第79回ちばてつや賞を語ってみる(漫画新人賞)

文字数 3,434文字

第79回ちばてつや賞を語ってみる(漫画 新人賞)
(創作日記 にあるタイトルと同じものです)
※2018・9月だか10月くらいに書きました。


 なにかを志す者にとって、大きな賞ゲットは階段に片足、両足乗っけるほどのスタートライン。
 この度、第79回ちばてつや賞の入選作がヤングマガジンで発表されたというので、入選作を「コミックDAYS」で読ませていただいた。

 全作読んで思ったことは……。

 素人(いち読者)にはどういった基準で順位がつくのかさっぱりわからない。
 どれも良作。素人には順位なんか、つけられない。

 それでも編集者の眼光は、漫画業界のはるか先を見通し、激しい討論のなかで光の原石を見つけ出すのだろう。
(アミダとかダーツでないことを祈るばかりだ)

 なので、小説ではそこそこ頑張っていた経験はあるものの、絵の「え」の字も描けない読むだけの漫画素人が批評とか言えやしないので、ただ、つぶやいてみる。偉そうにみえてしまいそうな感じでつぶやいてみる。

 ネタバレあるので、まだ未読の人は「コミックDAYS 新人作家一覧」で読んでからにしたほうがいいと思いますが、読む気のない方は、私のつぶやきで読んでみようという気になってくれたら未来の漫画家さんの卵たちが喜ぶと思います。たぶん。


 敬称略です。

※大賞
「月見里(やまなし)」
 木村航

 出だしから「あ、弟だよね、彼がそうだよね」ってわかってしまう。そこがサプライズにはならなくなったわけだから、なにを武器に話もっていくんだろう。って真っ先に思ったけれど。そこは頂点に君臨した作品。弟との出会いが肝だったら大賞とってないよね。最後のコマまで緊張感ありありの孤独なロンリーソルジャーでした。ただ、表情は作りすぎな感。そこまで顔の筋肉使わなくても表現できやしないか?

※優秀新人賞(以下3作)
「永遠に君を愛している」
 末太シノ

 後半から急に背景が白くなってしまったのは何故だ? もったいないなぁ。せっかく主人公イケメンなのに。イケメンは着物でもデニムでもイケメン(好物)。彼は自分の正体わかってて生き続けているのかな。子供時代が彼にはあったのかな? ただのご長寿イケメンではキャラとして勿体ない。せつないけど希望もある恋バナでした。

「鈴木の嘘つき」
 佐藤賢一

 佐藤が鈴木を描いて田中を名乗る出だしとか(笑)。父と子の溝という話はよく見かけるテーマだが、そこをどう差別化するかが肝だね。そこで「嘘」をうまいこと入れ込んでみたわけだ。嘘はつくけど瞬時でバレるのがいい。お父さんの嘘は切ない。父子の会話のテンポがいい。それはさておきなんだが、主人公はどうして東大辞めたんだ?

「STONE COLD」
 マナカミユイ

 最初の感染者をウエディングドレスの女性にしたのが象徴的。テーマ一貫してるし、男も女もキャラができている。やっちゃってからの愛もありということで。話は昭和の洋画みたいで絵柄がCGアニメっぽい、つまりジャ※リパーク(違うだろ)。そこが今の若い人には新鮮に映るかもしれない。絵が、けたくま並みにやわらかくなればいいかと思う。

※準優秀新人賞(以下2作)
「校庭の宇宙人」
 コンドウ十画

 髪型が気になり、最後まで先生は異星人だとばかり……。主人公の髪型もハチワレ。ぬこっぽくてカワイイ、個性的。亡くなってしまった友達、切ない。でもかわいいなぁこの子。宇宙人イケメン。イケメンにする必要あったのかは謎。宇宙人より先生の方が宇宙人ぽい。ロボットに乗り込んじゃうのは唐突な気もしたけど、最後のコマが希望に向かっている。

「小人の住処」
 中原ろく

 父と子の溝という話はよく見かけるテーマだが、そこをどう調理するかが肝。そこで真面目なメガネイケメンだ。イケメンは正義だから正義を通した。ええやん、イケメン。きっとわかってくれる仲間に会えるよ。ところで最後メガネ捨てるのか? そのメガネは伊達だったのか? あと、編集さんは次回からヤンマガ用の原稿用紙をさしあげてあげてください。

