第14話 イクメン猫

文字数 1,035文字

私の前には課題が二つある。



1・母猫たちの避妊手術をしましょう。
2・子猫たちの里親を探しましょう。

たった二つだ。
それがとても難しい。

ころころした毛玉のような子猫たちは、私が近づくとぴゅーっと逃げる。



これじゃダメだ。なんとか馴れてもらわなくては。
里親さんが見つかっても、人間嫌いではどうしようもない。

「人間ってなんだかいいな、って思ってもらえるように頑張って」

獣医さんに励まされた。

子猫たちはダイちゃんに懐いている。
ダイちゃんにもたれて眠ったり、しっぽで遊んだりする。




イクメン猫。

自分の子を、他のオスによる『子殺し』から守る。
そういうオス猫もいるらしい。
ダイちゃんは家族に安全な場所を提供し、敵と戦っている。
立派なイクメン猫だ。

ずっと母猫や子猫たちの相手をしていると、さすがに疲れることもあるらしい。



ゆっくりごはんを食べたいときには別の場所で食べてもらおう。
くつろぎたいときは、私の足がバリアだ。
子猫も可愛いけれど、私にとってはダイちゃんが一番だ。
ときどきは甘えてもいいんだよ。




さあ、がんばろう。
ごはんを食べているとき、寝ているときを狙って、後ろからそっと撫でてみる。


ねこじゃらしも試してみよう。



シャム色の二匹は何とか…なりそう、かな。

* * *

【豆知識・イクメン猫とは】

同じような時期に出産した母猫たちが、協力して子育てをすることを『共同保育』という。
共同保育をする猫たちは、血縁関係にあることが多いようだ。
外敵から子どもを守るための自衛手段なのですが、最も脅威なのが、オス猫。

オス猫は自分の子孫を遺したい。そこで、発情期のメス猫を探し回る。
子育て中のメス猫は発情しない。
気に入ったメス猫を発情させるために、オス猫はメス猫が育てている子猫を殺す。
これが、オス猫による『子殺し』だ。

メス猫はオス猫による『子殺し』から我が子を守らなければならない。
しかし戦闘力ではオスに敵わない。
ごはんを食べるため、子猫を置いて出かけることもある。
だから、メス猫たちは力を合わせて子育てをするようになったのだろう。

2017年。
育児に関わるオス猫が「発見」され、『イクメン猫』と呼ばれるようになった。
自分のDNAを引き継ぐ子猫たちを、他のオス猫から守る父猫だ。
野良猫の生態研究をなさっておられる『#猫博士』こと、西南学院大学の山根明弘准教授は、オス猫が育児に関わることを、
「猫の進化です」
とコメントなさっていた。

ダイちゃん。あんた、スゴイ猫だったんだな。
って、どの子がダイちゃんの実子なのかな。

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