第12話 境界を作る

文字数 1,186文字

 いよいよ駅を固定する日がやってきた。まずは盲腸線にホームを並べてみる。やはりここでも、車両をレールに滑らせながら。ホームと接触させず、しかし離れすぎてあり得ない、とはならない間隔。ここだっ、と決断し、ペンでボードに印をつけた。続いてプラモ用の接着剤を駅舎の底面に塗る。最後は慎重に、ボートに置く。自らの手で、弱めの力を極力均等にかける。ずらしてはいけない。数分待って手を離す。接着剤がしっかり乾いて固定されるまで、駅周りの作業はお預け。気持ちははやるが、レイアウトボードの反対側に注意を向ける。

 駅の向こう側にあたるストレートレールの周りには、牧草風のカラーパウダーが撒いてある。ただ、そこだけが島のように緑色で、周りは樹脂ボードのベージュ色だ。ここを攻める。人の住む空間と隔てるための丘を、二センチくらいの厚さの発泡スチロールで作る。もう少し小さい発泡スチロールその上に積み重ねる。なだらかな斜面を作るには、まずカッターで切り割いていくのが良いのだろうが、せっかくの牧草地帯に雪を降らせるつもりはない。そこで、ユーチューブで学んだ技を使ってみた。ティッシュペーパーに希釈した木工用ボンドを湿らせ、発泡スチロールの段差を埋めていく。ゴツゴツした感じが残ってしまったが、紙粘土だけで成形するより自然な仕上がりに思えた。紙粘土は粘着性があるものの乾燥するとボードや発泡スチロールからぼろっと剥がれることがある。が、しっかりボンドを吸収したティッシュペーパーは結果的に剝がれにくかった。ここも早速着色したり、木を植えたりしたくなるが、我慢である。

 次の休みは、駅周辺の作り込みだ。排水溝や信号機を並べ、駅のそばに遮断機と警報機を設置した。やはり駅の近くには踏切だ。遮断機は、永遠に降りた状態でいてもらおう。主役は鉄道なのだ。そして画用紙の舗装板をレールに貼りつける。小物は接着剤の固定をあまり待たずに済むので、その日のうちにバラスト撒きに入る。この部分は牧草地帯と違って人が生活する空間であり、安全のためにも鉄道区域とその他の区域が明確に分かれている必要がある。つまり、バラストの幅をきっちり揃えて、柵などで線路と外界とを区別したいのだ。そのためにペンで直線を引き、その枠からバラストがはみ出さないように気を付ける。柵の土台もバラストに一部かかるように、境界線のややレール寄りに木工用ボンドを直接引いて、柵を並べる。少し盛り上がってしまうが、意外に見栄えは悪くない。そしてカラーパウダーの時と同様、希釈した木工用ボンドをペンで引いた直線に沿って筆で塗り、バラストを付着させ直線的な境界を作った。その上にバラストを盛り、希釈ボンドを垂らす。水玉ができないようボンドの希釈濃度にも気を遣う。まあ、数値化していない目分量ではあるが、このエリアでは水玉被害をゼロに抑えることができた。
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