【ネタバレ】映画:ゴジラ キング・オブ・モンスターズ

文字数 2,810文字

ゴジラ キング・オブ・モンスターズ
感想・ネタバレ大いにあり。注意!

2019年6月
 ハリウッド版ゴジラを鑑賞させていただきました。
 実のところ、前作を観ていないのですが、観ていなくともほぼわかりますので、大丈夫です。
 それだけストーリー的には単純であることが伺い知れます。
 とにかく見せ場は怪獣同士の闘いなのだから、人間など添え物でよろしい。という徹底した気持ちが熱く伝わってきました。その堂々としたクオリティーはなんらかの評価です。

 ここがすごい。
 放射能をまき散らすゴジラと侵略者キングギドラのタイマン勝負の真下で主要人物たちがうろちょろしていても【地熱温度】【放射能汚染】のことなど考えなくてもよろしい。
 彼らは主要キャラというバリアーに守られて怪獣たちの猛烈ファイトの真下で自由に動き回れる。核爆弾でも死なない怪獣たちが光線を吐き出し、あたりを焼け野原にしている真下で、バラバラになっていた親子(主要キャラ)が抱き合って「あぁ、無事でよかった」と抱き合う姿は、感動以前にゴジラとキングギドラに「ちょ、あんたらなにしてんの? こっち取り込み中なんだけど」と突っ込まれてもおかしくない。
 ゴジラの気持ちになって地熱にも放射能にも打ち勝つ最強の親子愛の目撃者になれること間違いなしです。

 人類(主要キャラ)の強靭さはそれだけではありません。

 舞台が南極大陸であろうと人類は雪山くらいの装備で【凍死】もしなければ、怪獣の光線うけても【溶けない氷】のもと逃げまどうことができ、飛行艇のハッチは閉まらないの? 閉めるの忘れてるの? 閉じないと死なないの? どうでもいいやそんなこと。メインは怪獣の闘いだから、主人公がどうやって助けられたのかわからなくてもどうだっていいのです。目が覚めたらベッドの上。本日のラッキー星座に守られているにちがいない。
 人類(主要キャラ)のモンスター並みの生命力を目の当たりにすることができているのに、観客はゴジラとキングギドラの仁義なき大喧嘩に目を奪われている。人類の生命力を見落としているのです。もっと人類の活躍に注目してあげましょう。

 もう一つ、渡辺謙演じるところの芹沢博士がこれまたイカした最期を遂げてくれます。
 人間(米軍)のせいで瀕死になったゴジラを救うため、核エネルギーをゴジラに与えて元気になってもらおうじゃないか。でもそれには誰かがゴジラの元に行ってタイマーセットして核爆弾ドーンしなくてはならないから、生きては戻れないです。という話になり。
 え~、そんな、どうしよう。となりそうなものの。そういう間を作ることなく芹沢博士が「じゃ、私が」とすんなり立候補。
……誰か止めろよ……
 いや、止めなくてもいいからせめて「ここで博士にいなくなられては」とか「ここは私が」とかダチョウ倶楽部くらいのやりとりみせてくれてもいいんじゃないのか? 芹沢博士は責任者だけど、アメリカ軍の尻拭いを芹沢博士が…(略)。
 ほんとうに、誰かが犠牲にならないとゴジラにエナジー剤である核の力を運んでやることはできなかったのだろうか。ロボットの一体、二体ないのかこの組織は。
 科学が発達している時代のはずなのに、怪獣専門の対組織という設定なのに。爆弾のタイマーがおそろしく旧式でデジタル表示もないとか、目を見張ってしまうこと必至じゃないか。
 それはさておき。このまま死んでしまうのは芹沢博士にというより、世界の渡辺謙に申し訳ないということなのか。見せ場は用意されていました。
 なんと、芹沢博士は人類で初めてゴジラに触れることができたのです。
 あぁ、芹沢博士。その喜びを誰に伝えたいですか? 研究の成果はここにあったのですね。博士、いままでのゴジラとの思い出が走馬灯のように……。

 ちゅっどーん

 怪獣側の話もしたいと思う。
 ハリウッド版ではゴジラは人類の味方として、外来種であるキングギドラと闘ってくれた。という設定になっている。
 人類の味方。というのは人類がいいように、そう考えることにした。ということであって、ゴジラにとっては人類ではなく地球を守っているのであり、美しい緑の地球を壊している人類は排除対象であろう。
「話せばわかる。わかってくれる。意思疎通はできると信じている」と人類(一部主要キャラ)は言うが、ゴジラの方からしてみれば「こいつら(人類みんな)には何言ってもわかってもらえないから壊すしかないよな〜」なのではなかろうか。
 暴れまわるゴジラに対し。
「兄さんの言うことはよくわかる。けど、見境ないとこあるから」
 私の美しいフォルムでも見て落ち着いてくれませんか。と登場しているのがモスラだ。しかし、残念ながら落ち着きを取り戻すのはゴジラ兄さんではなく人類だったりする。
 そんなモスラもただひらひら舞っているだけではない。火山怪獣ラドンと空中戦を繰り広げたりする。
「ラドンあなたキングギドラなんかの肩持つの? 地球生まれとして恥ずかしくないの?」
「ちっ、おれにとっては強いものが神なんだよ」
 という声が聞こえてきそうです。
 しかもラドン、モスラに対して壁ドンまで仕掛けてきます。
「おまえもギドラ様の配下になっておれと付き合えよ」
「冗談じゃないわ、やめてよ」
「悪いようにはしないぜ〜」
「私の心はゴジラのものなのよ!」
 刃物でぐっさり。
「ううっ、気の強い女、嫌いじゃないぜ」
 ラドン敗北。
 そのラドンですけど。
 ゴジラがキングギドラに勝利したとたん「おれは最初からゴジラ様が勝つと信じてたけどよ」とばかりにゴジラにひざまずいています。調子のいいやつです。怪獣にも性格があるのですね。
 キングギドラを踊り食いするほどの強さをみせて勝利したゴジラに「あんたが大将」と集まる怪獣たちですが、地球に17体いると言われていたはずなのに、半分も駆けつけていないんですよね。
 これはゴジラに人望がないのか。はたまた制作費がたりなかったのか。

 制作費といえば。日本のゴジラは協賛企業の看板や商品がこれでもかと街じゅうにあふれ、ことごとくゴジラが破壊していくのが有名ですが、ハリウッド版ではそれがないのですよね。
 怪獣に自社を壊されるなんてとんでもない、不吉だ。そういう考えかもしれません。
 国が違えばそういう事情もあるかもしれない。ならばほかの方法で映画製作の資金調達をすべきなのかもしれない。
 そうすれば基地内部に明かりが灯るだろうし、ゴジラの目がどこについているのかわかるほどの明度がスクリーンに施されるに違いない。

 3作目も決まっているそうなので、昼間のシーンを加えていただき、組織の基地に停電をなくしていただき、観客の目に優しいゴジラを期待したいところである。

 小栗旬にも期待しています。
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