第13話 ダイタニック号、暗中航路

文字数 1,105文字

ときどき離れの玄関にモグラが置かれている。
チビたんとブチさんからの贈り物だ。ごはん代のつもりかな。



沈没寸前のダイタニック号は、相変わらず暗闇の中を嵐の海を航行中。
夜中に敵の襲来を受けたことを、ご近所にお住まいの区長さんから知らされた。
ダイちゃんが戦ったようだ。
相手は黒っぽいオス猫だったそうだ。

ちらりと見かけたことがある。たぶんあのホルスタイン模様の猫だろう。



ブチさんとチビたんの捕獲をいそがないと、また子猫が生まれてしまう。
獣医さんから捕獲ネットをお借りした。

―イメージ図―


獣医さんお手製の秘密兵器だ。
ごはんを食べているときを狙う。
(ごめん!)
心の中で謝りながら網を振り下ろす。
空振り。



さすがノラ猫。完全に気を読まている。
私に向かって牙を剥く女のコたちを、ダイちゃんがなだめる。
前足でぽんぽんとブチさんの肩を叩いているのを見た。イケメンか。



しかし、もうネットは使えない。
動物愛護推進センターにメールで助けを求めた。
しばらくして返事が来た。

★ 抜粋 ★ ★ ★
猫の保護や直接猫を持ち込んでいただいての不妊・去勢手術は行っておりません。
地域における犬や猫に関する相談対応や飼い主のいない猫の手術等の支援地域の選定は
最寄りの保健所で行っております。
お手数ですが、管轄保健所へご相談をいただきますようお願いします。
(2019.6)
★ ★ ★ ★

なるほど。
やはり、ノラ猫に関する問題は保健所を通さなくてはいけないようだ。
さっそく保健所に電話をしてみた。お返事はこうだ。

★ 要約 ★ ★ ★
地域住民の方々のご理解とご協力のもと、捕獲器の貸し出しを行なうことはできます。
捕獲のお手伝いをすることはできません。
★  ★  ★ ★

なるほど。
保健所にも対応できるケースとできないケースがある。当然だ。
対応できないケースは、ボランティア団体と協力しているらしい。
捕獲器なら獣医さんが貸してくださる。しかし、ひとりで扱う自信が無い。怖い。

保健所の方に動物愛護センターのHPに戻るようアドバイスをいただいた。
そこには猫の保護活動を行なっているボランティアさんの連絡先が紹介されている。

『協力してくださるボランティアさんがいるかもしれません。
 お問い合わせをしてみたらどうでしょう』

ブチさんとチビたん、猫二匹を捕まえるだけ。
たったそれだけのことが、ひとりではできない。

獣医さんは「いつでも手術はしてあげるから」とおっしゃってくださる。
なんとかしなくては。
猫たちを不幸にしないために。

* * *


ブチさんの毛皮が大変なことになっている。
もけもけ、ネバネバ。
どこかでネズミ取り用粘着シートに捕まったらしい。
私には捕まってくれないのになあ。
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