13 桃を買いに
文字数 1,401文字
おばあちゃんは乾いていた昨日の洗濯物をたたんでいた。
おばあちゃんは困ったような顔をした。
上目遣いをして、おねだりモードを発動した。
ケンちゃんが無言の圧力をかけてきたけど、それは華麗にスルーする。
桃が食べたいボクの気持ちはゆるがないし。
でも、おばあちゃんは首を縦に振らなかった。
ちょっとだけ譲歩してみる。
そう言うとおばあちゃんはお財布を持ってきて、桃のジュースのお金をくれた。
ニコニコとおばあちゃんに言う。
おばあちゃんも嬉しそうにボクに言う。
中野ストアはおじいちゃんの家の近くにある雑貨屋さんだった。
野菜やジュースやお菓子や雑誌も売っている。
八百屋さんがベースだけど、個人でやっている規模の小さいコンビニみたいなお店だった。
おばあちゃんがケンちゃんに言う。
ケンちゃんはボクに言ってから、おばあちゃんの方を向き、
と、嫌そうなんだけど、真面目な顔で答える。
ボクの面倒を見ることに、異様なまでに執念を燃やしていた。ママ、そこまで頼んでないと思うんだけどな。リップサービスっていうか、その程度のモノなのに。
おばあちゃんはにこにこしてケンちゃんの頭をなでた。おばあちゃんにとっても、ケンちゃんは可愛らしい孫だからね。ボクが可愛い孫なのは言うに及ばずだけど。
愛くるしい孫のはじめてのおつかいを見送るかのようなおばあちゃんの笑顔に見送られ、ボクとケンちゃんは中野ストアへ向かう。
おばあちゃんが見えなくなると、ケンちゃんが言った。
ちょっとの間、ケンちゃんが黙る。
きっと、いろいろ葛藤しているんだろう。
自分の家から遠く離れた田舎に住む、おばあちゃんとの距離感がつかみづらいように見えた。
その結論に達したようだ。
それからケンちゃんは返事をするのが面倒になったようで、黙って中野ストアに向かった。
もうちょっと楽しそうな顔とかできないのかな?
それとも、このムッとした顔がケンちゃんにとって楽しそうな顔なんだろうか。
それは聞いてみないとわからない。けど、聞こうとする前に中野ストアに着いた。