※佳作(以下4作)
「あなたがいたから」
 古倉のぶ雪

 他人が化け物に見える話って最近よく見るので、どう差別化するのかが肝だ。絵柄が雰囲気あるからカバーできているのかな。化け物に見えることになった明確な引き金を示してくれたほうが感情移入できるのだが。化け物のデザインは見ていて飽きない。最後のコマが卒業式の卒業生代表みたいでちょっと笑えた。 

「君がロックを好きな理由」
 工藤どく

 主人公の苦悩がよく伝わった。型破りな他人に触発されて殻を破る話もよく見るので、どう差別化するかが肝だ。ということで、型破りキャラがキモイんですけど……それが肝なんだよーねーっ。わかるんだけど。ただのキモウザではないみたいだけど、イヤーッ! って絶叫したくなる。いろんな意味でキモでした(笑)。

「さよならは君の中で」
 古町

 平成ミュージシャンのPVを見ているようだった。右を殴られたら左を殴れという言葉がありますが(ない)。必殺、見開きパーンチ! からの~、見開きパーンチ! の運びが粋。2度目のパンチは改良の余地ありと思ったけど。あと、そんなに頭よかったなら奨学生制度で大学いくとか考えになかったのか? 先生も薦めただろ。と突っ込む私がいた。

「竜の海」
 時村壮史

 見開きがうまい。海、描き込んでいる気合が伝わる。主人公の目の表情に変化があるといいんだけど。表情が同じなわけではないんだけど目がどのコマも同じだから説得力に欠ける。髭の位置も気になった。老け顔(大人の顔)苦手なのかな。メインで描きたかったのは竜なのか鯨なのかオトンなのか、それが問題だ。

※期待賞(以下5作)
「喝!」
 池田潤平

 才能じゃなくて好きだからやっていた。という言葉は素敵。ヒロインがかわいい。ヒロインの空手の型がカッコイイ。頑張るヒロインに触発される話もよく見(以下略)ヒロインが妙に素直すぎるけど、かわいいのだから、無理に巨乳にすることなかったんじゃないかな。でも、そうしないとヤンマガ読者は喜ばないのも現実なんだよね。

「騎士とマンボウと藍色の世界」
 伊藤佑介

 主人公が大人とは思わず読み進めてしまった。学生にしては??と思い、はたと気づいた時には、主人公がヒロインのおっぱいつかんでた。でもそこからはギャグ展開も手伝ってグイグイ読めました。女の子のお色気はいちばんでした。ただ賢者様、この人は登場する意味があったのか。生かしきれていないキャラだった。

「セミと一カ月」
 川澄圭輔

 私が主人公だったらあまりの衝撃に足滑らせて落っこちて死んでる。出だしからインパクト。いい話なんですけど、おっさんが壁にとまっているところが虫のそれで、リアリティーありすぎ。そこがオリジナリティーでよい。おっさんが普通に飛んでいるのも仕組みが気になる、仕組みなんてないんだろうけど。最後のセリフもいい。扉に改良の余地あり。

「強い女性(ひと)」
 榎ハマオ

 間違った性で生まれた話もよく見るテーマで、それをどう差別化して調理するかが肝だと思うのですが、まだまだ見せ方はあるんだと思わせてくれた。魔法の表現が女子力高い。心が女だけど主人公イケメン。なので正義。あと、タイトルがいちばんよかった。この作品のために用意されたタイトルだった。

「西口賢二(47)」
 井上あかね

 父と子の溝という話はよく見かけるテーマだが、そこをどう調理するかが肝なのです。人生に窮屈を感じるおじさんの心情が伝わります。ぬいぐるみがカワイイ。逆に娘の心情が伝わりにくかったので、急にお父さんを見直した感がぬぐえない。ぬいぐるみ会と家族にバレるところはサプライズ感が欲しかった。思った通りだったのが勿体ない。


~締めの言葉~

 改めて、みなさん受賞おめでとうございます。
 いつの時代もどんな仕事でもルーキーというのはキラキラしてますね。色々劣化した私には羨ましいの一言です。

「タイトルと見開きは大切にしようぜ!」

 さてさて、このなかから何人のスターがうまれるのか。
 
 行く末楽しみですね!
 というプレッシャーで締める。

            (終わる)
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