第11話 アヴェ・マリア

文字数 623文字

朝、ダイちゃんが玄関前で出迎えてくれた。



鍵を開いて中に入ろうとすると、入り口に長靴が転がっている。中敷きをやられた。
スリッパが見当たらない。遊んでいるうちにどこかに飛んでいったのだろう。
玄関でもたもたしていたら、矢のような催促が飛んできた。



はいはい、ごはんですね。少々お待ちください。



子猫はかわいい。
よく食べて、よく遊ぶ。
じゃれ合って、ケンカして、社会性を学んでいる。





お母さんはふたりいて、お父さんもいる。
人間の入る余地はない。



せいぜいごはん係を務めさせていただこう。

* * *

チビたんが断乳を決行した。
子猫が近づくと、シャーッと牙を剥いて威嚇する。怖い。
子猫たちは全員、ブチさんのお乳にたかるようになった。





ブチさんが毛玉に埋もれている。
その幸せそうな顔を見ていると、私の頭の中で勝手にBGMが再生される。
曲は、シューベルトのアヴェ・マリア。

いや、そんなのんきなことを言っている場合ではない。
小さな猫たちはすぐに大きくなって、ここから巣立っていくだろう。
そうなればこの子たちも、ノラ猫になる。
ノラ猫、ノネコは立派な害獣だ。これだけ数がいれば、ご近所の迷惑になる。

里親を探した方がいいのだろうな。
でも、どうやって?
触ることもできないのに。
何匹いるかも、まだ把握できていないのに。
誰か、助けてください。

* * *

黒猫が2匹いることが判明した。
顔立ちが違う。体格も毛の長さも違う。母親が違うのだろう。
片方は目がほんのり青かった。



さて、これはどっちかな。

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