71、教会大分裂(2)

文字数 1,006文字

「1394年、クレメンス7世が亡くなられた後、アヴィニョンで行われたコンクラーヴェで教皇に選出されたのはアラゴンのルナ家出身のベネディクトゥス13世だった。私の叔父でアラゴンの王位を継いだマルティン1世の王妃もまたルナ家出身だった」
「まあ、そうだったのですか」
「クレメンス7世がまだ存命の時、ベネディクトゥス13世は教皇使節に任命され、教皇の代理としてアラゴン・カスティーリャを味方に付け、ビセンテ・フェレールを補佐にして支持者集めをしていたの」
「ビセンテ・フェレールについては弟のピエールも話をしていました。ものすごく演説がうまくて民衆から熱狂的な支持を得ていたと」
「教皇に選出されたベネディクトゥス13世はローマ側の教皇との話し合いを試みていたけど、失敗に終わったわ。それだけでなくアヴィニョンの教皇を支持していたシャルル6世陛下からも裏切られ、1398年にはフランス軍にアヴィニョンを占領されたの」
「1398年ならば、陛下がご病気になられ、発作が始まった後ですよね」
「そうなの。陛下のご病気さえなければ、アヴィニョンの教皇ベネディクトゥス13世を裏切るなんてことはなかったはずよ。陛下がご病気であることをいいことに、操っていた者がいたに違いないわ」
「もしピエールがもっと長生きしていたなら、こうした争いに巻き込まれていたわけですね」
「ベネディクトゥス13世は1403年、シャルル王子が生まれた年にアヴィニョンから脱出せざるを得なくなり、今は叔父のマルティン1世にペルピニャンを避難場所として提供されてひっそりと暮らしているわ」
「そうだったのですか・・・」
「もしも・・・もしも陛下が亡くなられた後、次のフランス王の支持が得られれば、アラゴン出身のベネディクトゥス13世は教皇として再び支持を得られるわ・・・そのためには王家の血を引く者が高位聖職者となり、次の王を説得してもらう必要がある。今王家に残っていて、聖職者になる可能性があるのは、オルレアン公ルイ様の庶子ジャンとシャルル王子・・・」
「ヨランド様!」
「いえ、シャルル王子を聖職者にするわけにはいかないわ。でも幼い頃修道院でジャンと一緒に育てば、2人はかけがえのない大親友となり、高位聖職者となったジャンが次の王に意見してくれる。幼い王子が修道院に預けられて教育を受けるのはよくあることよ。そうよ、それがいいわ」

 ヨランド様の目が輝き、口調は強くなった。
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