19 ケンちゃんの帰宅

文字数 862文字

ボクは、おもむろに目を開けた。
むゅ?

足音が聞こえてきた。

はじめは小さかった音が、ちょっとずつ大きくなる。


タンタンタンタン……。

軽くて早めで、一定のリズム。

(ケンちゃんの足音だ)
ボクは布団から起き上がる。
(そっと、そおっと……)
よつんばいになって、音を立てないように唐紙のところへ行く。
……
少し開けて、ケンちゃんの部屋を覗く。
(……暗い)
すると、廊下と部屋を隔てる唐紙を開け、ケンちゃんが姿を現した。
……
明かりが後ろから射し、シルエットになっててなんかカッコいい。
(中学2年生のくせに)
無意味にズルい。

俺、何やってたんだろ……

土で汚れた手を見てケンちゃんはつぶやいた。


一日中、洞窟で穴掘ってるとか、ボクには無理だな。

ケンちゃん、本気で穴を掘っていれば地底人がいるとか思ってるのかな?

(そういえば、地底人設定あったな。どうしようかな?)
ま、いっか……

ボクも同じこと思った。

それから、ケンちゃんは文机の方には行かず、和ダンスの方に行く。

(ケンちゃん、お勉強は?)
和ダンスの方だと、ギターは見えない位置にある。
(ああ、そうか!)
……
ケンちゃんは土まみれな感じになっているはずだ。

ケンちゃん

タオル、脱衣所に置いておくわね。

少し離れた感じで、廊下からおばあちゃんの声がした。
わかった。

ありがとう。

大きな声でケンちゃんが答える。
(やっぱり、お風呂が先か!)
ケンちゃんは和ダンスから下着とパジャマを出す。
(電気をつけてないのに、正確に必要な物を見つけている!)

廊下からの光だけで、和ダンスの中が見えているみたいだ。

ん?
ケンちゃんがこっちを見た。
(しまった!)
ボクは慌てず、ゆっくりと息を吸う。
(こ~こ~に~は~、だ~れ~も~、い~な~い~よ~)
必死に念じる。
…………
ケンちゃんはじっとこっちを見ている。
(むっ、むっ、無無~)
ま、いっか……
ケンちゃんはそうつぶやいて、部屋を出て行った。
ふぅ……
ちょっと、焦った……。
(お勉強をしない、という選択肢は思いつかなかった……)
暗い部屋をじっと見てるのもな……。
(も、ちょっと寝よ)
布団に戻って寝た。
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登場人物紹介

ショウ

小学3年生の男の子

ケンちゃん

ショウの従兄

中学2年生

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