5話
文字数 4,284文字
「おはよう。体の調子はどうだい?」
ユノを助けた翌日。
朝食とポーションを持って彼女が寝ている部屋に行ってみれば、ユノはもう目を覚ましていた。
開けたカーテンから、外の景色を見ていたらしい。
彼女もこの部屋から見える山々と湖の景色に見とれていたようだったが、すぐに僕の方を振り向いてくれた。
昨日はほぼ一日横になっていたからか、ユノの顔色もかなりよくなっている。
「おはようございます。お陰でこの通り、体は大丈夫です。その……ご心配をおかけしてすみません。それに、高価と言われるポーションまでご用意していただいて……」
ユノは申し訳なさそうに、ぺこりとお辞儀をしながらそう言う。
「いや、別に気にしなくても大丈夫だよ。それにユノに飲ませてるポーションは、高価どころかただだからさ」
ユノは一瞬目を丸くしてから、バツが悪そうに視線を逸らした。
「……フリーデンさん。そんな嘘をつかなくても、大丈夫です。魔力も体力も尽きて、死にかけていた私を即座に回復させてくれた程のポーションが、ただで手に入る訳がありません。それくらいのこと、私にだって分かります。……本当のことを言ってください。今は無理ですが、いつかお礼を……」
……成る程、そういうふうに捉えてしまったのか。
これはもう少し、気の利いた言い回しをするべきだったか。
でも今は、それはさておき。
「お礼なんかいらないよ。そんなことより、まずは気にせずこれを食べてしっかりと体力を戻すことを考えて欲しいかな。それと、ユノに飲ませているポーションは本当にただだってことを、食べ終わったら説明してあげるよ」
朝食の乗ったお盆を手渡して頭を撫でると、ユノは遠慮がちな雰囲気を出しながらも、もくもくとパンやスープを口に運び出す。
あのポーションは正真正銘、自家製にして材料も全て自分で採集したものだ。
だからお金なんかのために、ユノが気に病む必要はどこにもない。
──でも……ユノはこんな感じだし、説明するだけじゃなく、一度全部見せたほうがいいかな。
***
ユノが食事を終えた後、僕は彼女を連れて地下室に降りていた。
「この家、地下室もあるんですか。住みやすそうな家ですね」
「うん、知り合いの腕のいいドワーフに建ててもらった家だからね。僕はあまり家については詳しくないけど、きっとここは良い家だと思うよ」
「ど……ドワーフに家を建ててもらったんですか!?」
調子の外れた声を出したユノに、階段を下りる足を止めて思わず振り返る。
ユノは大きな声を出して恥ずかしくなったのか、口元を押さえて赤くなっていた。
「そうだけど……どうかしたのかい?」
ユノはさっきよりも声を抑えながら、静かに話し出す。
「だ、だって……気難しいドワーフに家を建ててもらえるのは、各国の王族や貴族くらいだって本に書いてあったので……」
「……そうなの? 意外とあっさり作ってくれたけれど」
それに彼はこの家を造り上げた時「今までの礼だ、気にするな」とか割と淡々としていたから、別段珍しいことだとは思っていなかったのだ。
ユノは「そんなことないです」と言わんばかりにブンブンと首を横に振る。
「い、いやいや……。フリーデンさん、実は貴族の出身とか……!?」
恐る恐る聞いてきたユノに、苦笑しながら返す。
「それはないよ。だって僕、昨日も言ったように半人半魔だし」
人間の王が統治している国の貴族は皆人間だし、魔王領の貴族もまた、皆由緒正しい純粋な魔族や魔物だった。
だから僕のような半人半魔の半端者が貴族になることは、後にも先にもないだろう。
階段を降りてから、地下室の重たいドアを開ける。
部屋を開けた途端にひやりとした空気を感じて、初夏の時期ということもあり、少し心地がよかった。
「さ、入っていいよ」
「失礼します……うわぁ! 色んな薬草の匂いがしますね〜」
エルフは鼻がいいというけど、ユノもそうであるらしい。
匂いに反応して、小さな鼻をすんすんとさせている。
「匂いで分かったと思うけど、ここでポーションの材料になる薬草とかを保管しているんだ。ユノに飲ませているポーションはここで僕が作ったものだから、本当にただなんだよ」
