映画:ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド(ネタバレなし)

文字数 2,670文字

 2019年9月映画「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」を鑑賞させていただきました。

 クエンティン・タランティーノという監督でなかったら、とんだクソ映画になってしまう作品です。

 それはつまり、タランティーノだからこそ、最初から最後まで物語があるようなないような、ヒューマンドラマなのかサスペンスアクションドラマなのか、バイオレンスなのかホラーなのか笑わせにいっているのか、古き良きハリウッドをお見せしたいのか、犬と飼い主の見事な絆を描いた作品なのか、BLすれすれなのか。主軸がはっきりしない150分を退屈させずに見せることはできやしないのです。
 これぞタラちゃんマジック。

 では、あらすじです。
 時は1969年、アメリカは映画の都ハリウッド。ここにそこそこ有名な俳優リック(レオナルド・ディカプリオ)と彼のスタントマン、というか運転手というか付き人になっているクリフ(ブラット・ピット)がおり、仲のいいバディとしてそれぞれの仕事をこなしています。

 しかし、そんな彼らにも悩みはあります。俳優リックは若い頃はシリーズものの主役を張るほどの人気者でしたが、最近はシリーズも終わってしまい、イタリア映画出演を打診されたり、脇役(しかも悪役)に回るようになってしまったり。
 役者としての旬の終わりに苦悩しています。悩み苦しむ姿が母性本能くすぐります。

 一方クリフはスタントマンとしての仕事がなかなか入らず、やっと仕事をもらえたかと思いきや誰もが知っている大スターと口論の末。相手をコテンパンにのしてしまい役を降ろされる始末。しかし、格闘シーンはかっこいい。
 結局、リックの付き人のようなポジションのままになっています。

 物語は仲良しな二人の行動を平行線状に進行させ、時に交わるかたちで進みます。

 ウエスタン映画全盛という当時のハリウッドの日々が淡々と流れていくわけですが、クリフがなんとなく関わったヒッピー集団(モデルは実在したカルト集団)がラストの目が覚めるようなヤバイ展開(モデルになった実在の惨劇がある)を起こしてくれるわけです。
 ヤバイ展開を前にしてリックとクリフはどうなってしまうのか。その事件の顛末を是非とも御覧ください。
 という流れです。

 1969年のハリウッドを眺めていると、不思議と「古き良き」という言葉が浮かんで消えません。
 当時の街並みはもちろん、映画・テレビドラマの撮影現場、音楽、高級住宅街など。特に音楽は映画の効果音も含めかなり温故知新が楽しめました。
 まだ近代化は進んでおらず、土埃や緑が多い。街灯も少ない。だけど映画の街としての活気は今現在とつながっている。癒しすら感じることができます。

 1969年のハリウッドに奇跡のアラフィフである、リック(レオ様)とクリフ(ブラピ)がいるのは相当な萌えです。ありがたいことです。

 タイタニックの頃はアイドル俳優で終わってしまうのかなと思い込んでいたレオ様ですが、ここまで演技派の俳優に成長するとは、失礼ながら思っていなかっただけに、今回役者を演じる役者役は役者として見応えがありました。
 レオナルド・ディカプリオではなく、リック・ダルトンとして撮影シーンに挑む役者の姿は一見の価値があること間違い無し。エンドロールまで楽しめますので、終劇後も席を立たないようお願いしたいです。
 役者レオナルド・ディカプリオを堪能しましょう。

 スタントマン、クリフ(ブラピ)は犬を飼っている設定です。
 この犬が飼い主クリフに忠実でものすごく可愛い。犬好きが見れば、飼い主とわんこの絆に身悶えすること間違いないのです。
 一見ぞんざいに餌を与えているようにも見えますが、よくしつけられ、毛艶も美しい犬は後半の事件で大活躍します。
 犬が大活躍しすぎです。クリフはなんのためにここまでの訓練を愛犬にしていたのでしょう。いつかこんな日が来ることを予想していたのか。というくらい。
 活躍は犬だけではありません。スタントマンをしているくらいなのでクリフの身体能力もかなりのものです。後半の格闘は垂涎もののかっこよさです。まぁ、やりすぎではありますが。
 つまり、ブラッド・ピットがかっこよすぎで身悶えです。たいへんいい体がそいつらをボッコボッコにする様は決してお子様にはお見せできませんが、無条件にバイオレンスダンディーです。

 レオ様&ブラピ。奇跡のアラフィフたち。50代、まだまだいけます。成熟した大人の姿を、老いも若きも鑑賞して、熱いため息をつくといいかと思われます。このふたりはとにかくカッコイイ。タランティーノも目のつけどころがよすぎです。

 その、監督、クエンティン・タランティーノですが、本作は彼の作品だから成り立つ映画です。
 タランティーノ作品これが初見という方には「なんだこれ? 意味わかんないよ」「暴力反対」という感想を持たれる方もいると思いますし、それは仕方がないところもあると思います。
 でも、だって、タランティーノだもの、仕方ないよね。

 タランティーノ作品というものは、それだからこそタランティーノ作品です。
 これで、ファンの期待を裏切っていないのがタランティーノ作品なのです。
 この世界観にハマれるかハマれないかで本作もニヤニヤしながら見られるか、眉間にしわを寄せてしまうか真っ二つに分かれる。それがタランティーノ作品。

 一度でもタランティーノ作品をみたことがあって、面白さを感じたことがあれば、本作がこんな内容になっていても「金返せ!」と怒る前に「タランティーノだもの」という諦観の念で見送ることができるのです。なんというタラちゃんマジックか。

 ラストのぶっ飛んだヤバイシーンは「タランティーノだもの」で済む人なら鑑賞できます。タラちゃんらしさを堪能もできます。ここまでくると怖さを通り越して笑っちゃうかもしれません。
 しかし、初見だったり、バイオレンスが苦手な人はそれ相応の覚悟でご鑑賞ください。ただ不快になるだけかもしれません。

 内容もあるようでないような日常の切り取り。
 レオ様とブラピをとことん鑑賞できるし、このふたりのキャラで薄い本(BL妄想)も作れるんじゃないの? という勢いですが、主人公たち(リックとクリフ)にとっては問題無しで丸く終わりますのでご安心ください。
 いや、ある意味ご安心なのか不明。
 でもいいんです。
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