第15話 まちづくりのプラン

文字数 1,199文字

 大晦日は家族と過ごし、年始の勤務に備えて元日の夜に一人、自宅に戻った。そしてレイアウトに向かいあう。どこに何を、どう作っていこうかと考えながら芋焼酎をお湯割りにしてチビチビと飲む。

 まずは駅から見て左の向こう側にある牧草地帯。牧場の牛舎や給水塔が、出番を待っている。並べてイメージするだけなら、多少酔っていてもいいだろう。並べながら、これらの現実性を検討する。牛舎の周囲には何があるものなのだろう? ノートパソコンを立ち上げ、写真を検索する。まあ、小規模な牧場なら、これで大丈夫か。人の動きを考えると、事務所のような小屋がなくてはいけないな。これを買い物リストに加える。
 そして牧場の右に丘を作り、そのふもとに藁葺屋根の民家を置こうと決めた。牧場の経営者であり、地主。この民家の周りには田んぼや畑を作ろう。そして牧場は、乗馬体験や牛の乳しぼりができるレジャー施設として運営しよう。そうなると牧場の正面にロータリー的な広場をつくり、駐車場兼バス操車場にしよう。これで牧場セットに付属していた柵やゲートもしっかり利用できる。さらに農業をやるなら絶対に水をどこかから引いてくる必要がある。駅の向こう正面にあたる右側のカーブ、これは地主の家の更に右にもなるのだが、ここに水路を引く。これは卵形エンドレスの内側。外側に森と川を作ることにしよう。であれば、逆の左側のカーブは、牧草地帯を広げておきたい。ここに鉄道が通るのだが、あえて柵を設けない。モンゴル的イメージで、日本の風景としては現実的ではない。ちょっとだけファンタジーを入れておくのだ。
 また地主の農地から駅に向かってくるスペースにはアパートなどの建物を配置しよう。これが牧場の従業員が住むところ。駅の周りに戸建てや商店があってもいいだろう。そして牧場前ロータリーから踏切を経て、駅側に至る舗装道路を考える。正面レールに並走する道路を作って、駅前と繋ごう。駅の左側から牧草地帯に向かうカーブのところは、まだイメージが湧かない。ここはレールに通電するためのコネクター接続部を想定している。どのように違和感なくそれを組み込めるか。慎重な判断が必要な部位である。なので、これはそっとしておくことにした。

 数日後、とうとう通常勤務になる前日だ。模型店Pに出向く。車両は年二回しか買わないが、ストラクチャーなどは別物である。事務所小屋、藁葺屋根の民家、ビニールハウス、追加の樹木や花、アパートと戸建て住宅を一棟ずつ。更に人形も必要そうなものを買っていく。別物とは言え、こうした買い物は月に一回だけにしようと自制するのだが、今月はもうそれを使ってしまったことになる。ちょっと寂しいが、残りの日々は制作に勤しめるということでもある。この日はしかし、年末年始最終夜。テレビを観ながらの深酒をしてしまった。この世界の破壊神になってはいけない。楽しみは取っておくものだ。
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