第27話 きっと、だいじょうぶ

文字数 1,065文字

八月五日、正午。
猫トイレの中を検分している最中のこと。
『きんめ』改め『くまちゃん』の里親さんから連絡が入った。

「ハッチを引き取りたいのですが」

なんというタイミング。
これからハッチには運がついて回るに違いない。



くまちゃん家族には複数の猫がいる。
けれど、彼以外の猫はみんなおとなだ。
子猫のはしゃぎっぷりに、そうそうは付き合ってくれない。
同じくらいの年の遊び相手がいた方が幸せだろう、という配慮だった。

最初に名乗りを上げてくださった方も、二匹一緒に迎えてくださった。
「子猫が寂しい思いをしたら、かわいそうだから」、と。
そういうお気持ちは、託す側としても嬉しい。ありがたい。

インターネットで里親さんを募集することもできる。
専門のサイトがたくさんある。
可愛く撮れた写真を掲載してもらえば、もっと早くに、全員が家族に巡り会えたかもしれない。



勧めてくださった方もいたけれど、私は利用しなかった。
私がネット上で里親さんを探せない理由。
それは、里親詐欺にひっかかるのが怖いから。

世の中には悪質な人間もいる。
ダマされないという自信はない。

友人知人を頼り、人と人とのつながりをたどって、子猫たちの家族を探した。
多少時間はかかるけれど、安心安全には変えられない。

* * *

子猫たちに家族が見つかったときのため、キャリーは三つ買ってあった。
ひとつめに、シャム猫色の二匹が入った。
ふたつめに、きんめが入った。
後日、空っぽのキャリーが戻ってきた。



ハッチもキャリーの旅は経験済み。
血液検査ため、病院に行ったとき。あのときはキジが一緒だった。

* * *

おやつを入れた小皿と、ハッチをキャリーに入れる。
待ち合わせ場所までは車で20分ほど。
ドライブ中、彼はずっと昼寝をしていた。大物だな。

迎えに来てくれた新しい家族。
輝く笑顔の少年にキャリーごと抱っこしてもらって、ハッチは自分のお家に帰っていった。
晴れ晴れとしたさみしさを抱っこして、私も実家に戻る。

――おかえり。
ダイちゃんが出迎えてくれる。
ただいま。


* * *

いつもなら床下で昼寝をしている時間なのに、子猫たちはみんな起きていた。
いつもと様子が違うから、落ち着かないのかな。
おやつを差し上げてお皿を洗っていたら、仏間の方で祭りが始まった。
しまった。レジ袋(特大)をしまい忘れていた。




子猫たちだけだったら、危ないかもしれない。
けれど、ダイちゃんが見ているから、だいじょうぶ。
しっかり食べて、遊んで、ぐっすり眠って、元気に育ってください。



残った子猫たち。キジ、サバ、クロ。
あと三匹。
なんとかなる。
きっと、だいじょうぶ。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み