ユノは胸に手を当て、ほっとしたような仕草をした。
「……よかったです。私本当に、フリーデンさんのお財布に悪いことをしてしまったのではと……」
「もしよかったら、材料とか見ていく?」
ユノは興味津々そうに「はい」と答えてくれた。
どうもユノは心配性みたいだから一通り説明した方がいいだろうと思ったけれど、やっぱりそうした方がいいらしかった。
まずは戸棚から小さな甕を取り出して、中身をユノに見せていく。
「最初はこれ。虎仔草 って言うんだけど、今回ユノに使ったポーションの主な素材で……」
と、そこまで言ったところでユノの顔がさっと青ざめる。
「……大丈夫? 気分が悪くなった?」
地下室の空気が悪かったのだろうか、それとも病み上がりだからか。
だが首を横に振るユノは、そうじゃないとその動作で答えていた。
「……ごめんなさい。まさか、そんな貴重な薬草を使っているだなんて……」
「……へっ?」
「だって虎仔草といえば……あのソウト密林の主と言われているリンドヴルムの巣の近くからしか取れない、貴重な品じゃないですか。エルフ族の間でも、十年に一度採れれば良い方と言われる秘薬中の秘薬です。それを、私なんかのために……!」
「お、落ち着いて落ち着いて。そんなに大した物でもないからさ」
縮こまってしまったユノを、どうにか落ち着かせようと試みる。
──うーん。あの薬草、エルフ族の間だと意外と珍重されてるんだな……。
というか虎仔草自体、魔王軍時代はよく採りに出かけていたのでまさかここまで驚かれるとは思ってもみなかった。
ただ、このままだとユノが気に病んだままだと思い、次の甕を開けていく。
「それにほら、虎仔草はまだこんなに沢山あるから。その上、虎仔草よりも強い効能のポーションができる皇鳥 双葉だってこの通り甕三つ分あるんだから。虎仔草がなくなったって全然平気さ」
保管してある薬草を、順番にユノに説明していく。
これだけの量があるんだから、ポーションの材料は全然気にしなくても大丈夫……ということを、僕はユノに説明したかったのだけど……。
「……秘薬を超える神薬が……甕三つ分……!?」
予想に反して、ユノは口をポカンと開けて固まってしまった。
「……ユノ?」
彼女の正面で手を振って見ても、まるで反応がない。
そして……十秒くらい経った後。
「ふ……フリーデンさんって、一体何者なんですか!? 貴重な薬草がこんな量集まってるのは見たことありません……!」
食いつくようにユノはそう聞いてきた。
しかしそう聞かれても、前にも言った通りにしか答えられない。
「ただの半人半魔さ」
ユノはどこか納得いかなさそうではあったけど、それ以上は何も聞いてこなかった。
その後、地下室について一通り説明したところ、ユノが薬草などのポーションの材料以外にも保管してある魔法石を見せて欲しいと言い出したので、僕は戸棚からそれらを取り出して机に並べる。
「これが魔法石。永い時間をかけて、自然の中で魔力が固体化したものだね。基本的には無属性の魔力塊で、使用者の望む通りに変質させることのできる便利アイテムだよ。簡単に好きな形や材質に変化させることができるし、様々な魔法に変換させることもできる」
「うわぁ……! 綺麗!」
ユノは瞳を輝かせながら、大小様々な瓶やガラスケースに入った、七色に輝く魔法石を眺めていた。
やっぱり女の子は、こういうキラキラとしたものを好く傾向にあるんだろうか。
「ちなみにこれが魔法石の原石。それとこっちが加工済みの方で……」
魔法石を見せながら軽く説明をしていると、ユノはしばしば質問をしてきた。
「この魔法石の原石は、やっぱり炎属性の魔法で磨くんですか?」
「そうだけど、どうしてそう思ったんだい? 大体の人は……高出力の水属性魔法で加工するって思うらしいんだけど」
「うーんと……炎魔法の特性には『壊す』以外にも『加工する』っていうものもあった筈なので、きっとそうなのかなって」
「うん、大正解。ユノは歳に見合わず物知りだね」
こんなふうに、色々な質問に答えていく中……ここで浮かび上がる一つの疑問。
ユノは、本当にただのエルフ族なのだろうか?
