第5話:競馬と馬券を当てる

文字数 1,599文字

 11月21日、大蔵省が多額の債務超過に陥った阪和銀行に業務停止命令を出した。銀行への業務停止命令は戦後、初めてとなった。12月24日、敦賀原発2号機で冷却水漏れ事故発生、以後・事故を隠したことが問題となった。1997年1月、職場で仲良くなった大熊俊範さんに競馬に誘われて、出かけてみると、競馬馬のかわいい目としぐさを見て気に入った。こうして、競馬に出かけるようになった。

 大熊さんが競馬は見るだけでは面白くない。どの馬が勝つか勝負する一緒のばくちだ。そのためには、馬の調子を見抜く能力が必要だ。俺は、馬が懸命に走る姿に自分の人生を見るような気がする。後方につけて、他の馬が疲れたところを見て、徐々に順位を上げたり、最初から先頭グループに入り先頭馬のすきをついて一気に先頭を奪い優勝するとか2、3分の勝負にかけるって面白いと言った。

 その後、大熊さんが戸部に、おまえは、大穴馬券を当てるスリルと着実に勝つようにするのとどっちが好きかと聞かれた。それに対して戸部は、着実に勝つようにしたいと言うと笑いながら、それなら複勝が一番、当たる確率が高いと言い切った。

 しかし、当たっても賞金は、あまり高くなく、2倍以下が多いと言った。それでも構わないかと聞くと、何回も悔しい思いをするよりも賞金が少なくても当たる確率が高い方が面白い答えた。それを聞いて大熊さんが複勝「3位以内で賞金が出る」にかけろと言い、良い情報を教えてやると笑いながら言った。それを聞いて戸部がよろしくお願いしますと、ていねいに言い、頭を下げた。

 3月になると大熊さんが戸部に4月17日、中山競馬場で行われる第26回・皐月賞に行かないかと誘われた。そこで、ぜひ行きたいと戸部が言うと武蔵小杉駅前に12時半に集合と言われた。戸部が12時半に武蔵小杉駅前へ着くと、すぐに仲間2人が来て横須賀線に乗って東京駅を経由して船橋法典駅に14時前に着いた。カフェに入り大熊さんが友人の佐藤さんを紹介してくれた。その後、コーヒーを飲みながら競馬新聞を見て15時前に店を出てパドックへ向かい大熊さんが出走馬をじっくり見た。

 そして、前評判の高いの9番セイリューオーと10番ランニングゲイルの調子が良くないと小声で言った。この時、複勝を買うとしたらと、どれが良い戸部が大熊さんに聞くと、18番サニーブライアンか2番シルクライトニングと言った。それを聞いて18番サニーブライアンの方が名前が良いと戸部が言った。その後、速足で馬券売り場へ行き戸部は、18番サニーブライアンの複勝を100枚・1万円分の馬券を買った。

 大熊さんと佐藤さんは、8番メジロブライトを中心に連複を買った。買い終わると再び、急ぎ足で観覧席の高い所へ入り込んだ。その後、レースが始まった。2コーナーで7番テイエムギングオーが1位で18番サニーブライアン2位であった。3コーナーでも18番が1位、7番3位になった。そして4コーナーを回る時、18番1位で8番が15位に下がった。この時、大熊さんが駄目かとつぶやいた。

 そして、ゴールし、18番サニーブライアンが1位、2番シルクライトニングが2位、3番フジヤマビザンが3位となった、この時、興奮していた戸部が大熊さんに複勝が取れました。ありがとうとお礼をし、おごらせていただきますと言った、しかし、大熊さんと佐藤さんの顔色は良くなかった。その結果、戸部の払戻金が9万5百円となった。18時に武蔵小杉駅に着いて居酒屋に入った。

 店で生ビールと夕食を頼み料理がそろうと大熊さんが戸部のビギナーズラックに乾杯と言った。しかし、競馬の話はしないで静かに料理を食べてビールを飲んだ。1時間位して料金を書いた紙を戸部が持ち精算した。その金額は、約1万円で最終的に戸部のもうけが8万5百円となった。店を出て別れ際に大熊さんと佐藤さんがごちそうさんと言ってくれた。
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