる。

どうしたんだ?

おじちゃんの作業部屋に入ると、作業台で作業をしていたおじちゃんがそれを中断して聞いてきた。

おじちゃんは、ここでいろいろな物を作っている。


この部屋のイメージに一番近いのは、ドワーフの仕事部屋だろうか?

道具を作るのに適した物が所せましと並んでいる。

これ、壊れちゃった。
おじちゃんのところまで行き、二つに分かれてしまったシャベルを見せた。
ぴ?
オリちゃんとハルちゃんとコンちゃんもついてきて、後ろから覗いてくる。
直せる?
ぴ~ぴっぴ~
おじちゃんが答える前に、みんなと一緒にいたオリちゃんが飛び出してきて、ボクの手に乗った。

え?

いいの?

ぴっぴ
オリちゃんが直してくれると言っていた。
ぴっぴ~
残されたハルちゃんとコンちゃんがずるいと言っている。

こいつら

直す気満々みたいだな。

ぴっぴ~

それまでわりと固めだったオリちゃんが液体のようになり、『早い者勝ち』という感じでシャベルの残骸の上にドロンと乗る。

おっとっと……
落とさないようにシャベルをしっかりと支える。
ぴ~
オリちゃんを呼ぶ声と、『いいな~』という声。
ぴっ(心配すんな。羨ましいだろ?)
オリちゃんはまとめて返事をしていた。
ぴ(うん)
ぴっぴっぴ

ドロンと乗っていたオリちゃんが、シャベルの残骸にしみ込んでいく。

少しずつ、オリちゃんの見えている部分が小さくなる。

…………
ボクが持っていたシャベルに、オリちゃんがまんべんなくしみ込んだ。

あとは俺が

仕上げしとくから。

おじちゃんは、オリちゃんが入ったシャベルの残骸を、ボクの手から受け取った。

できるまでに

どれくらい時間、かかる?

そんなにかからないはずだ。

じゃあ、待ってるよ。
ボクは作業台の近くにあった、丸いシートで背の高い椅子に座る。
ぴぃぃぃ(いいな、ボクらも入りたかったな)
おまえらはまた今度な。
ぴぴぃ(ショウくんのシャベルに、なりたかった……)

ありがと、

ハルちゃん、コンちゃん

ぴぃ……
ハルちゃんとコンちゃんは、残念そうに返事をした。

ちょっとだけ

がまんしろよ。

ぴっ!
シャベルに溶け込んでいるオリちゃんが返事をした。
オリちゃん、がんばって。
ぴ!(がんばって)
カン、トン、カン
………

おじちゃんは作業台にオリちゃんが入ったシャベルを置き、特別なトンカチで叩く。

(ぐっ!)
(ぴっ!)
ボクたちは、それを固唾をのんで見守った。
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登場人物紹介

ショウ

小学3年生の男の子

ケンちゃん

ショウの従兄

中学2年生

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