……いや、この言い方だと語弊がある。
正確には、ユノはエルフ族の中でもかなり高貴な出身なのではないか、って思ったのだ。
エルフ族は確か、体が成長しきるまでは人間と同じように大きくなると聞いたことがある。
つまり……ユノは今、大体十四、十五歳くらいだろう。
そんな年頃の女の子は普通どの種族でも、炎魔法に『加工する』特性があるなんていう……高等な学び舎で十七から十八の若者が習うレベルの知識など、持っていないだろう。
でも、他のことも話してみた感じから、ユノは高度な教育を受けて育っているようだった。
もしかしたら、ユノは貴族の子息さん方並みに聡いかもしれない。
それにユノは見た目以上にというか……年齢に見合わずかなり礼儀正しい。
それこそ、下手をしたら同年代の騎士の子なんかよりも。
その辺りから、ユノが甘やかされずに厳しく育てられたらしいことが窺えた。
……けれど、よく考えてみたら。
ユノはさっきドワーフの友人がこの家を建てたっていう話をした時……明らかに貴族とかではなさそうな反応をしていた。
あの驚きようは、間違いなくユノの素だった。
つまりここから考えられるのは「ユノはちゃんとした教育を受けたようだけど、王族や貴族ではない不思議な生い立ち」ということだ。
こんな感じに、謎が謎を呼ぶのだけれど。
「フリーデンさん、もっと魔法石について教えていただけませんか? 私、こういうお話大好きです!」
ユノがこんなにも楽しそうだし、何より元気になってきたから、彼女が何者かって話は保留でいいかな。
それはおいおい聞く機会があれば、分かることだろうから。
ユノを助けた翌日。
朝食とポーションを持って彼女が寝ている部屋に行ってみれば、ユノはもう目を覚ましていた。
開けたカーテンから、外の景色を見ていたらしい。
彼女もこの部屋から見える山々と湖の景色に見とれていたようだったが、すぐに僕の方を振り向いてくれた。
昨日はほぼ一日横になっていたからか、ユノの顔色もかなりよくなっている。
「おはようございます。お陰でこの通り、体は大丈夫です。その……ご心配をおかけしてすみません。それに、高価と言われるポーションまでご用意していただいて……」
ユノは申し訳なさそうに、ぺこりとお辞儀をしながらそう言う。
「いや、別に気にしなくても大丈夫だよ。それにユノに飲ませてるポーションは、高価どころかただだからさ」
ユノは一瞬目を丸くしてから、バツが悪そうに視線を逸らした。
「……フリーデンさん。そんな嘘をつかなくても、大丈夫です。魔力も体力も尽きて、死にかけていた私を即座に回復させてくれた程のポーションが、ただで手に入る訳がありません。それくらいのこと、私にだって分かります。……本当のことを言ってください。今は無理ですが、いつかお礼を……」
……成る程、そういうふうに捉えてしまったのか。
これはもう少し、気の利いた言い回しをするべきだったか。
でも今は、それはさておき。
「お礼なんかいらないよ。そんなことより、まずは気にせずこれを食べてしっかりと体力を戻すことを考えて欲しいかな。それと、ユノに飲ませているポーションは本当にただだってことを、食べ終わったら説明してあげるよ」
朝食の乗ったお盆を手渡して頭を撫でると、ユノは遠慮がちな雰囲気を出しながらも、もくもくとパンやスープを口に運び出す。
あのポーションは正真正銘、自家製にして材料も全て自分で採集したものだ。
だからお金なんかのために、ユノが気に病む必要はどこにもない。
──でも……ユノはこんな感じだし、説明するだけじゃなく、一度全部見せたほうがいいかな。
***
ユノが食事を終えた後、僕は彼女を連れて地下室に降りていた。
「この家、地下室もあるんですか。住みやすそうな家ですね」
