第19話
文字数 1,386文字
☆☆☆
「まゆゆ、おまえさ、さっき言ってたけど、好きな奴とかいるの?」
「えっ?」
わたしと田中くんは本屋の六軒先のファーストフード店『バーガークイーン』に来ていた。
なにがクイーンかというと、使ってるじゃがいもがメイクイーンオンリーだ、という、そういう理由からである。
テリヤキバーガーのセットをわたしは頼み、田中くんはスパイシードッグを頼んだ。
トレイを持って二回の席に向かう。
店内はがらがらだった。
三組くらい、しかもいずれもカップルの客がいるだけで、店内のBGMがよく聞こえるほどの静かさだった。
BGMはプレップというミュージシャンの『チーペスト・フライト』という曲などが流れている。
で。
「まゆゆ、おまえさ、好きな奴とかいるの? 付き合ってんのか、そいつと」
「えっ?」
いや、驚くでしょ、やっぱり。
「おれさ、おまえに興味持ったよ」
ちなみに田中くん、なかなかのブサイクである。その上いじめられっ子で、今日は教師に銃口を向けるという蛮勇の持ち主。
「うーん、わたしも気になるけどなぁ、田中くんて」
「まじで?」
「そこまでキャラが立ってて気にならない方がおかしいよ」
「そ……そういう意味かよ」
「そういう意味だよ」
「お、おまえが好きな奴って、どんな男だよ」
「単刀直入ね」
「だって、聞きてーもん」
「なんで聞きたいの?」
「そんなこと聞くなよ、バカ」
「わたしが好きなのは、先輩だよ、女性の」
「ハァ?」
「え、なに、その反応……」
「恋愛的に、好きなのか」
「わからない」
「あこがれって奴か……。あこがれの先輩。ロザリオとか交換するんだろ」
「しません。少女小説の読み過ぎね!」
「タイが曲がっていてよ、っつって直してくれるんだろ、制服」
「あのー。うちの学校の先輩なんですけど……」
「あ、いや、わりぃ。つい興奮しちまって」
「田中くん。こうやってしゃべっていると、いじめられそうにないんだけどな」
うつむく田中くん。
「おれ、岡田に嫌われてっからな」
「岡田くんに? 今日、田中くんを殴った」
「ああ。あいつ、うちのクラスのボスだから、あいつに嫌われるってのは、イコールでクラスの男子全員に嫌われるってことなんだ」
「男子と仲が良い女子たちも、嫌うんだね」
「そういうこった」
「吹奏楽部最弱を誇るわたしには、どうしたらいいのか、皆目見当つかないわ」
「吹奏楽部最弱っておまえ……」
「金管楽器のマウスピースと未だに格闘中よ」
「そりゃ確かに最弱だな」
「テリヤキバーガーうまうま」
「ああ。冷めないうちに食うか。メアド教えてくれ」
「ん。いいよ」
わたしたちは電話番号やメアドなんかを交換する。
交換するために携帯電話をいじっていたら、階段をどかどか音を立てて上がってくる音。
気になって振り向いたら、上がってきたのは、沖田あさり先輩だった。
「め……、メアド」
「はい?」
わたしに向かって、ぜいぜい息を吐きながら。
「わたし、メアド交換してない……」
あさり先輩はそう言ってから、プラスチック製の椅子に体重を乗せた。
息が切れてる。
ここまで走ってきたのかもしれない。
「ああ。格好良く決めたかったのにね、わたしだって」
顔を手のひらで覆いながら、あさり先輩は呼吸を整える。
「まゆゆ、おまえさ、さっき言ってたけど、好きな奴とかいるの?」
「えっ?」
わたしと田中くんは本屋の六軒先のファーストフード店『バーガークイーン』に来ていた。
なにがクイーンかというと、使ってるじゃがいもがメイクイーンオンリーだ、という、そういう理由からである。
テリヤキバーガーのセットをわたしは頼み、田中くんはスパイシードッグを頼んだ。
トレイを持って二回の席に向かう。
店内はがらがらだった。
三組くらい、しかもいずれもカップルの客がいるだけで、店内のBGMがよく聞こえるほどの静かさだった。
BGMはプレップというミュージシャンの『チーペスト・フライト』という曲などが流れている。
で。
「まゆゆ、おまえさ、好きな奴とかいるの? 付き合ってんのか、そいつと」
「えっ?」
いや、驚くでしょ、やっぱり。
「おれさ、おまえに興味持ったよ」
ちなみに田中くん、なかなかのブサイクである。その上いじめられっ子で、今日は教師に銃口を向けるという蛮勇の持ち主。
「うーん、わたしも気になるけどなぁ、田中くんて」
「まじで?」
「そこまでキャラが立ってて気にならない方がおかしいよ」
「そ……そういう意味かよ」
「そういう意味だよ」
「お、おまえが好きな奴って、どんな男だよ」
「単刀直入ね」
「だって、聞きてーもん」
「なんで聞きたいの?」
「そんなこと聞くなよ、バカ」
「わたしが好きなのは、先輩だよ、女性の」
「ハァ?」
「え、なに、その反応……」
「恋愛的に、好きなのか」
「わからない」
「あこがれって奴か……。あこがれの先輩。ロザリオとか交換するんだろ」
「しません。少女小説の読み過ぎね!」
「タイが曲がっていてよ、っつって直してくれるんだろ、制服」
「あのー。うちの学校の先輩なんですけど……」
「あ、いや、わりぃ。つい興奮しちまって」
「田中くん。こうやってしゃべっていると、いじめられそうにないんだけどな」
うつむく田中くん。
「おれ、岡田に嫌われてっからな」
「岡田くんに? 今日、田中くんを殴った」
「ああ。あいつ、うちのクラスのボスだから、あいつに嫌われるってのは、イコールでクラスの男子全員に嫌われるってことなんだ」
「男子と仲が良い女子たちも、嫌うんだね」
「そういうこった」
「吹奏楽部最弱を誇るわたしには、どうしたらいいのか、皆目見当つかないわ」
「吹奏楽部最弱っておまえ……」
「金管楽器のマウスピースと未だに格闘中よ」
「そりゃ確かに最弱だな」
「テリヤキバーガーうまうま」
「ああ。冷めないうちに食うか。メアド教えてくれ」
「ん。いいよ」
わたしたちは電話番号やメアドなんかを交換する。
交換するために携帯電話をいじっていたら、階段をどかどか音を立てて上がってくる音。
気になって振り向いたら、上がってきたのは、沖田あさり先輩だった。
「め……、メアド」
「はい?」
わたしに向かって、ぜいぜい息を吐きながら。
「わたし、メアド交換してない……」
あさり先輩はそう言ってから、プラスチック製の椅子に体重を乗せた。
息が切れてる。
ここまで走ってきたのかもしれない。
「ああ。格好良く決めたかったのにね、わたしだって」
顔を手のひらで覆いながら、あさり先輩は呼吸を整える。