9 スコップの歌、再び

文字数 1,185文字

………………。
それから少しの間、ボクは待っていたが、ケンちゃんは戻ってこなかった。
…………。
しかたがなく、ボクはケンちゃんが地面に投げ置いたシャベルを手にする。
んっ
シャベルを地面に突き立てる。

しかし、ボクではちょっとしか掘れなかった。

ケンちゃんみたいに

掘れないよ……。

でも、がんばってみよう。
♪スコップコップ コップコップ~♪
小さく歌いながらシャベルを突き刺す。

ちょっと深く刺さる気がした。

♪スコップコップ コップップ♪
リズムに乗るからなのか、歌わない時よりも刺さる気がする。
…………。
ボクはシャベルをじっと見つめた。
♪スコップコップ♪
ここでザクっと地面を刺す。
♪コップコップ~♪
さらにもう一回。
…………。
やっぱり歌わないよりも、刺さってる気がする。
♪スコップコップ コップップ♪
地面が掘られていく感じを見て、笑みが浮かんできた。
♪スコップコップ コップコップ~♪

♪スコップコップ コップップ♪

地面が思っていた以上に掘れていく。
♪ボークのスコップ すてきなスコップ♪
ちょっと歌詞を変えてみた。
♪スコップコップ コップコップ~♪
次の言葉を考えている間に、いつものフレーズを入れる。
♪素手だと全然 掘れないけれど♪
ここでちょっと、もったいぶってみる。
♪スコップコップ コップップ~♪
うん。

イイ感じ、イイ感じ。

♪スコップ使えば倍は掘れる

いやいやもっとかな三倍だ~♪

ボクって天才?
♪スコップコップ コップコップ~♪
天からフレーズが降りてくる。
♪ザックザック掘るぞ 掘るぞ掘るぞ掘~るぞ♪
♪スコップコップ コップコップ~♪
あそ~れ
なんか乗って来たぞ~。
♪スコップコップ、コップコップー

スコップコップ、コップップ♪

軽やかに歌え。

♪どっこいしょのよっこいしょ

よっこいしょのどっこらよっこいしょ♪

なんか重い?

♪どっこいよっこい

よっこいしょういち♪

あれ?

急に昭和?

♪ぼっくの名前はしょういちじゃないよ

ボクの名前はただのショウ♪

あれ?
………………………………。
(『ショウ』って歌ったとたん、急にブレーキがかかったみたいになった……)
語呂が悪いのかな?
まあ、いいや。

気を取り直していこう。

♪ぼーくの名前はしょいちじゃなくってただのショウ!♪
♪あ、ショウ♪
♪ショウ

あ、ショウショウショウショウ♪

自分の名前、連呼もな……。
♪スコップコップでコップコップ~♪
うん。

やっぱりコレだな。

♪スコップコップ コップップ~♪
落ち着くな~。







おい
いつの間にか、ケンちゃんが戻ってきてた。

歌ってたから、気づかなかったよ。

ケンちゃん

おかえり~。

ケンちゃんを見上げた。
それ、スコップなのか?

シャベルじゃないのか?

ボクの歌を聞いていたのか、ケンちゃんはボクが持っていたシャベルを指さして聞いた。
ふっ
ボクは鼻で笑った。
さて、問題です。

これは、シャベルでしょうか、スコップでしょうか?

おまえ、

正解わかって言ってる?

うん




つづく

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登場人物紹介

ショウ

小学3年生の男の子

ケンちゃん

ショウの従兄

中学2年生

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