映画:ドラゴンクエスト ユア・ストーリー【後半ネタバレあり】
文字数 3,715文字
【後半ネタバレあり。ここからネタバレの表記あります】
2019年8月、長編3DCGアニメーション映画【ドラゴンクエスト ユア・ストーリー】を鑑賞させていただきました。
まずはストーリーから。
主人公リュカは父親パパスとともに、魔物に連れ去られた母親を助けに行く旅をつづけていた。母親が連れ去られたのは魔王を封印している扉の鍵を開くことのできる天空人の血筋だから。母親を取り戻すには天空のつるぎを手に入れて、それを扱うことができる天空の勇者を見つけなくてはならない。天空の勇者にしかつるぎの鞘を抜くことはできないのだから。
旅の途中、父親パパスが魔物に殺されてしまったり、成長したリュカが最初は自信なさげに旅を続けるものの魔物を退治したり、可愛い女性たちから好かれてどちらかを花嫁に選ばなくてはいけなかったり、子供ができたり、そんな人生を歩みながら自分に自信をつけていき、魔王討伐、母親奪還、勇者探し。全ての目的を果たすことはできるのか? といったところです。
総監督は同時期公開アルキメデスの大戦がヒットした山崎貴。原作・監修にドラクエ生みの親ゲームデザイナー堀井雄二。監督にスタンドバイミードラえもん制作の八木竜一、花房真。音楽もゲームの印象深いすぎやまこういちの名曲を使っています。
とても長い作品を2時間でまとめるのはゲームだけでなく、小説や漫画などでもあることなので、そこはお話としてよくまとめていたと思います。
設定を変えたり、はしょったりしなくてはならないところが発生するのは原作付きの映像化にはつきものなので、それを踏まえてストーリーはわかりやすく、矛盾はない流れになっていたと思います。
主人公のリュカはどことなく頼りなくて優柔不断なところもあるのですが、彼なりのマイストーリーとして頑張っていました。そしてその声をあてた俳優の佐藤健も声優合格でした。ここは褒めるべきではないだろうか。
リュカが選ばなくてはならない花嫁候補のフローラとビアンカ。どちらも魅力的でいい子たちです。いっそのこと主人公置いといてふたりがプリ⚫︎ュアになって魔王倒せばいいのに、と思ったくらいです。ただ、ふたりの声のトーンが似ていたので区別化を図るには声質を考えてキャスティングして欲しかったところもありました。
3DCGですが、映像のクオリティーがさすが白組制作すぎて、鳥山明チックな絵柄ではなかったんだよな、ということを忘れてしまっていました。
透明感のあるスライムは安定の可愛さでした。
さて、【ネタバレしないと語れない】ところがあるので、ここから先はネタバレが生じます。まだ見ていない人、円盤がでるまで待っている人など、オチを知りたくない方はここまでにすることをお勧めします。
その方々にお伝えできることは、私は普通に楽しめたということと、とはいえ、できることならオチとも言えるラスト10分の本当の敵が主人公に言い放つ【一言】は違うセリフにするべきではなかったか。というモヤッと感が残りました。というところでしょうか。
以上、これから鑑賞する方、円盤まで待っている方はここまででどのような作品なのか、察してみてください。
若干、間空けます。
【以下ネタバレ含みます】
違和感を感じたのは花嫁を選ぶとき、最初は迷うことなくフローラだったのに、魔法使いのおばあさんに変な液体飲まされて「あ、やっぱビアンカが好きだわ」と気づくシーンでした。
あれ、どういうこと? ちょっと、誰かこの流れ説明して。あんなにフローラ見つめて真っ赤になってたのに。そりゃ、なんでも言い合える相手がいいのはそうだろうけど、寝返りが早くないか? しかも本当の気持ちに気がつくのはいいことだけど、おばあさんに飲まされた液体のせいで、それこそ魔法にかけられて気持ち変えられたってことはないの? というモヤモヤをラスト10分まで引っ張ってしまったわけですが。
まさかラスト10分の伏線だったとは。ちゃんとした理由があったことはおどろきでした。
ゲーム原作なので実はプレイヤーがいてゲームしてました。というからくりにはたいした驚きはありません。こういう流れもありでしょう。
