第21話:マレーシア機が撃墜された?!

文字数 1,532文字

 こうして、マレーシア航空機MH370便の行方不明事件は、未だに謎に包まれたまま多くの人達の記憶から消え去った。4ケ月後にもマレー航空機に悲劇が起きた。2014年7月17日にマレーシア航空の定期旅客便がウクライナ東部上空を飛行中に撃墜され、乗客283人と乗組員15人の全員が死亡した。

 アムステルダムからクアラルンプールへと向かったボーイング777-200ERは、ウクライナ~ロシア間の国境から約50キロ離れた所で消息を絶ち同航空機の残骸が国境からウクライナ側へ40キロのドネツィク州グラボベ近郊に落下。2014年3月8日のマレーシア航空370便墜落事故に続いて、マレーシア航空で2度目の航空機損失事案となった。

 この撃墜事件は、ドンバス戦争で親ロシアの反政府勢力が支配下としていた地域で発生。当該航空機との通信が途絶えてから約1時間後、ドンバス地域で分離主義勢力を率いていたイーゴリ・ギルキンは自身のVKontakteアカウントにおいて人民兵からの報告としてウクライナ軍のAn-26輸送機が撃墜されたと主張。グラボベ近郊に落ちた。その残骸が民間旅客機だと明らかになった。

 するとギルキンはこの主張を撤回し航空機撃墜への関与を否定した。犠牲者の多くがオランダ人であったことから、事故調査は、オランダ安全委員会「DSB」とオランダ主導の国際合同捜査チーム「JIT」によって行われた。2015年10月の最終事故調査報告書では、東部ウクライナの親ロシア分離主義に支配された地域から発射された地対空ミサイル「ブーク」による撃墜と結論付けられた。
 JITによると使用されたブークは元々ロシア連邦の第53対空ミサイル旅団にあったもので、撃墜当日にロシアから輸送され、反政府勢力の支配地域である場所から発射され、その後ロシアへと戻された。DSBとJITによる調査結果は、アメリカ合衆国やドイツの諜報機関が主張していた内容とウクライナ政府の主張と合致するものだった。

 JITの結論に基づき、オランダ政府とオーストラリア政府はブークの設置配備に関してロシアに責任があるとして、2018年5月以降これを追及する法的手段を模索した。2019年6月19日、JITはイーゴリ・ギルキン「ロシア連邦保安局元大佐」、セルゲイ・ドゥビンスキー「ロシア参謀本部情報総局職員」、オレグ・プラトフ「ロシア参謀本部情報総局特別部隊元兵士」
 それに加えて、レオニド・ハルチェンコ「ウクライナ人、反政府戦闘部隊指揮官」らを殺人罪で起訴すると発表した。ロシア政府は、航空機撃墜への関与を否定。Bellingcatはロシアが航空機が撃墜された方法の説明をその時々で変えていたと主張している。ロシアメディアの報道も他国の報道とは異なった。ロシアは戦争空域で民間機の飛行を許可したウクライナ政府の落ち度であるとの見解だった。

 2019年6月20日、マレーシアのマハティール首相はギルキンらの起訴の報を受け、JITの結論を「ばかげている」と非難し、「この件は最初から、いかにロシアの犯行として非難するかという政治問題になった」との考えを表明。さらに「今のところ証拠はなく、伝聞情報しかない」としロシア側の関与を示す証拠を求めた。但しマレーシアはJITに参加し同国外務省は捜査結果を支持する声明を出した。

 本事件では乗客283名と乗務員15名の全員が死亡し、旅客機撃墜事件として最多の死者を出した事件となった。7月19日までに航空会社は298人の乗客と乗務員全員の国籍を断定した。それによると乗客の3分の2以上「68%」はオランダ人だった。他の大部分の乗客はマレーシア人とオーストラリア人でそれ以外に7カ国の市民がいた。
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