第23話 少しずつ進もう

文字数 714文字

梅雨が明け、晴れの日が続くと稲の花が咲き始める。
本格的に夏が来た。



毛玉のようにコロコロしていた子猫たちが、どんどん猫らしくなっている。
あと四匹。次の里親さんは、まだ現れない。

先に健康診断をしてもらうことにした。
獣医さんを通じて里親さんが見つかるかもしれない、という期待も少しだけある。



検査結果は良好。
猫エイズ、猫白血病。陰性。
どの子もウィルスに感染していない。
いつ里親さんが見つかっても、安心してお渡しできる。

* * *

七匹もいるのに、女のコは、サバ一匹だけだった。
「そういうこともある」
と、獣医さんがおっしゃった。




一番、声が大きくて。
一番、好みがうるさくて。
一番、なんかこう…、いろいろと強い。

ネコ科が母系社会だからだろうか。

ライオンの群れでは、王はメス。
ちらっと読んだ『ナショナル ジオグラフィック』に、そう書いてあった。



ついでに、スタッフのみなさんにこの写真をお見せした。


「大きくなっても、お母さんのお乳が落ち着くのね」
「いえ。これ、ダイちゃんです」
ものすごく驚かれた。

ダイちゃんがこの病院で去勢手術をしてから、まだ二ヶ月も経っていない。
たった二ヶ月弱で猫はこんなにも変わる。



お腹がどんどんはげていく。



* * *

ダイちゃんと、子猫四匹。
いつもにぎやかだが、たまに静かなときもある。
それぞれが思い思いの場所でまったりとくつろいでいる。
場所の共通点は、『風の通り道』。




私も涼しい場所に椅子を移動させて、久しぶりにゆっくり読書を…。
していたはずが、一時間以上眠ってしまった。
目を開くと、猫たちの顔が私の方を向いた。



眠っている間は、風の音だけを聞いていたような気がする。
起こさないように、ひっそりしてくれていたのかな。

ありがとう。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み