6 遊んであげてる
文字数 1,542文字
家に帰ると、おばあちゃんは新しくホットケーキを焼いてくれた。
ボクとケンちゃんはおいしいホットケーキを食べて、お腹いっぱいになったボクは、縁側でお昼寝をしていた。
ポカポカと春の日差しは暖かで、庭の桜の木から花びらが降ってくる。
風は心地が良く、最高の気分だった。
クラッシャーケンちゃんの声がした。
眠かったから、庭から声をかけてきたケンちゃんに背を向け、そのまま狸寝入りをする。
ケンちゃんがボクの背中を軽く足で小突く。
乱暴な口調でそう言って、ケンちゃんは縁側に座った。
しかたがないのでボクも起き上がってケンちゃんの隣に座る。
暖かい陽気のためか、桜の花びらが舞い散っている。
ケンちゃんもそれを見ていた。
舞い散る桜が、ケンちゃんの周りを彩る。
桜の花に包まれたケンちゃんが、面倒くさそうに返事する。
よくママに言われることを言ってみた。
簡単に返された。
伊達に中学生じゃないね、ケンちゃん……。
薄紅色の桜の花びらが、ひらひら、ひらひらと散っている。
ケンちゃんは顔をしかめた。
ケンちゃんはボクよりも5つも年上だ。
午前中に穴掘ってて疲れた。
不服そうにケンちゃんが言う。
『このひ弱なボクを、バカみたいに体力があるケンちゃんと比べないでほしい……』
と、目で訴えてみた。
言わないのが得策ってヤツだよね。
ボクは何も言わずに庭を見る。
すると、チョウが飛んできた。
白いやつだった。
ボクは名前がわからない、白いチョウを目で追う。
青い空と緑の樹々や花々の間をひらひらと飛んで行く。
桜とも相まってなかなかいい感じ。
なんか、上から目線?
あれでも一応、おじいちゃんだよ?
風が吹いて、桜の花が舞い散っている。
そして、白いチョウも庭からいなくなった。
庭に面した縁側で、二人で風に吹かれていた。
ちらちらと舞う桜を観て、やっぱり桜はいいなと思った。
ボクがそう言うと、ケンちゃんは縁側から降りた。
怒ったようにケンちゃんは言う。
しかたがないからボクも行くことにして、おばあちゃんの部屋に入る。
なんだかんだ言ってケンちゃんが淋しそうだから、ボクはケンちゃんと遊んであげてる。