「うん、知り合いの腕のいいドワーフに建ててもらった家だからね。僕はあまり家については詳しくないけど、きっとここは良い家だと思うよ」
「ど……ドワーフに家を建ててもらったんですか!?」
調子の外れた声を出したユノに、階段を下りる足を止めて思わず振り返る。
ユノは大きな声を出して恥ずかしくなったのか、口元を押さえて赤くなっていた。
「そうだけど……どうかしたのかい?」
ユノはさっきよりも声を抑えながら、静かに話し出す。
「だ、だって……気難しいドワーフに家を建ててもらえるのは、各国の王族や貴族くらいだって本に書いてあったので……」
「……そうなの? 意外とあっさり作ってくれたけれど」
それに彼はこの家を造り上げた時「今までの礼だ、気にするな」とか割と淡々としていたから、別段珍しいことだとは思っていなかったのだ。
ユノは「そんなことないです」と言わんばかりにブンブンと首を横に振る。
「い、いやいや……。フリーデンさん、実は貴族の出身とか……!?」
恐る恐る聞いてきたユノに、苦笑しながら返す。
「それはないよ。だって僕、昨日も言ったように半人半魔だし」
人間の王が統治している国の貴族は皆人間だし、魔王領の貴族もまた、皆由緒正しい純粋な魔族や魔物だった。
だから僕のような半人半魔の半端者が貴族になることは、後にも先にもないだろう。
階段を降りてから、地下室の重たいドアを開ける。
部屋を開けた途端にひやりとした空気を感じて、初夏の時期ということもあり、少し心地がよかった。
「さ、入っていいよ」
「失礼します……うわぁ! 色んな薬草の匂いがしますね〜」
エルフは鼻がいいというけど、ユノもそうであるらしい。
匂いに反応して、小さな鼻をすんすんとさせている。
「匂いで分かったと思うけど、ここでポーションの材料になる薬草とかを保管しているんだ。ユノに飲ませているポーションはここで僕が作ったものだから、本当にただなんだよ」
ユノは胸に手を当て、ほっとしたような仕草をした。
「……よかったです。私本当に、フリーデンさんのお財布に悪いことをしてしまったのではと……」
「もしよかったら、材料とか見ていく?」
ユノは興味津々そうに「はい」と答えてくれた。
どうもユノは心配性みたいだから一通り説明した方がいいだろうと思ったけれど、やっぱりそうした方がいいらしかった。
まずは戸棚から小さな甕を取り出して、中身をユノに見せていく。
「最初はこれ。
と、そこまで言ったところでユノの顔がさっと青ざめる。
「……大丈夫? 気分が悪くなった?」
地下室の空気が悪かったのだろうか、それとも病み上がりだからか。
だが首を横に振るユノは、そうじゃないとその動作で答えていた。
「……ごめんなさい。まさか、そんな貴重な薬草を使っているだなんて……」
「……へっ?」
「だって虎仔草といえば……あのソウト密林の主と言われているリンドヴルムの巣の近くからしか取れない、貴重な品じゃないですか。エルフ族の間でも、十年に一度採れれば良い方と言われる秘薬中の秘薬です。それを、私なんかのために……!」
「お、落ち着いて落ち着いて。そんなに大した物でもないからさ」
縮こまってしまったユノを、どうにか落ち着かせようと試みる。
──うーん。あの薬草、エルフ族の間だと意外と珍重されてるんだな……。
というか虎仔草自体、魔王軍時代はよく採りに出かけていたのでまさかここまで驚かれるとは思ってもみなかった。
ただ、このままだとユノが気に病んだままだと思い、次の甕を開けていく。
「それにほら、虎仔草はまだこんなに沢山あるから。その上、虎仔草よりも強い効能のポーションができる
保管してある薬草を、順番にユノに説明していく。
