映画:きみと、波にのれたら(ネタバレなし)

文字数 2,504文字

 2019年6月、長編アニメーション映画「きみと、波にのれたら」を鑑賞させていただきました。

 まずはストーリーから。
 大学入学を機に海の見える街に引っ越してきた主人公ひな子。趣味はサーフィンで結構な腕前です。
 ひな子が住んでいるマンションの火災をきっかけにイケメン消防士の港(みなと)と出会います。
 あれよという間にふたりはラブラブな関係になりますが、港は人助けをして亡くなってしまいます。
 突然のことに失望するひな子でしたが、ふとしたきっかけで思い出の歌を歌うと水の中に港が現れることに気がつきます。
 ふたたびふたりの時間を得ることができたわけですが、このままではいられなくて……。という流れです。

 まず、ひな子がたいへんな(一部の)いまどき女子です。
 実家が金持ちらしく、大学生のひとり暮らしにしてはものすごく好条件のマンションに住居を構えています。家賃に5万円出すのも躊躇してしまう層にはそのセレブさが羨ましい限りです。
 つい最近まで学生服を着ていたとは思えなくて、海洋学を学びたいという女子大生(その設定に意味はあったのか)ということを忘れ、社会人だっけ? と思ってしまうことが多々。
 あなたがだいすきなの。アイシテル。ずーっといっしょだよ。だからたいせつにしてね(ハートマーク)。というオーラを出していました。
(一部の)いまどき女子がアニメの世界に降臨だ!
 ドジでぶきっちょでかわいくて。(一部の)いまどき男子は「しょーがないなぁ。これはおれがついていてやらなきゃダメだろう。アイシテイルヨ」と言いながら寄り添ってあげたくなるのでしょう。
 他人のラブラブな姿を見ても舌打ちしかでないわけですが、そこはひな子の悪友たちが「リア充爆発しろ」と直接言っていたようで、モヤモヤは若干おさまりましたが。

 彼が亡くなってしまってからのくだりも、(一部の)女性シンガーが、さみしい、どうしていなくなったの、なみだがとまらない。と歌いだす勢いで悲しみにひたってます。
 港の妹や港の後輩君もつらいのは同じだろうに、主人公だから世界はひな子を中心に回りまくっています。
 ほんとうにひな子がいまどき女子の代表なのかはわからないところですが、脚本家はこの手の女の子をよく研究していると思います。
 カラオケで(一部の)いまどき恋愛曲を歌うようなイメージを想像していただければ、この映画のよさはつかめるのではないでしょうか。

 きみのことが心配すぎて成仏できなかったんだ。そばにいるから、なにがあってもきみを守るから。
 死んでまでひな子に尽くす港の献身が涙を誘います。
 終盤の見せ場である奇跡的現象は、なにが港をそこまでさせるのか。愛しているだけでは説明できないぞ。とまで思わせることろがありましたが、物語の住人にとってはおおいにアリな愛の奇跡なのでしょう。是非とも感動してあげてほしい。ふたりの愛の絆に涙してあげてほしい。
 それゆえ港の死を認識させるラストは、(一部の)若い女子男子には泣けるものがあると思います。
 港のおかげでひな子は、人の命を救うとはなんぞや、ということを学び、一歩成長します。港の死は無駄ではなかった。ひな子、最終的には悲劇のヒロインから卒業しました。

 さて。ひな子がまわりを見ない性格なので、冷静な悪友や、口の悪い港の妹さんにも注目してしまうわけですが、それでも(一部の)女性シンガーが歌い上げる恋愛物語の住人のようなので、彼女らの物語に激しく同意できないと寄り添うことが難しいかもしれません。
 こうなっては無条件にかわいいスナメリに心を置くのもいいのかもしれない。それはありだ。
 この映画は恋人同士、または友だち同士で見にいくと盛り上がれるのではないでしょうか。

 ヒロインひな子の声を演じているのは女優・タレントとして活躍している川栄李奈です。
 映画公開直前に結婚妊娠を発表。リアルでもラブラブど真ん中。アフレコ中も、人生でいちばん楽しくて嬉しいときだったことでしょう。ひな子と港のラブラブシーンでは、それがあらわれるほど、幸せそうです。おめでとうございます。末長くお幸せにです。
 しかし、このようなお話でそのような層を狙うなら、配給元はどういうプロモーションをかけるべきだったのでしょうか。

 湯浅政明監督作品では「夜は短し歩けよ乙女」を拝見させていただきましたが、独特の絵柄、作風、世界観はアニメーションオタクとしてたいへん楽しませていただきました。
 しかし本編においてはアニメーションオタクにウケる内容と思うことが難しかった。まぁ、それは別にいいとしても、このような感じの恋愛ものならば実写でもいいんじゃないのか。とも思えた。アニメでやる意味はなんだろうと。
 ターゲットはアニオタではありませんよね? と訪ねたくなるが、アニメも技術が発達した今では芸術面での表現力も豊かだし、オタクだけのものではなくなっているのだから、一般大衆にもみてほしい。より多くの方にみてほしいのだと思います。
 湯浅監督の名前を世の中に広げるためにも必要なステップ、という意図があったのかもしれません。
 それならそれなりのプロモーションを全力でかけるべきだろう。若い女優さんやアイドルなどにコメントを求めればかなりの高評価をしてくれる作品だと思う。
 港役がエグザイル一族GENERATIONSの片寄涼太なのだから、エグザイル一族の方々に日替わりで「なにがあっても好きな子を守りたい。きみ波、応援してます(ハートマーク)」というコメントをSNSにプロモーションとして流してみたら、(一部の)甘い恋愛が好きな女性たちに「みたい」と思ってもらえるんじゃなかろうか。
「こんな恋がしたい」「こんな風に愛されたい」「歌がとにかくいい」「泣きました」と素直な感想がSNSに連日アップされれば、カップルや女子観客の動員がかなり見込めるのではないのか。そんな余計なお世話なことを考えてしまう映画でした。

 ターゲット客層の確保も作品の一部なのかなと。  
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