19 ケンちゃんの帰宅
文字数 862文字
ボクは、おもむろに目を開けた。
足音が聞こえてきた。
はじめは小さかった音が、ちょっとずつ大きくなる。
タンタンタンタン……。
軽くて早めで、一定のリズム。
ボクは布団から起き上がる。
よつんばいになって、音を立てないように唐紙のところへ行く。
少し開けて、ケンちゃんの部屋を覗く。
すると、廊下と部屋を隔てる唐紙を開け、ケンちゃんが姿を現した。
明かりが後ろから射し、シルエットになっててなんかカッコいい。
無意味にズルい。
土で汚れた手を見てケンちゃんはつぶやいた。
一日中、洞窟で穴掘ってるとか、ボクには無理だな。
ケンちゃん、本気で穴を掘っていれば地底人がいるとか思ってるのかな?
ボクも同じこと思った。
それから、ケンちゃんは文机の方には行かず、和ダンスの方に行く。
和ダンスの方だと、ギターは見えない位置にある。
ケンちゃんは土まみれな感じになっているはずだ。
少し離れた感じで、廊下からおばあちゃんの声がした。
大きな声でケンちゃんが答える。
ケンちゃんは和ダンスから下着とパジャマを出す。
廊下からの光だけで、和ダンスの中が見えているみたいだ。
ケンちゃんがこっちを見た。
ボクは慌てず、ゆっくりと息を吸う。
必死に念じる。
ケンちゃんはじっとこっちを見ている。
ケンちゃんはそうつぶやいて、部屋を出て行った。
ちょっと、焦った……。
暗い部屋をじっと見てるのもな……。
布団に戻って寝た。