22 ボクのシャベル……

文字数 1,244文字

なんなんだよ……

不機嫌な感じにケンちゃんは言い、ザックザックと穴を掘って……


がぱキン

なにか、嫌な音がした。

さっきまでとは違う音。

カラン……
…………
…………
ケンちゃんの手には、シャベルの柄が握られているのに、頭の部分が地面に落ちていた。
っふ……
何が起きたのか、よくわからなかった。
…………

ケンちゃんが、持っていた柄の部分を離す。


カラン……

ひっ……

ボクの目の前に、頭の部分と柄の部分が別々になってしまった、ボクのシャベルがあった。










う…………
本当に悲しいことが起きた時って、すぐには反応できないもんだね。
………………

ケンちゃんも固まっていた。

石こうで固められたみたいに、ピクリともしない。

…………
ボクのつぶらな瞳から、涙が出てきた。
ひっ……ひっ……
喉の奥が熱くなって、呼吸が変になった。

うわ~ん! うわ~ん!

うわ~~~~~~~ん!

ボクの大事なシャベルが……
あ…………
ケンちゃんは、何かを言おうとしていた。

うわ~ん!

うわ~ん!

でも、ボクは泣くことしかできなくて、それを聞くことはできなかった。
…………
ケンちゃんは、何も言わずにくるりと向きを変えた。

うわ~ん!

うわ~ん!

…………
そして、泣いているボクを置いて、おじいちゃんの洞窟を出て行った。

うわ~ん!

うわ~ん!

ボクはただ泣いた。

思いっきり泣いた。

うわ~ん!

うわ~ん!

だって、純真無垢なボクのように真っ白で、愛くるしいボクの手にちょうどいい大きさのシャベルが……

うわ~ん!

うわ~ん!

壊れちゃったんだもん……。

もうしばらく、このまま泣かせて……。

うわ~ん!

うわ~ん!




***










うっく……ひっく……
ひとしきり泣いて、落ち着いてきた。
すん……ひっく……

鼻水が……。

ふえっ、えっ……
持っていたティッシュで鼻をかむ。
ブシッ~
……
ケンちゃん……
は、いなくなっていた。

すん、すん

っく……すん……

ケンちゃんがいないのを見ると、また新たな悲しみが込み上げてきた。
ぅっく……

けれど、泣きながら穴から這い出る。目の前には、純真無垢なボクのように真っ白で、愛くるしいボクの手にちょうどいい大きさのシャベルの頭の部分と柄の部分があった。

ママが……買ってくれたのに……
ショウちゃん、大事に使ってね。
脳裏にこのシャベルをくれた時のママの姿が浮かんだ。
ひっく……
ママが大事にしてって言ってたシャベルが……
ママ……
男の子は、泣いてばかり居たらだめだよ。
でも、ママがいつも言っていたことを思い出した。

泣いてもいいけど、泣いた後は、涙を拭いて、立ち上がるんだよ。

ボクが泣いていると、ママはいつもそう言っていた。
ひっく、っく……
ここで、泣いていても、何の解決にもならない。
ぅきゅ……
ボクは、壊れてしまったボクのママが買ってくれた、純真無垢なボクのように真っ白で、愛くるしいボクの手にちょうどいい大きさのシャベルの破片をふたつ、握る。
みゅ……
シャツの袖で、涙をぬぐう。
……行かなきゃ。
ボクは、意を決して立ち上がる。
……あの場所へ。
ボクは、先祖伝来の謎が隠されている、洞窟の奥へと向かった。
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登場人物紹介

ショウ

小学3年生の男の子

ケンちゃん

ショウの従兄

中学2年生

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