12 スコップ派かシャベル派か?
文字数 1,454文字
次の日、おばあちゃんが朝ごはんを作ってくれて、みんなでごはんを食べた。
それから、おばあちゃんはお洗濯をして、おじいちゃんは畑仕事に行った。
おばあちゃんは川に行ってないから、桃は拾ってこない。
洗濯機も乾燥機もあるし、おじいちゃんちの電化製品は最新だし、ボクやケンちゃんが手伝う必要もなかった。
おばあちゃんの部屋の前の縁側に座って庭を見ていると桜が散ってるのが見えた。
桃の花は桜の前に咲いてるけど、まだ食べられないな。
花は3月に咲いてるのにな。
実がなるのって、大変なんだな。
ケンちゃんは、ボクの隣に座って庭をじっと見ていた。
ケンちゃんは桜を見ていた。
柔らかい春の陽ざし、爽やかな風に吹かれてヒラヒラ散っている桜の花。
ケンちゃんは、返事もせずに固まった。
ケンちゃんは何も言わなかった。
ボクも何も言っていなかったことにするかのように、時が止まったように桜の木を見ていた。
桜の花びらが、ケンちゃんの頭に乗る。
ケンちゃん、桜、似合うね。
しばしの沈黙……。
ボソっとケンちゃんが言った。
ケンちゃんがおもしろいから言うつもりだけど、いまはうなずいといた。
ケンちゃん、細かいことにこだわるよね。