2 おじいちゃんの家の洞窟
文字数 2,523文字
ケンちゃんはそれまでのことをなかったことにしたようだ。
ケンちゃんが洞窟の部屋の入口のスイッチに手をかけて言う。
ケンちゃんのところに駆け寄って、スイッチにかけている手を退けた。
何を隠そう、ここはおじいちゃんの家の裏山の洞窟を利用した畑の収穫物を収納しておく部屋だった。手掘りの壁だけど意外にきっちりと部屋だった。
怖い顔してケンちゃんは言った。
ケンちゃんがママの話をしたから、ちょっとだけ目が潤んだ。
春休みに入ってすぐ、ボクはケンちゃんとおじいちゃんとおばあちゃんの家に遊びに来ていた。
田舎だけど、住めば都という言葉がよく似合う田舎だ。
ケンちゃんはボクの手を引っ張り、洞窟から出ようとする。
ケンちゃんがそう言ったから、ボクは掘っていた穴のところまで戻る。
ボクがエネルギー充填120%のスコップの歌を必要としたのは、この石のためだった。
小さく掘られた穴に、灰色な石の一部が見えた。
ケンちゃんは穴の前にしゃがみ、石の周りの土を手でどける。
見えているのは石の一部だけのようだ。
ケンちゃんが土をどけても、どれくらい大きいのかはわからなかった。
ケンちゃんはボクの返事を待たずにボクのシャベルを握る。
ケンちゃんは面倒くさそうな顔をして、石の周りを掘り出した。
魔法をかけていないのに、ケンちゃんはザクザク掘る。
ボクが目指していたくらい……、否、もっと早く、もっと力強く。
ザッザッザと、みるみる石のいびつな形が現れる。
ゴロンとボクの拳よりも大きな石を掘り出し、ケンちゃんはボクの前に転がした。
小さいわけではないけれど、思っていたよりも小さい。
もっと大きくて何時間も掘らなければならない石が埋まってるような気がしたんだけど……。
何でもなさそうな感じでケンちゃんは言った。
そしてボクを洞窟の出口方向へ小突く。
ボクは意を決してケンちゃんに言った。
険悪な顔でケンちゃんは言う。
頭にパッと浮かんだ言葉。
でも、ボクはそう言っていた。
ペンっとボクの頭をはたく。
ボクの必死の訴えに、ケンちゃんは覚めた顔で言う。
自分でもどうしてこんなことを言ってしまったのかわからない。
えっと、この設定でいってみようかな?
ボクはアレ? と思った。
ちょっと考えてみる。
仲間外れにされたのが嫌だったのか、ケンちゃんはムッとする。
ケンちゃんはボクの手を引っ張って外に行こうとした。
渾身の力でケンちゃんの手を振り払う。
ケンちゃんがボクをじっと見る。
ニコリともしない。
ノリで答えてしまったら、ケンちゃんが本格的にボクを外に連れ出そうとしてきた。
冬は温かく、夏は涼しい洞窟の中。
ここで遊ぶのはわりと楽しい。
ケンちゃんも、それを知ってほしいんだけどな。
ケンちゃんが怖い。
ボクよりちょっと(20センチメートルくらい)高いケンちゃんがボクを見下ろす。
スッとその言葉が出てきた。
言ったらとても気持ちが軽くなった。
ケンちゃんはしばらく固まっていた。
無理もない。
突然、地底人だなんて言われたんだもの。
ボクもびっくりだよ。
この後、どうしようかな?
適当な設定、考えておくべきか?
あの二人のことも考えなきゃだよね。
即席にしてはよくない?
むしろ違うんだけどな……。
ボクは必死に考えた。
ケンちゃんが怒ったように言う。
ケンちゃんの言葉が、ボクにズキっと刺さった。
ケンちゃんはボクを置いて、外へ行く。
ケンちゃんがボクに手を差し伸ばす。
ボクはケンちゃんに走り寄った。
ボクはケンちゃんの手を握って部屋を出た。