5 地底人が見た青い空
文字数 1,115文字
暗がりから出てきたためか、ケンちゃんは目を細めて空を見ていた。
ボクも一緒に空を見上げる。
雲一つない、一面の青。
田んぼと畑が雑草とかで緑色になっていて、ところどころ菜の花の黄色。遠くには山が見えて、空はひたすら青かった。
これでもかという感じの、一面の青い空。
ケンちゃんは、じっと空を見ていた。
まだ子供だけど、子供みたいな目で。
まっすぐ、まっすぐ。
空の果てまで見ようとするかのように。
やっぱり、ケンちゃんはちょっとだけお兄ちゃんだ。
ボクは気づかなかった。
ちょっとの間、ボクとケンちゃんは青い空を見ていた。
青い空を満喫したのか、ケンちゃんがボクを見て言う。ボクから見ると、ケンちゃんの後ろに、青い空が広がっていた。
ケンちゃん、青い空、似合うかも。
ボクは息をのんだ。
なんで今頃そんなことを言うんだ。
ボクはケンちゃんをけっこう引き止めてしまっていた。
ボクは急いでおじいちゃんの家に向かう。
ここからすぐだけど、ちょっとは離れている。
それまで散々ボクを急かしていたケンちゃんがのんびり空を見ていた。
ケンちゃんはわざとなのか、空を見ながらゆっくりと歩いてきた。
ボクはそんなケンちゃんを見ながら、いそいでおじいちゃんの家に向かう。
ボクは、地球に生まれてよかったって思った。
無理して地底人でなくてもいいかなって。
だって、それでも青い空は綺麗だし、ホットケーキはおいしいから。
ケンちゃんとボクの間に距離が開いた。
ケンちゃんは青い空を見ている。
なんとなくだけど、ケンちゃんに孤独の影が見えた気がした。
ボクは戻ってケンちゃんの手を握る。
面倒くさそうにケンちゃんがボクを見た。
ボクはケンちゃんの手を引っ張る。
そう言って、ケンちゃんは小走りについてきてくれた。
ケンちゃんは口や態度は悪いけど、なんだかんだでついてきてくれる。
それが、ボクは嬉しかった。