19、オルレアン公ルイ(1)

文字数 1,011文字

 「燃える人の舞踏会」の事件があった後、王妃様は義理の弟になるオルレアン公のルイ様に対して疑いを持つようになっていた。無理もない。ルイ様の不注意で4人の貴族が亡くなり、陛下自身命を落としたかもしれなかったのである。そして実際、「燃える人の舞踏会」の後、陛下のご病気は悪くなられた。だが、ご病気がひどくなられた陛下が、王妃様の部屋に近寄らなくなったというわけでもない。王妃様には事件の後もルイ(1397年)、ジャン(1398年)、カトリーヌ(1401年)、シャルル(1403年)と4人の子が生まれている。イザボー王妃は後に色々な方との不倫が有名になってしまったが、4人の子すべてが王の子でないとは考えにくい。私は王妃様にお仕えするようになってから、陛下が王妃様の部屋に来た日は必ず日付を書くようにしていて、3人に関しては間違いなくお生まれになる10か月前に陛下とお会いになっている。でも末のシャルル王子が生まれる10か月前、王妃様がお会いになったのは陛下ではなく、義理の弟になるオルレアン公ルイ様であった。

「オルレアン公のルイ様はどのような方でしょうか?」
「義弟のルイが生まれたのは1372年、陛下より4歳年下よ。陛下が叔父や伯父に政治を任せていた状況を変えるために陛下に親政を勧め、1388年に叔父たちは遠ざけられ、1389年には陛下の顧問会議に出席して政治に関与するようになった」
「陛下にとっては叔父様たちを遠ざけた後はルイ様だけが味方であったわけですね」
「そうね。そうなると1392年に最初に陛下のご病気が深刻な状況になった時、毒を飲ませたのはオルレアン公ルイではないわね。この時怪しいのはブルターニュ公ジャン4世ね。自分の国が攻められそうになったのだから、陛下に毒を盛ってもおかしくないわね」
「ブルターニュ公ジャン4世は違うと思います。ブルターニュの人間は戦いに勝つことを自慢し、卑怯な手段は使わないでしょう」
「そうかしら?ブルターニュでもいろいろなことがあったようだけど・・・まあいいわ、陛下に親政を勧めたのはルイだけど、陛下がご病気になられてからは考えも変わったかもしれない。王太子はまだ幼い、今王である兄を殺せば自分が王になると考えても不思議ではないわ」
「そんな、怖ろしいこと・・・」
「フランス王位は誰もが狙っている。でも私は義理の弟のルイとその血を引く者には絶対に王位は渡さない。どんなことがあっても・・・」

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