41、シャルル王子の誕生(1)

文字数 942文字

 イザボー王妃様の最後の子、シャルル王子が生まれたのは1403年2月22日、冬の寒い日であった。王妃様には10人以上の子がいたが、シャルル王子の時が1番難産であった。王妃様に頼まれて私も出産に立ち会ったのだが、長い苦しみの末にようやく生まれたのだった。

「おめでとうございます。健やかな王子様でございます。今、体を綺麗にしていますから、お顔をご覧になってください」
「別にいいわ。私は難産で疲れているの。侍女のジャンヌと2人だけにしてちょうだい。王子も乳母のところに連れて行って」
「わかりました。私は隣の部屋にいますので、何かありましたらすぐに呼んでください」

 医者と他の侍女たちは部屋を出て行った。

「ジャンヌ、あなたはあの子の顔を見たでしょう?陛下とオルレアン公ルイ、どちらに似ていた?」
「どちらにと言われましても、生まれたばかりの子はお顔もはっきりしてないので・・・」
「あの子はルイの子よ。でもそのことを知られるわけにはいかない。あの子はシャルルと名付けるわ。それから洗礼式の時はジャンヌ、あなたが代理母を務めてちょうだい」
「洗礼式の時の代理母は重要な役割を持っています。王族でなく独身の私が代理母をするわけにはいきません」
「だからいいのよ。実家や婚家が有力貴族だったら、代理母をしたという理由で権力を持つわ。王太子のルイはブルゴーニュ公の孫娘マルグリットとの婚約が決まったばかり、これ以上ブルゴーニュ公に力を持たれたくないの。あなたのお兄様、ワレラン3世はブルゴーニュ公を支持しているから、代理母をしても文句を言われることもないと思うの」
「わかりました、イザボー王妃様。洗礼式の時の代理母は私が務めさせていただきます」
「10か月間私を苦しめてきたあの子はようやく私の体から離れてくれたわ。でもどうなるのかしら、あの子は生きて生涯私を苦しめるかもしれない」
「大丈夫です、王妃様。他の国では後から生まれた王子を修道院に入れるというのはよくあることです。実際に弟が兄を殺して王位を奪ったということもありましたから。王妃様は何も心配なさらずに、今はゆっくりお休みになってください」
「もし、あの子が私を苦しめるならば、私は今日という日、あの子が生まれた日を不吉な日にして生涯呪い続ける・・・」

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