5 地底人が見た青い空

文字数 1,115文字

……っ

まぶしい

暗がりから出てきたためか、ケンちゃんは目を細めて空を見ていた。

ボクも一緒に空を見上げる。


雲一つない、一面の青。


田んぼと畑が雑草とかで緑色になっていて、ところどころ菜の花の黄色。遠くには山が見えて、空はひたすら青かった。


これでもかという感じの、一面の青い空。

すごい青だね
……そうだな

ケンちゃんは、じっと空を見ていた。

まだ子供だけど、子供みたいな目で。


まっすぐ、まっすぐ。

空の果てまで見ようとするかのように。

よくない?

地底人が見たって想像する、青い空。

別に、地底人じゃなくてもいいじゃん。
まったく見たことがなかったって気持ちから入るから驚きがあるんだよ。
それ、マジで地底人、

関係ないから。

地球人でもイイ感じに見える青い空?
地底人も地球人だろ?
あ、そっか

やっぱり、ケンちゃんはちょっとだけお兄ちゃんだ。

ボクは気づかなかった。

誰が見ても

綺麗な青い空だね。

ちょっとの間、ボクとケンちゃんは青い空を見ていた。




じーちゃんち

帰るぞ。

青い空を満喫したのか、ケンちゃんがボクを見て言う。ボクから見ると、ケンちゃんの後ろに、青い空が広がっていた。


ケンちゃん、青い空、似合うかも。


ばーちゃんがホットケーキ

焼いてくれてんだ。

ボクは息をのんだ。
ケンちゃん!

それ、早く言ってよ!!

なんで今頃そんなことを言うんだ。

ボクはケンちゃんをけっこう引き止めてしまっていた。

だって、地底人がなんとか言ってたし。
ホットケーキは

あったかい方がおいしいんだよ!

ボクは急いでおじいちゃんの家に向かう。

ここからすぐだけど、ちょっとは離れている。

…………。
それまで散々ボクを急かしていたケンちゃんがのんびり空を見ていた。
ケンちゃん、急いで!

ボクのホットケーキが冷めちゃうよ!

なんなんだよ、おまえ……。

ケンちゃんはわざとなのか、空を見ながらゆっくりと歩いてきた。

ボクはそんなケンちゃんを見ながら、いそいでおじいちゃんの家に向かう。


ボクは、地球に生まれてよかったって思った。

無理して地底人でなくてもいいかなって。


だって、それでも青い空は綺麗だし、ホットケーキはおいしいから。




…………。
ケンちゃんとボクの間に距離が開いた。

ケンちゃんは青い空を見ている。


なんとなくだけど、ケンちゃんに孤独の影が見えた気がした。

ほら、ケンちゃん!
ボクは戻ってケンちゃんの手を握る。
あ?
面倒くさそうにケンちゃんがボクを見た。
ホットケーキが待ってるってば。
ボクはケンちゃんの手を引っ張る。
ホント、

現金なヤツ……。

そう言って、ケンちゃんは小走りについてきてくれた。
早く、早く。

おばあちゃんが待ってるよ。

ふん……。
ケンちゃんは口や態度は悪いけど、なんだかんだでついてきてくれる。

それが、ボクは嬉しかった。

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登場人物紹介

ショウ

小学3年生の男の子

ケンちゃん

ショウの従兄

中学2年生

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