第7話 ガールフレンド

文字数 738文字

五月の半ば。ダイちゃんが痩せた。
きちんとごはんをあげているのに。



ダイちゃんは、カリカリのトッピングに入っている煮干しが苦手だ。
細かく砕いてやれば食べるが、頭を残す。

ダイちゃんとすれ違いになった日には、お皿にカリカリを山盛りにしておく。

少しその場を離れて、戻ってきたらお皿が空っぽになっていた。
挨拶もなしに出ていった?
今までそんなことなかったのに。

 補充する。
 なくなる。
 補充する。
 なくなる。

煮干しの頭もきれいになくなっている。
これは、おかしい。

ボリボリと廊下の奥から音がする。
足音を盗んで確かめに行く。

 ――――見知らぬ猫と目が合った。



* * *

ダイちゃんのガールフレンドは、ふたりいた。
どちらも食に対する執着がすごい。



ダイちゃんのごはんが全部食べられてしまう。
私の目の届くところに、ダイちゃんのお皿を移動しよう。



ここなら、ゆっくり食べられるかな。





……ダイちゃん。もうちょっと頑張れ。

* * *

とりあえず、ダイちゃんのガールフレンドたちに呼び名をつけた。
どこの子かわからないので、仮の名前だ。

茶と黒が混じった微妙な色合いの猫は『チビたん』。



初めて見たとき、生後半年くらいの子ネコかと思うくらい小柄だった。
ダイちゃんの本命はたぶんこちらだ。チビたんに向けるまなざしが柔らかい。



白に灰色の猫は『ブチさん』。美猫さんだ。
どこかの飼い猫、もしくは飼い猫だったことがある子かもしれない。



どこから来たのか知らないが、それにしてもよく食べる。
ごはんを横取りされてもダイちゃんは怒らない。
以前、自分もここで同じようにごはんを分けてもらっていたことを思い出して、その恩を他の猫に返そうとしているのだろうか。

この状態がいつまで続くのか分からないけれど、カリカリを多めに用意した方がよさそうだ。

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