25 ふつうのシャベル

文字数 1,691文字

おじちゃ~ん、

できた?

ボクはおじいちゃんの家に帰って、おばあちゃんのお昼ごはんを食べ、居間でゴロゴロしておやつを食べて戻ってきた。我が一族の秘密の地下宮殿へ。
ぴ?
ハルちゃんとコンちゃんがボクの肩に乗る。
できるまで待ってるって言ってなかったか?
ちょっと怒ったようにおじちゃんは言う。
おじちゃんがすぐにできるって言うから待ってようって思ったけど、ぜんぜんできないんだもん。
すぐじゃないか。
気づいてないかもしれないけど、けっこう、時間かかってるよ?
どれくらいかかったんだ?
おじちゃんは、自分でわかっていないようだった。

ボクは指を折って数える。

8時間くらい?
すぐだろ?
呆れて物も言えないね。

言うけど。

8時間は言わないよ。

すぐって言うのは10分くらいだよ。

10分でヒヒイロカネの精製ができるわけないだろ。
じゃあ、1時間。

それなら待っていられたけど、8時間は無理。

気、短いな。

ボク、気長だと思うけど?
けっこう

気ぃ短いぞ。

そぉ?
すぐに飽きるじゃないか。
うん
それは否めなかった。
ずっとここにいると、時間の感覚、なくなるんだよな。
昼と夜の区別がつかないもんね。
その甲斐あって、

なかなかいい感じにできたぞ。

おじちゃんはボクにシャベルをくれた。
あっ、

直ってる!

ボクの手の上でシャベルがキランと輝いた。
純真無垢なボクのように真っ白で、愛くるしいボクの手にちょうどいい大きさのシャベル!
なげーよ……
壊れる前と同じ感じだよ!
壊れたていたのがウソみたいに直っていた。

ボクはシャベルを握って腕を動かす。

ぴっ
オリちゃん!
シャベルからオリちゃんの声がした。
これからは、ずっと一緒にいられるんだね。
ぴっぴっ
肯定するようにオリちゃんが答える。
ぴ~
ハルちゃんとコンちゃんは、淋しそう……
その格好だと、外に出られないもんね。
ゆるキャラって言って、出すのはアリかな?
ぴぃ……
やっぱ、無理か……

緑色の岩のようなハルちゃんとコンちゃんを見て思った。

おじちゃん
ん?
ケンちゃんがシャベルを買ってきてくれたから、そのシャベル、ハルちゃんとコンちゃんで強化してくれないかな?
ぴっ!
ハルちゃんとコンちゃんが、嬉しそうにキラキラと輝く。
ケン坊の様子

千里眼でみてたのか?

ボクはうなずいた。
素直に人に聞けるタイプじゃないから、ひとりでシャベルを探して、今までかかっちゃったんだよ。
ケンちゃんを千里眼でみるの、けっこう楽しかった。
いいけど、ケン坊には無理だろ?

ふつうの人間には使いこなせないぞ。

でも、ハルちゃんとコンちゃんを

オリちゃんと一緒に置いておくこともできるし。

ヒヒイロカネを外に出す入れ物にするってことか?
…………
ボクはそれに答えなかった。
ふっ
おじちゃんが鼻で笑った。
わかった、強化してやるよ。
ぴっぴっぴ~!
ハルちゃんとコンちゃんが嬉しそうに跳ねた。
ありがと、

おじちゃん。

ふんっ
おじちゃんが苦笑いした。
ケンちゃん、

迎えに行ってくるよ。

ボクが部屋を出ようとすると、
ショウ
と、呼び止められた。
なに?
立ち止って、おじちゃんを見た。
おまえ、

直るのわかってて、どうしてあんな、大泣きしたんだ?

ここまで聞こえたぞ。

おまえの泣き声。

改めて言われると、恥ずかしい。
んとね。
…………
もちろん、おじちゃんが直してくれるのはわかってたよ。
オリハルコンを使ってくれたら、前よりもすごいシャベルになるのもわかってた。
…………
おじちゃんの眉がピクっとする。
しかも、オリちゃんが入ってくれたし、言うことないよ。
ぴっ!
オリちゃんが嬉しそうに返事をしたから、ボクはボクのシャベルをなでた。
でも、このシャベルには、もう少し、ふつうのシャベルでいて欲しかったんだ……
ぴぃ?
ボクはシャベルを両手で抱えた。
ぴっ
腕の中で、ボクを元気付けようと、シャベルが温かくなった。
ありがとう、オリちゃん。
ぴぴ
嬉しそうに、オリちゃんは返事をした。
…………
おじちゃんが、ボクの頭をぐりぐり撫でた。
頭、ぐりぐりしないで。
ふんっ
おじちゃんはニヤっとした。
それはもういいが……
(よくないけど……)
オリハルコンじゃなくて、ヒヒイロカネな。
いいじゃん。

どっちでも。

よくないから。
おじちゃんは、変なコトにこだわる。
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登場人物紹介

ショウ

小学3年生の男の子

ケンちゃん

ショウの従兄

中学2年生

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