それより意外だったのは、現実世界が2019年ではなく、遠いか近いかはわかりませんが未来だったこと。未来のアミューズメント施設で進化したゲーム機。だけど「花嫁選びでいつもなやむんだよな」といつの時代になっても同じことを言っちゃっている主人公=プレイヤー。
ドラクエは語りづがれていて、いつの世代になっても同じことで悩んでいる。その受け継がれは嬉しくなる場面でした。
ユアストーリーの主人公=プレイヤーである少年はドラクエが大好きで、何度もこの世界を訪れているようでした。
「今回はぜったいフローラにする!」
という一言がインプットされてしまい、最初はフローラ即決だったのに、フローラが主人公の斜め上行くいい子だったので(?)結局またビアンカを選んでいた。終劇後は微笑ましくなったくらいです。
主人公は勇者ではありませんでした。
プレイヤーである主人公が勇者ではない。金払ってゲームの主人公になっているのだから勇者としてスカッとさせてくれよ! などと主人公の少年が言わないのもすばらしいことだと思います。それどころか、勇者は主人公の息子だったことに、主人公は大いに感動し、喜びをあらわにしています。
主人公の息子が勇者のつるぎの鞘を抜く瞬間は本作いちの胸熱シーンでした。あのシーンだけでももう一度、もう二度見たい。
上映(ゲーム開始)時間2時間で誰にも経験できない人生を送っている主人公。冒険、試練、友情、闘い、恋愛、親子愛、コントローラーを握った主人公=プレイヤーはだれもが自分だけのユアストーリーをつくりあげ、涙し、感動し、ひとつの人生を送るのです。
そんな順調な世界にいきなり出てくる【バグ】という名の本当の敵ですが。
現実世界で起こる凶悪事件を思い出します。
だれもが現実世界でもクエストしています。人生はそのものクエストの連続で、戦いながらも自分なりに自分だけのストーリーを生きています。
凶災はいきなり襲いかかってくる。
しかもそいつは身勝手な理由をつけて平和な世界を壊しに来る。
刃物で刺したり、火を放ったり。訳もわからず、いきなり飛び込んでくるから凶災なのではないか。
このまま魔王を倒してハッピーエンドになるのが当たり前で、気持ち良くマイストーリーを終わらせられればいいんだろう。
なのに、そいつは予告もなくいきなり現れた。
平和に楽しくやっている人たちにイラついて。面白くないから壊してやろう。つまらない思いをさせてやろう。どうだ、ざまあみろ。ガッカリしたろ、絶望したろ、おれにはかなわないだろ。
あのバグにはそういう悪意が読み取れました。だから主人公=プレイヤーに上から目線でこう言っていい気分になろうとします。
「おれを作ったやつからの伝言だ。もっと大人になれ」
えええ? なにわけのわからんこと言うの、このバグ野郎。
それは主人公=プレイヤーは頭真っ白になるでしょ。その台詞はのしつけて丸ごとお返ししますが、よろしいですか?
とても大人のすることではないバグ攻撃が普通にゲーム楽しんでいる人に向かって「大人になれよ」はないんじゃないか。お前が大人になれよ。です。
攻撃者=バグの台詞としては「楽しそうにしやがって」とか「おれのストーリー以外は許さないんだよ」とか、もしくはなにも言わずに攻撃してきてもよかったのでは。
現実の凶災をもたらした容疑者たちも、ただ「殺してやる」としか言わなかったり、無言だったりで今ある世界を壊しに来ますから。
さて、これに対し、ユアストーリーの主人公リュカを操る少年はこう言い返します。
「そんな理由で?」
そこからは大激怒です。魔王は許せても、お前だけは許せない。という勢いで立ち向かい、それに応えるようにホワイトナイトであったスライム=ワクチンとともに身勝手な理由で平和な世界を破壊しようとしたバグを倒します。
ふざけたこと抜かしてんじゃねえぞ、この野郎。世界はお前中心に回っているんじゃないんだよ。この世界に文句があるなら表に出てきて正々堂々と自己主張しろや!
怒りの一撃がラスボスを撃つのです。
いいぞ! もっとやれ! よくやった少年! ありがとう少年!
