第13話
文字数 1,005文字
フィンレイ用のサンドウィッチはオリヴィアのそれの二倍の大きさがあるが、竜の頭に比べたら小さく見えてしまう。野菜と、果物のジャムと、卵の三種類のサンドウィッチ。オリヴィアがちまちまと食べる横で、どれも一口で終わってしまうフィンレイは、努めてゆっくりと、一つ食べ終わってから次を口に入れるまでにたっぷりと時間をおいて食べる。
オリヴィアの持ってくるものはフィンレイには小さすぎて、実は味もよくわからない。そもそも自分に味覚があるかどうかもフィンレイは知らない。けれど、いつも大切に大切に食べていた。味はわからなくても、オリヴィアが自分のために作って持ってきてくれたことが嬉しく、それが「おいしい」ということなのだろうと思っている。
「おいしいよ、オリヴィア」
「よかった。小さすぎない?」
「大丈夫。これより大きいと、持ってくるのも大変でしょう? もともと、僕は食べなくても困らないし」
「不思議よね。そんなに大きいのに、食事の必要がないなんて」
「そういうものだからね」
もぐもぐとサンドウィッチを食べるオリヴィアを眺める。初めて出会った頃はよく、あまり見られると恥ずかしいと言って身をよじっていたが、いまは特に気にしなくなった。こういうのを慣れって言うんだろうなあ、とフィンレイはぼんやり考える。
少しずつオリヴィアは変わってきている。自分もそうなのだろうかとたまに考えるが、いまいち実感はない。
「ねえ、首都の生活はどう? 新しい友達ができたみたいだけど、ほかにはなにかあった?」
少女のことをもっと知りたくて投げかけた質問。
「うーん、転入したてで勉強が大変だから、お出かけとかはしてないの。だから、まだわからないわ。
あ、でも、治安が悪いって噂は本当みたい。先生が毎日言うから。寮住まいの生徒は門限が早くなってるので気をつけるようにとか、通学している生徒は寄り道せずに帰りなさいとか」
その答えが、自分に向かう刃になるとは思わなかった。
呼吸が止まる。輝く湖も見ることができず、うつむくことで友達を写す視界から逃げた。そんなフィンレイを心配して、オリヴィアがそっと頭を撫でる。
「心配しないで、フィンレイ。私なら大丈夫よ。それに、テオ兄さんたちも頑張ってくれているもの。きっとすぐに落ち着くわ」
「……うん、そうだね」
そうだ、すぐに落ち着くのだ。
その方法を、竜の子供は知っている。
オリヴィアの持ってくるものはフィンレイには小さすぎて、実は味もよくわからない。そもそも自分に味覚があるかどうかもフィンレイは知らない。けれど、いつも大切に大切に食べていた。味はわからなくても、オリヴィアが自分のために作って持ってきてくれたことが嬉しく、それが「おいしい」ということなのだろうと思っている。
「おいしいよ、オリヴィア」
「よかった。小さすぎない?」
「大丈夫。これより大きいと、持ってくるのも大変でしょう? もともと、僕は食べなくても困らないし」
「不思議よね。そんなに大きいのに、食事の必要がないなんて」
「そういうものだからね」
もぐもぐとサンドウィッチを食べるオリヴィアを眺める。初めて出会った頃はよく、あまり見られると恥ずかしいと言って身をよじっていたが、いまは特に気にしなくなった。こういうのを慣れって言うんだろうなあ、とフィンレイはぼんやり考える。
少しずつオリヴィアは変わってきている。自分もそうなのだろうかとたまに考えるが、いまいち実感はない。
「ねえ、首都の生活はどう? 新しい友達ができたみたいだけど、ほかにはなにかあった?」
少女のことをもっと知りたくて投げかけた質問。
「うーん、転入したてで勉強が大変だから、お出かけとかはしてないの。だから、まだわからないわ。
あ、でも、治安が悪いって噂は本当みたい。先生が毎日言うから。寮住まいの生徒は門限が早くなってるので気をつけるようにとか、通学している生徒は寄り道せずに帰りなさいとか」
その答えが、自分に向かう刃になるとは思わなかった。
呼吸が止まる。輝く湖も見ることができず、うつむくことで友達を写す視界から逃げた。そんなフィンレイを心配して、オリヴィアがそっと頭を撫でる。
「心配しないで、フィンレイ。私なら大丈夫よ。それに、テオ兄さんたちも頑張ってくれているもの。きっとすぐに落ち着くわ」
「……うん、そうだね」
そうだ、すぐに落ち着くのだ。
その方法を、竜の子供は知っている。