22 ボクのシャベル……
文字数 1,244文字
不機嫌な感じにケンちゃんは言い、ザックザックと穴を掘って……
がぱキン
なにか、嫌な音がした。
さっきまでとは違う音。
カラン……
ケンちゃんの手には、シャベルの柄が握られているのに、頭の部分が地面に落ちていた。
何が起きたのか、よくわからなかった。
ケンちゃんが、持っていた柄の部分を離す。
カラン……
ボクの目の前に、頭の部分と柄の部分が別々になってしまった、ボクのシャベルがあった。
本当に悲しいことが起きた時って、すぐには反応できないもんだね。
ケンちゃんも固まっていた。
石こうで固められたみたいに、ピクリともしない。
ボクのつぶらな瞳から、涙が出てきた。
喉の奥が熱くなって、呼吸が変になった。
ボクの大事なシャベルが……
ケンちゃんは、何かを言おうとしていた。
でも、ボクは泣くことしかできなくて、それを聞くことはできなかった。
ケンちゃんは、何も言わずにくるりと向きを変えた。
そして、泣いているボクを置いて、おじいちゃんの洞窟を出て行った。
ボクはただ泣いた。
思いっきり泣いた。
だって、純真無垢なボクのように真っ白で、愛くるしいボクの手にちょうどいい大きさのシャベルが……
壊れちゃったんだもん……。
もうしばらく、このまま泣かせて……。
***
ひとしきり泣いて、落ち着いてきた。
鼻水が……。
持っていたティッシュで鼻をかむ。
……
は、いなくなっていた。
ケンちゃんがいないのを見ると、また新たな悲しみが込み上げてきた。
けれど、泣きながら穴から這い出る。目の前には、純真無垢なボクのように真っ白で、愛くるしいボクの手にちょうどいい大きさのシャベルの頭の部分と柄の部分があった。
脳裏にこのシャベルをくれた時のママの姿が浮かんだ。
ママが大事にしてって言ってたシャベルが……
でも、ママがいつも言っていたことを思い出した。
ボクが泣いていると、ママはいつもそう言っていた。
ここで、泣いていても、何の解決にもならない。
ボクは、壊れてしまったボクのママが買ってくれた、純真無垢なボクのように真っ白で、愛くるしいボクの手にちょうどいい大きさのシャベルの破片をふたつ、握る。
シャツの袖で、涙をぬぐう。
ボクは、意を決して立ち上がる。
ボクは、先祖伝来の謎が隠されている、洞窟の奥へと向かった。