かくして現実世界とゲーム世界、両方の平和は保たれた。
少年、がんばったね。バグはファンタジーの腰を折るハプニングであったけど、結果オーライだったよ。
オチとも言えるバグの出現というラスト10分は難しいシナリオだった。とはいえそれはユアストーリーというサブタイトルに対して重要なオチだったと理解する。
制作側の調理法をどのように受け取るかで、鑑賞後、思うことは様々になろう。
それもそれぞれのユアストーリーだ。
2019年8月、長編3DCGアニメーション映画【ドラゴンクエスト ユア・ストーリー】を鑑賞させていただきました。
まずはストーリーから。
主人公リュカは父親パパスとともに、魔物に連れ去られた母親を助けに行く旅をつづけていた。母親が連れ去られたのは魔王を封印している扉の鍵を開くことのできる天空人の血筋だから。母親を取り戻すには天空のつるぎを手に入れて、それを扱うことができる天空の勇者を見つけなくてはならない。天空の勇者にしかつるぎの鞘を抜くことはできないのだから。
旅の途中、父親パパスが魔物に殺されてしまったり、成長したリュカが最初は自信なさげに旅を続けるものの魔物を退治したり、可愛い女性たちから好かれてどちらかを花嫁に選ばなくてはいけなかったり、子供ができたり、そんな人生を歩みながら自分に自信をつけていき、魔王討伐、母親奪還、勇者探し。全ての目的を果たすことはできるのか? といったところです。
総監督は同時期公開アルキメデスの大戦がヒットした山崎貴。原作・監修にドラクエ生みの親ゲームデザイナー堀井雄二。監督にスタンドバイミードラえもん制作の八木竜一、花房真。音楽もゲームの印象深いすぎやまこういちの名曲を使っています。
とても長い作品を2時間でまとめるのはゲームだけでなく、小説や漫画などでもあることなので、そこはお話としてよくまとめていたと思います。
設定を変えたり、はしょったりしなくてはならないところが発生するのは原作付きの映像化にはつきものなので、それを踏まえてストーリーはわかりやすく、矛盾はない流れになっていたと思います。
主人公のリュカはどことなく頼りなくて優柔不断なところもあるのですが、彼なりのマイストーリーとして頑張っていました。そしてその声をあてた俳優の佐藤健も声優合格でした。ここは褒めるべきではないだろうか。
リュカが選ばなくてはならない花嫁候補のフローラとビアンカ。どちらも魅力的でいい子たちです。いっそのこと主人公置いといてふたりがプリ⚫︎ュアになって魔王倒せばいいのに、と思ったくらいです。ただ、ふたりの声のトーンが似ていたので区別化を図るには声質を考えてキャスティングして欲しかったところもありました。
3DCGですが、映像のクオリティーがさすが白組制作すぎて、鳥山明チックな絵柄ではなかったんだよな、ということを忘れてしまっていました。
透明感のあるスライムは安定の可愛さでした。
さて、【ネタバレしないと語れない】ところがあるので、ここから先はネタバレが生じます。まだ見ていない人、円盤がでるまで待っている人など、オチを知りたくない方はここまでにすることをお勧めします。
その方々にお伝えできることは、私は普通に楽しめたということと、とはいえ、できることならオチとも言えるラスト10分の本当の敵が主人公に言い放つ【一言】は違うセリフにするべきではなかったか。というモヤッと感が残りました。というところでしょうか。
以上、これから鑑賞する方、円盤まで待っている方はここまででどのような作品なのか、察してみてください。
若干、間空けます。
【以下ネタバレ含みます】
違和感を感じたのは花嫁を選ぶとき、最初は迷うことなくフローラだったのに、魔法使いのおばあさんに変な液体飲まされて「あ、やっぱビアンカが好きだわ」と気づくシーンでした。
あれ、どういうこと? ちょっと、誰かこの流れ説明して。あんなにフローラ見つめて真っ赤になってたのに。そりゃ、なんでも言い合える相手がいいのはそうだろうけど、寝返りが早くないか? しかも本当の気持ちに気がつくのはいいことだけど、おばあさんに飲まされた液体のせいで、それこそ魔法にかけられて気持ち変えられたってことはないの? というモヤモヤをラスト10分まで引っ張ってしまったわけですが。
まさかラスト10分の伏線だったとは。ちゃんとした理由があったことはおどろきでした。
ゲーム原作なので実はプレイヤーがいてゲームしてました。というからくりにはたいした驚きはありません。こういう流れもありでしょう。
