映画:Diner(ネタバレなし)
文字数 2,332文字
映画:Diner(ネタバレなし)
2019年7月、映画「Diner」を鑑賞させていただきました。
藤原竜也と窪田正孝が絶品のご馳走だったわけですが。
まずはあらすじから。
母親に捨てられたトラウマから、自分には何の価値もない。ただ生きているだけ、という日常を送っていたカナコ。そんなカナコが誤った細道に入ってしまったら、なりゆきで裏社会専用のDinerでウエイトレスをする羽目になってしまった。
元殺し屋のシェフ、ボンベロが営む店にはヤバイ奴らしか来店しない。ので、凡人ウエイトレスのカナコは命の危険と背中合わせで働かざるを得なくなります。
ヤバイとしかいいようのない裏社会の強者どもを相手にカナコはどう生きていくのか。カナコはどう成長していくのか。といったところです。
原作は平山夢明の同名小説。監督に蜷川実花。主演に藤原竜也。脇を固めるヤバイ奴らに窪田正孝、武田真治、小栗旬、奥田瑛二、真矢ミキやら。
まともなキャラクターがいないところにまともなキャスティングですが、みなさんものの見事にまともじゃないです(絶賛です)。
そんな狂気のなかに放り込まれる自暴自棄の女性カナコに玉城ティナ。
正直、玉城ティナという女優さんをよく知らなかったのですが、演技派でした。無価値から価値のある自分に気づいたカナコのシーンは、それだけで見る価値がありです。自分を放棄していた時と放棄を放棄した時からのカナコの成長は、心が迷子になっている人には是非とも見て欲しい重要なポイントです。
このお話はカナコの成長譚なのですが、その見せ方が面白い。
特に導入部である無価値なカナコの説明ですが、監督が舞台監督の娘であるからか、かなり舞台を意識した作りになっています。しかしそれはつまらなくなんてない。むしろカナコの心情がわかりやすかった。こういう見せ方もあるのだなと感心させられました。
カナコがDinerに放り込まれてからの展開は息つく暇がありません。ハラハラしっ放しで心臓に悪い。なにせいい人なんてひとりもいない。そこにいるのはヤバイ奴らだけなのだから。
狭いようで広い店内を荒らしまくるわけですから。観ているほうは目が釘付けになる上に心拍数も上がりまくりです。
防音設備が整っているのかと言わんばかりにヤバイ奴らがドンパチやらかすので、映像酔いを起こす可能性もあります。体調がよろしくないときは鑑賞を控えたほうがいいかもしれないです。
さて、監督をつとめた蜷川実花さんはとても才能のある人だと思います。おそらく本人は偉大な演出家であった父親の娘というだけで注目されるのは嫌なことだと思っているでしょう。多くの2世がそうだとは思うのですけれど。
実花さんは違うベクトルでお父さんとは比べられない才能の持ち主だと思えるのです。鮮やかな色彩の写真家としての顔もしかり、この映画を観てもそう感じました。これからも自信をもって活動していただきたいです。
主演の藤原竜也、といえば蜷川実花監督の父親である蜷川幸雄の秘蔵っ子として有名ですが、それゆえなのか実花監督とも相性がぴったりのようでした。
「おれは~ここの~王だっ!」
から始まるボンベロの自己紹介。舞台の発声法が映画のなかで興味深いインパクトを醸し出しています。映画のなかに舞台の演出というマジックをそこかしこに観ることができるのが面白味のひとつになっている。ほかの監督作品では観たことがない世界だな。と映画の可能性を確信できるのです。
「砂糖の一粒までもが俺に従う!」
と言い切ってしまうボンベロさん。元殺し屋のシェフは客の気持ちまで読み取って料理を作る人です。そういう意味ではかなりいい人だ。
彼の作るハンバーガーはかなり美味しそうです。手さばきも鮮やかで、私のためにもハンバーガー作っていただけないだろうかと注文したくなります。
カナコ以外は裏稼業のヤバイ人間しか出てこないのでどいつもこいつも本名は出てきません。なので「ボンベロ? めっちゃ日本人じゃん」というツッコミはしてはいけません。もれなくDinerでこめかみに銃弾受けてご臨終になります。
話は裏稼業のボスの事故死から、跡目問題に発展し、ボスは本当に事故死なの? と発展し、結局のところDiner舞台に派手なドンパチになるわけです。
そのドンパチも派手な舞台演出といわんばかりで、そこまでやったら店が崩壊どころか、なんかもう笑っちゃうくらいの事件です。
と突っ込みたくもなるのですが、それはエンターテイメントなので、派手でいてオシャレでもある演出を存分に楽しみましょう。とはいえ、あまり見入りすぎると映像酔いする可能性もありますので気をつけて下さい(しれっと2度言った)。
カナコは、自分は存在していいんだ。誰かのために生きる自分がいていいんだ。ということに目覚めて大人の人間として成長します。
ただのドンパチ映画ではなく、ちゃんと筋が通っていました。
ただのイケメン揃えた映画ではなく、しっかりとした芯が見えました。
ヤバイ奴らを演じた役者たちのヤバさを見るだけでも、なにか得をした気分になれましたし、藤原竜也は大切なことを2度言ってくれるし、本郷奏多はチャイルドだし、武田真治は筋肉披露だし、窪田正孝は可哀想すぎて泣けてくるし、小栗旬は犬神家のスケキヨです。
ハリウッドアクション映画なみに「死んでる死んでる」と言いたくなるところまでもあるのもいいスパイス。
エンターテイメント。という言葉がよく似合うDinerで、美味しいハンバーガーを召し上がってみてはいかがだろうか。
