第14話 車両が増える

文字数 1,195文字

 子どもというのは、熱しやすく冷めやすい。二編成を何周かさせると別のことをやり出す。娘も入れ、三人で近所の公園へ。彼らは引っ越し後もこの公園が好きらしい。つり橋のようなところを渡れるようになっている娘、滑り台を一気に逆走する息子。身体能力の成長も見え微笑ましいし、頼もしい。しかし、僕の頭の中ではもう一つ、別の回路が動いていた。そう、何を買おうかな――。

 むやみに気に入った車両を買い揃えるのは、能がない。あのレイアウトに似合うものが必要だ。そちらから考えても、気に入っている訳でもない車両はさすがに候補にはならない。僕の理想とする風景がそこに広がるはずで、走る列車も好みに合うはず。その中での吟味・妄想なので、かえって迷いが深い。
 緑ベースの景色である。山間部や高原のイメージ。プラットホームは短い。架線柱があり、電化はされている。という条件で厳選した、いつか買うぞリスト。キハ四〇。これは真っ赤なボディの気動車。前後に運転台のある一両もの。旧型国電の南武支線クモハ一一、もしくは富山港線で活躍した七二、七三形。これらは二両編成。最近はこんなマニアックな車両を大手のTやKが作ってくれている。数量限定だったりするが、ネットでも入手でき、心強い。一方で子どもウケも大事。北陸新幹線E七については、その美しい姿にベタ溺れ(僕が)であり、このレイアウトとは関係なく、欲しい。いつもお世話になっている鉄道模型専門店Pのレイアウトで走らせるための一編成にできるだろう。
 そして子どもへの教育上の配慮から、車両はボーナスの時だけ買うことに決めた。というのは、もうすぐ冬のボーナス時期だったから。が、我ながらよい足枷(あしかせ)だ。実は我が家、クリスマスプレゼントがない。息子が幼稚園のとき、僕がいい子じゃないからサンタが来なかった、と半泣きした時は決意が鈍りそうになったが、クリスマスに他力本願で享楽を得る、という発想はいただけない。現実的に、ボーナスをいただいたから、一緒に頑張った家族にもご褒美、が良い。年末年始に何も買ってあげない鬼親ではない。

 鉄道話にふさわしくない脱線をしたが、家族揃ってPに出向き、自分の(いた)わり品を購入する。キハ四〇と店頭で対面し、これを連れて帰る。そしてE七の基本セット。これは十二両編成のうちわずか三両分のセットで、両端と三号車とで構成されている。これをPのレイアウトで運転してからの帰宅となった。二〇分四〇〇円、だったかな。このE七、自己史上初の新幹線車両なのだが、連結器(カプラー)がアーノルドカプラーではなく「フック・U字型通電カプラー」を採用していた。アーノルドよりも車両同士の間隔が接近しリアリティーが増す。連結時はそうでもないのだが、取り外しに少々コツが要る。フック側車両を引っ張る際に、どうしても車両のボディをベタベタ触ってしまう。子どもには、いや僕にも結構難しい。
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