それより意外だったのは、現実世界が2019年ではなく、遠いか近いかはわかりませんが未来だったこと。未来のアミューズメント施設で進化したゲーム機。だけど「花嫁選びでいつもなやむんだよな」といつの時代になっても同じことを言っちゃっている主人公=プレイヤー。
ドラクエは語りづがれていて、いつの世代になっても同じことで悩んでいる。その受け継がれは嬉しくなる場面でした。
ユアストーリーの主人公=プレイヤーである少年はドラクエが大好きで、何度もこの世界を訪れているようでした。
「今回はぜったいフローラにする!」
という一言がインプットされてしまい、最初はフローラ即決だったのに、フローラが主人公の斜め上行くいい子だったので(?)結局またビアンカを選んでいた。終劇後は微笑ましくなったくらいです。
主人公は勇者ではありませんでした。
プレイヤーである主人公が勇者ではない。金払ってゲームの主人公になっているのだから勇者としてスカッとさせてくれよ! などと主人公の少年が言わないのもすばらしいことだと思います。それどころか、勇者は主人公の息子だったことに、主人公は大いに感動し、喜びをあらわにしています。
主人公の息子が勇者のつるぎの鞘を抜く瞬間は本作いちの胸熱シーンでした。あのシーンだけでももう一度、もう二度見たい。
上映(ゲーム開始)時間2時間で誰にも経験できない人生を送っている主人公。冒険、試練、友情、闘い、恋愛、親子愛、コントローラーを握った主人公=プレイヤーはだれもが自分だけのユアストーリーをつくりあげ、涙し、感動し、ひとつの人生を送るのです。
そんな順調な世界にいきなり出てくる【バグ】という名の本当の敵ですが。
現実世界で起こる凶悪事件を思い出します。
だれもが現実世界でもクエストしています。人生はそのものクエストの連続で、戦いながらも自分なりに自分だけのストーリーを生きています。
凶災はいきなり襲いかかってくる。
しかもそいつは身勝手な理由をつけて平和な世界を壊しに来る。
刃物で刺したり、火を放ったり。訳もわからず、いきなり飛び込んでくるから凶災なのではないか。
このまま魔王を倒してハッピーエンドになるのが当たり前で、気持ち良くマイストーリーを終わらせられればいいんだろう。
なのに、そいつは予告もなくいきなり現れた。
平和に楽しくやっている人たちにイラついて。面白くないから壊してやろう。つまらない思いをさせてやろう。どうだ、ざまあみろ。ガッカリしたろ、絶望したろ、おれにはかなわないだろ。
あのバグにはそういう悪意が読み取れました。だから主人公=プレイヤーに上から目線でこう言っていい気分になろうとします。
「おれを作ったやつからの伝言だ。もっと大人になれ」
えええ? なにわけのわからんこと言うの、このバグ野郎。
それは主人公=プレイヤーは頭真っ白になるでしょ。その台詞はのしつけて丸ごとお返ししますが、よろしいですか?
とても大人のすることではないバグ攻撃が普通にゲーム楽しんでいる人に向かって「大人になれよ」はないんじゃないか。お前が大人になれよ。です。
攻撃者=バグの台詞としては「楽しそうにしやがって」とか「おれのストーリー以外は許さないんだよ」とか、もしくはなにも言わずに攻撃してきてもよかったのでは。
現実の凶災をもたらした容疑者たちも、ただ「殺してやる」としか言わなかったり、無言だったりで今ある世界を壊しに来ますから。
さて、これに対し、ユアストーリーの主人公リュカを操る少年はこう言い返します。
「そんな理由で?」
そこからは大激怒です。魔王は許せても、お前だけは許せない。という勢いで立ち向かい、それに応えるようにホワイトナイトであったスライム=ワクチンとともに身勝手な理由で平和な世界を破壊しようとしたバグを倒します。
ふざけたこと抜かしてんじゃねえぞ、この野郎。世界はお前中心に回っているんじゃないんだよ。この世界に文句があるなら表に出てきて正々堂々と自己主張しろや!
怒りの一撃がラスボスを撃つのです。
いいぞ! もっとやれ! よくやった少年! ありがとう少年!
かくして現実世界とゲーム世界、両方の平和は保たれた。
少年、がんばったね。バグはファンタジーの腰を折るハプニングであったけど、結果オーライだったよ。
オチとも言えるバグの出現というラスト10分は難しいシナリオだった。とはいえそれはユアストーリーというサブタイトルに対して重要なオチだったと理解する。
制作側の調理法をどのように受け取るかで、鑑賞後、思うことは様々になろう。
それもそれぞれのユアストーリーだ。