2019年7月、映画「Diner」を鑑賞させていただきました。
藤原竜也と窪田正孝が絶品のご馳走だったわけですが。
まずはあらすじから。
母親に捨てられたトラウマから、自分には何の価値もない。ただ生きているだけ、という日常を送っていたカナコ。そんなカナコが誤った細道に入ってしまったら、なりゆきで裏社会専用のDinerでウエイトレスをする羽目になってしまった。
元殺し屋のシェフ、ボンベロが営む店にはヤバイ奴らしか来店しない。ので、凡人ウエイトレスのカナコは命の危険と背中合わせで働かざるを得なくなります。
ヤバイとしかいいようのない裏社会の強者どもを相手にカナコはどう生きていくのか。カナコはどう成長していくのか。といったところです。
原作は平山夢明の同名小説。監督に蜷川実花。主演に藤原竜也。脇を固めるヤバイ奴らに窪田正孝、武田真治、小栗旬、奥田瑛二、真矢ミキやら。
まともなキャラクターがいないところにまともなキャスティングですが、みなさんものの見事にまともじゃないです(絶賛です)。
そんな狂気のなかに放り込まれる自暴自棄の女性カナコに玉城ティナ。
正直、玉城ティナという女優さんをよく知らなかったのですが、演技派でした。無価値から価値のある自分に気づいたカナコのシーンは、それだけで見る価値がありです。自分を放棄していた時と放棄を放棄した時からのカナコの成長は、心が迷子になっている人には是非とも見て欲しい重要なポイントです。
このお話はカナコの成長譚なのですが、その見せ方が面白い。
特に導入部である無価値なカナコの説明ですが、監督が舞台監督の娘であるからか、かなり舞台を意識した作りになっています。しかしそれはつまらなくなんてない。むしろカナコの心情がわかりやすかった。こういう見せ方もあるのだなと感心させられました。
カナコがDinerに放り込まれてからの展開は息つく暇がありません。ハラハラしっ放しで心臓に悪い。なにせいい人なんてひとりもいない。そこにいるのはヤバイ奴らだけなのだから。
狭いようで広い店内を荒らしまくるわけですから。観ているほうは目が釘付けになる上に心拍数も上がりまくりです。
防音設備が整っているのかと言わんばかりにヤバイ奴らがドンパチやらかすので、映像酔いを起こす可能性もあります。体調がよろしくないときは鑑賞を控えたほうがいいかもしれないです。
さて、監督をつとめた蜷川実花さんはとても才能のある人だと思います。おそらく本人は偉大な演出家であった父親の娘というだけで注目されるのは嫌なことだと思っているでしょう。多くの2世がそうだとは思うのですけれど。
実花さんは違うベクトルでお父さんとは比べられない才能の持ち主だと思えるのです。鮮やかな色彩の写真家としての顔もしかり、この映画を観てもそう感じました。これからも自信をもって活動していただきたいです。
主演の藤原竜也、といえば蜷川実花監督の父親である蜷川幸雄の秘蔵っ子として有名ですが、それゆえなのか実花監督とも相性がぴったりのようでした。
「おれは~ここの~王だっ!」
から始まるボンベロの自己紹介。舞台の発声法が映画のなかで興味深いインパクトを醸し出しています。映画のなかに舞台の演出というマジックをそこかしこに観ることができるのが面白味のひとつになっている。ほかの監督作品では観たことがない世界だな。と映画の可能性を確信できるのです。
「砂糖の一粒までもが俺に従う!」
と言い切ってしまうボンベロさん。元殺し屋のシェフは客の気持ちまで読み取って料理を作る人です。そういう意味ではかなりいい人だ。
彼の作るハンバーガーはかなり美味しそうです。手さばきも鮮やかで、私のためにもハンバーガー作っていただけないだろうかと注文したくなります。
カナコ以外は裏稼業のヤバイ人間しか出てこないのでどいつもこいつも本名は出てきません。なので「ボンベロ? めっちゃ日本人じゃん」というツッコミはしてはいけません。もれなくDinerでこめかみに銃弾受けてご臨終になります。
話は裏稼業のボスの事故死から、跡目問題に発展し、ボスは本当に事故死なの? と発展し、結局のところDiner舞台に派手なドンパチになるわけです。
そのドンパチも派手な舞台演出といわんばかりで、そこまでやったら店が崩壊どころか、なんかもう笑っちゃうくらいの事件です。
と突っ込みたくもなるのですが、それはエンターテイメントなので、派手でいてオシャレでもある演出を存分に楽しみましょう。とはいえ、あまり見入りすぎると映像酔いする可能性もありますので気をつけて下さい(しれっと2度言った)。
カナコは、自分は存在していいんだ。誰かのために生きる自分がいていいんだ。ということに目覚めて大人の人間として成長します。
ただのドンパチ映画ではなく、ちゃんと筋が通っていました。
ただのイケメン揃えた映画ではなく、しっかりとした芯が見えました。
ヤバイ奴らを演じた役者たちのヤバさを見るだけでも、なにか得をした気分になれましたし、藤原竜也は大切なことを2度言ってくれるし、本郷奏多はチャイルドだし、武田真治は筋肉披露だし、窪田正孝は可哀想すぎて泣けてくるし、小栗旬は犬神家のスケキヨです。
ハリウッドアクション映画なみに「死んでる死んでる」と言いたくなるところまでもあるのもいいスパイス。
エンターテイメント。という言葉がよく似合うDinerで、美味しいハンバーガーを召し上がってみてはいかがだろうか。