第2話 ノラ猫は歩く

文字数 477文字

日本の片隅の、
とっても田舎な村のさらに端っこで、
ダイちゃんは暮らしている。

 ――猫の行動範囲は半径1キロメートル。

と、ずっと前に聞いたような記憶がある。
ためしに地図の上で円を描いてみたら、
村がすっぽりと収まった。

* * *

オスのノラ猫の移動距離は半端ではない。
もりもり歩く。
「なぜここに、この猫が?」
と、びっくりすることがある。



あぜ道をダイちゃんが歩いている。
どこまでが彼のナワバリなのだろう。

山越えはしていないだろうと思うけれど、
そのへんは本猫にしか分からない。

 道祖神さま。
 羅漢さま。

だいだい色の猫を見ませんでしたか?
この道を通って、
向こうの方へ行きませんでしたか?




* * *
雨が降ろうと、風が吹こうと、
ノラ猫は歩く。



人間が作った道だけが道ではない。
たまに重なることもあるけれど、
歩きたいところが猫の道だ。





 あぜ道、野道、すきま道。

どんどん歩く。

足の裏は、大丈夫なのだろうか。
たまに心配になる。

* * *


日向で身づくろいをしている途中、
ふと動きを止めてどこかを見ている。

それとも、
小さな頭であれこれ考えているのかな。

 ―― 今日はどこから回ろうか。
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