50、フィリップ4世(1)

文字数 1,084文字

「ジャンヌ、あなたはフランス王フィリップ4世についてどんなことを知っているのかしら?」
「フィリップ4世ですか?フィリップ4世は『端麗王』と呼ばれ、とても美しく整った顔の王様でした。王妃がナバラ女王のフアナ1世だったので、ナバラ国王とシャンパーニュ伯領も継承しました。聖職者ではなく世俗の法曹家を官僚に採用するなどして官僚制度の強化に努め、中央集権化を進めました。経済的に豊かだったフランドルに関心を持ちました。フランドルは毛織物生産で栄えましたが、原料の羊毛をイングランドから輸入していたためイングランド王との関係が深く、フランストフランドル伯の間で何度も戦争が起きました。戦争で必要な戦費を調達するために、フィリップ4世はフランスで初めて全国的課税を実施し、税はキリスト教会にも課せられました」
「あなたは優秀ね。歴史についてここまで詳しく知っている女性は滅多にいないわ」
「弟のピエールが本が大好きで、小さな頃から本を読んであげていました。子供用の本はすぐに飽きてしまい、歴史や政治、哲学などの本を読んでくれとせがまれたので、私もいろいろな本を読みました」
「ピエール枢機卿は教養の深さと信仰心の篤さで有名でした。でも若くして亡くなり・・・」
「はい、私は弟は病死ではなく、暗殺されたのではないかと疑っています。だからイザボー王妃様の侍女になって宮廷に入りました」
「王宮の図書室には素晴らしい本がそろっているわ。私がパーティーや社交にあんまり関心を持たずに図書室にばかり籠っていると夫のアンジュー公は不満に思っていますけど・・・」

 アンジュー公妃、ヨランド様が小さな声で笑った。今までお顔を近くで拝見することはなかったが、イザボー王妃様のような華やかな美しさはなくても、気品のある美しい方である。

「フィリップ4世はフランスの社会と歴史を大きく変えているのだけど、彼が『端麗王』と呼ばれ整った美しい顔をしていたのはアラゴンの血が入っているからよ」
「え、そうなのですか?」
「フィリップ4世の父はフランス王フィリップ3世で母はイザベル・ダラゴン、アラゴン王ハイメ1世の娘よ」
「知らなかったです」
「知らなくて当然よ。王の名前や家系図は歴史に詳しい人ならみんな知っているけど、王妃の名前や出身国は誰も気にしていない。でも王妃の家系図や出身国との関係が歴史の流れを大きく変えているの。あなたは主に本から歴史の知識を得ているようだけど、それに王妃の家系図から見えてくる知識を加えればいろいろなことがわかってくる。それを教えてあげるわ」

 アンジュー公妃、ヨランド・ダラゴン様の話は続いた。

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