第47話 アイドル戦国時代

文字数 1,045文字


 1982年にラバーズ事務所からデビューした『テイクプレジャー』はマッキーこと近見真紀(ちかみまさき)とシュンこと珠原俊一(たまはらしゅんいち)とヨシくんこと佐々木義和(ささきよしかず)の3人組アイドルユニットである。
 80年代は男女ともアイドル全盛の時代で、『テイクプレジャー』の同期にも、また前後の年にも数多くのアイドルたちがデビューしており、まさにアイドル戦国時代、名だたるアイドルたちが群雄割拠していた。
 その頂点に立つ男性アイドル養成を専門にするラバーズ事務所にはある特徴的な戦術があった。
 デビューするアイドルは皆が皆、初めはピンではなくグループでデビューさせるのである。例えば、ドラマから生まれた選りすぐりの人気者をだけを集めてみたり、楽器が弾けるミュージシャンの卵たちでロックバンド風のグループを作らせたり、運動神経のよい子供たちを訓練してアクロバティックなダンスを売りにするグループを結成してみたりと、とりあえず初めはグループで売っていく。
 そのうちその中から人気の差が出始める。そこで初めてラバーズ事務所は売り方を変えるのである。売れている者から順に単独デビューさせていく。金にものを言わせ当世名高い作詞家、作曲家に歌を作らせ、未熟なアイドルに分不相応なハイクオリティ・ソングを与えヒットチャート上位を占める。また一流の振付師にバズりそうな踊りを考えさせ、歌の下手さを視覚的にカバーする。歌だけでは物足りず、人気ドラマや映画にも出演させイメージアップを図る。こうして一人の突出したスターを作り上げていく。
 するとどうであるか、その突出したスターがいることで元のグループにもまたよい相乗効果が起きるのである。単品で売っている時とグループで売っている時で活躍の場が違うため、収益は倍増するのである。これに味をしめたラバーズ事務所は各グループで同じような戦術を施し、グループごとにスターを作り上げていった。
 ラバーズの欲が深いのはさらにそのスター同士を組み合わせて、ビッグなユニットを期間限定的に売り出したりした。ファンはこの機を逃すまいとビッグユニットのレコードやCDを買い漁り、ライブチケットを死に物狂いで奪い合った。
 この頃のファンの特性として、一人の推しアイドルだけに忠誠を誓うのではなく、気が変わればどんどん鞍替えもしたし、推しを増やすことに躊躇いはなかった。なので売り方を変えればどんどんとファンを増やせた。言うなれば延べ人数でファンを増やせばよい時代だったのだ。
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