第14話

文字数 630文字

 自国の歴史について、講義を受ける。
 以前はやることがないからしていた勉強だが、こちらではなかなか楽しい。首都に来てよかったと改めて思う。
(テオ兄さんにお礼を言わないと。それに、フィンレイにも)
 手を引いてくれた従兄と背を押してくれた友達。どちらもいたからこその現在だ。
 決心をして、ペンを握り直す。意識を授業に戻すと教師が百年前の暴動について熱心に解説していた。
 当時の治安悪化が引き金となった事件だが、この暴動をピークとして治安は徐々に回復していったのだという。そして、この暴動をきっかけに出された政令によって、技術振興が起きた。
 そもそも、なぜ治安が悪化していったのか…… 農耕・税制・思想・技術などの時代背景が解説される。平定のために出た政令、開かれた議会の名前が黒板に連ねられる。そして、故郷の学校では聞けなかったであろう、教師による教科書外の講釈。それらをすべてノートにまとめる。
(治安悪化による暴動なんて。現代で起きなければいいけど。まあ、一度起きていることだし、対策も立ててあるはずよね)
 もし起きてしまったら、従兄が鎮圧に出ることもあり得る。怪我などしてほしくないし、騎士であることに誇りを持っているテオはきっと、市民に剣を向けることに傷つくだろう。そうなれば自分も悲しいし、そんな自分を見てフィンレイも悲しむに違いない。
 どうか、そんなことになりませんように。
 少しだけ集中を欠いた状態で、オリヴィアは授業を受け続けた。
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登場人物紹介

オリヴィア

赤い髪の女の子。引っ込み思案気味だか実は頑固者で、一度言い出したら聞かないタイプ。きわめて努力家だが自己評価が低い。

フィンレイ

寂しがりで知りたがりな竜の子供。たぶん男の子。普段は異世界の洞窟に棲息しており、影を通してオリヴィアに語り掛けている。

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