4 空想してみよう
文字数 3,092文字
ボクはぐっと口をつぐむ。
ケンちゃんがキレそうだ。
ここは適当なことを言っておこう。
怒ったようにケンちゃんは言った。
元々カリカリしているような言い方してるけどね。
カルシウム取ったらいいのに。
牛乳じゃなくて、煮干しとか小魚系で。
こんど、用意してあげよう。
ボクは強くうなずいた。
為せば成るだろう、たぶん。
立とうとするケンちゃん。
ホントにボクを置いて行っちゃいそうだったので、腕にしがみつく。
とっても怖い顔をしたケンちゃんがボクを睨み付ける。
言葉で説明するよりも、実際にやってみた方がいい。
ケンちゃんにもわかるはずだ。
ケンちゃんは乗り気ではなさそうだ。
ここはボクの腕の見せ所だね。
ケンちゃんから文句が出なかったからボクは続けた。
なんだかんだ言ってても、ケンちゃんはボクの言うことを聞いてくれる傾向がある。
言った覚えはあった。
でもそう言う。
真面目な顔でケンちゃんは言う。
小3の
さすがだよね。
ちょっと呆れてもいい?
ただ、それはケンちゃんがやっぱり『すごい』ことになる。
愛らしいボクの必殺技『おねだり』が効かないのである。
ボクの『おねだり』は強力で、これに屈する者がほとんどだ。
その『おねだり』が効かないということは、なんの力ももたないボクには、ケンちゃんは脅威と映る。
では、次の武器『言葉』を使用する。
ペンは剣よりも強しなんだな。
ムッとしたみたいだ。
ボクにアドバンテージがあるから、それが気に入らないんだね。解る程度の説明をして、納得してもらわないといけないな。
ボクは目を閉じる。
細かいことをごちゃごちゃ言われるのが面倒になった。
ボクがケンちゃんに知ってもらいたいのは、地底にずっといた人がいきなり青い空を見たら、どんな感じになるのかを想像することなんだ。
ボクは目を開けて、茶色い洞窟の壁を見た。
そう言って、洞窟の壁の向こうを意識して手を伸ばした。
なんか本気で青い空が見たい気分になってきたよ。
ボクは首を振る。
ホント、細かいことに気が付くよね。
ちょっとずつ興味を持ってきたっぽくない?
ふふふふふ。
もっともっと興味を持つがいい。
ケンちゃん、こういうの考えるの、キライじゃないよね?
水を差さないでほしい。
まったくもう。
ボクは閃 いた。
ケンちゃんはそう言ってボクの頭を軽くはたく。
ボクは思わず息を吸った。
居ても立ってもいられなくなって、ボクは立つと歩き出した。
ケンちゃんもついてきた。
それからちょっと歩いて、もう少しで洞窟を出るというところでボクは止まった。
ケンちゃんも止まる。
諦めたようにケンちゃんは言う。
まったく、しょうがないんだから。
なんだかんだ言いながらも、ケンちゃんは目を閉じた。
目を開けてケンちゃんが言う。
投げやりに言う。
子供をあやすように言ってあげた。
ホントに子供だな、まったくもう。
ボクは目を閉じた。
そう言っていたら、ホントにそんな気分になってきた。
そして、ボクは目を開けた。
ケンちゃんはまだ目を閉じていた。
そう言うと、ケンちゃんは目を開けた。
いつも文句ばっかり言ってるケンちゃんが、少しだけ素直な感じだった。
そんなことをつぶやくケンちゃんと、ボクは洞窟を出た。