第16話 作業は続くよ、どこまでも

文字数 1,198文字

 牧場右の丘とは、以前整形した発泡スチロールとティッシュの隆起のこと。ここを着色して乾燥待ち。また牧場をレイアウトボード左辺いっぱいまで広げるつもりだが、ここにも丘を作り乾燥待ち。これだけで数時間経過。そして数週間が開く。次は右の丘に木々を植える。丘の下には地主宅を置くので、この丘もその人の土地。木々の中に市販の桜を混ぜ、花見ができそうな空地も作っておく。そうなると、藁葺屋根の母屋からも、牧場側からもその空き地にたどり着く小道があるはずで、水草製のライケン、スポンジ製のフォーリッジを組み合わせ、それっぽく演出する。そして乾燥待ちのため牧場左へ。左に広げた牧草地帯にカラーパウダーを撒き、草木を配置する。そして放し飼いの馬。馬はプラスチック製で、信号などと同様に木工用ボンドでしっかり立たせる。しつこいが、ここだけはモンゴルの草原に一本走る線路をイメージ。線路沿いのバラスト脇に黄色い花を並べていく。あるところはまばらに、あるところは集中させる。そもそもは考えていなかったが、桜と同じ季節に咲くので、菜の花という設定にした。宮崎の西都原でみた、桜と菜の花との競演を思い出し、しばし手を休める。
 次の制作日には、地主宅を設置した。家屋は平坦なプラ板に載っていて、これを外して家屋を置く方が質感があって良いのだが、そのプラ板には井戸が形作られていた。これも使いたいので、迷った上でプラ板のままボードに接着した。プラ板はアクリル絵の具で着色し、ライケンで草を表現する。菜の花もついでに植えておく。また、プラ板の端は当然だが正確な直線を成している。これに沿って水路を引くような作りにしようと思った。そうするとその向こうに田畑があるのが当たり前になる。もう、楽しすぎるぜ♡


 実はバラスト撒きが完成した頃から時々、アメリカ発ソーシャルネットワークFで作業過程を公開していた。殺風景なのだが、結構な数の友人たちが「いいね」をくれていた。公開範囲は基本的に実際の知り合いに限っており、僕の趣味、というより憧れを知っていた人もそれなりにいた。また男子諸君なら、一度くらい鉄道模型やプラモデルのジオラマに憧れたことがあるはず。彼らが対象の発信であるつもりだった。ところが想定外に、孫のいる上司世代の方や、同世代女性からの反響も大きかった。お母さんになった彼女たち、息子さんが鉄道好きなようだ。男子たるもの、乗り物好きは当然の通過儀礼。通過していないおじさんにできることは、みんなに見せてあげること。自分の子ども以外にも喜んでもらえるとは、と嬉しくなった。
 この頃、ようやく風景らしくなり調子に乗ってアップしていたところ、学生時代の先輩女性から、列車を走らせて動画をアップせよ、と厳命が下る。いまだガラケーだったので、写真が限界。デジカメで撮って、パソコンからアップ。結構大変だったんだぞ、とはやはり書けなかった。
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