これだけの量があるんだから、ポーションの材料は全然気にしなくても大丈夫……ということを、僕はユノに説明したかったのだけど……。
「……秘薬を超える神薬が……甕三つ分……!?」
予想に反して、ユノは口をポカンと開けて固まってしまった。
「……ユノ?」
彼女の正面で手を振って見ても、まるで反応がない。
そして……十秒くらい経った後。
「ふ……フリーデンさんって、一体何者なんですか!? 貴重な薬草がこんな量集まってるのは見たことありません……!」
食いつくようにユノはそう聞いてきた。
しかしそう聞かれても、前にも言った通りにしか答えられない。
「ただの半人半魔さ」
ユノはどこか納得いかなさそうではあったけど、それ以上は何も聞いてこなかった。
その後、地下室について一通り説明したところ、ユノが薬草などのポーションの材料以外にも保管してある魔法石を見せて欲しいと言い出したので、僕は戸棚からそれらを取り出して机に並べる。
「これが魔法石。永い時間をかけて、自然の中で魔力が固体化したものだね。基本的には無属性の魔力塊で、使用者の望む通りに変質させることのできる便利アイテムだよ。簡単に好きな形や材質に変化させることができるし、様々な魔法に変換させることもできる」
「うわぁ……! 綺麗!」
ユノは瞳を輝かせながら、大小様々な瓶やガラスケースに入った、七色に輝く魔法石を眺めていた。
やっぱり女の子は、こういうキラキラとしたものを好く傾向にあるんだろうか。
「ちなみにこれが魔法石の原石。それとこっちが加工済みの方で……」
魔法石を見せながら軽く説明をしていると、ユノはしばしば質問をしてきた。
「この魔法石の原石は、やっぱり炎属性の魔法で磨くんですか?」
「そうだけど、どうしてそう思ったんだい? 大体の人は……高出力の水属性魔法で加工するって思うらしいんだけど」
「うーんと……炎魔法の特性には『壊す』以外にも『加工する』っていうものもあった筈なので、きっとそうなのかなって」
「うん、大正解。ユノは歳に見合わず物知りだね」
こんなふうに、色々な質問に答えていく中……ここで浮かび上がる一つの疑問。
ユノは、本当にただのエルフ族なのだろうか?
……いや、この言い方だと語弊がある。
正確には、ユノはエルフ族の中でもかなり高貴な出身なのではないか、って思ったのだ。
エルフ族は確か、体が成長しきるまでは人間と同じように大きくなると聞いたことがある。
つまり……ユノは今、大体十四、十五歳くらいだろう。
そんな年頃の女の子は普通どの種族でも、炎魔法に『加工する』特性があるなんていう……高等な学び舎で十七から十八の若者が習うレベルの知識など、持っていないだろう。
でも、他のことも話してみた感じから、ユノは高度な教育を受けて育っているようだった。
もしかしたら、ユノは貴族の子息さん方並みに聡いかもしれない。
それにユノは見た目以上にというか……年齢に見合わずかなり礼儀正しい。
それこそ、下手をしたら同年代の騎士の子なんかよりも。
その辺りから、ユノが甘やかされずに厳しく育てられたらしいことが窺えた。
……けれど、よく考えてみたら。
ユノはさっきドワーフの友人がこの家を建てたっていう話をした時……明らかに貴族とかではなさそうな反応をしていた。
あの驚きようは、間違いなくユノの素だった。
つまりここから考えられるのは「ユノはちゃんとした教育を受けたようだけど、王族や貴族ではない不思議な生い立ち」ということだ。
こんな感じに、謎が謎を呼ぶのだけれど。
「フリーデンさん、もっと魔法石について教えていただけませんか? 私、こういうお話大好きです!」
ユノがこんなにも楽しそうだし、何より元気になってきたから、彼女が何者かって話は保留でいいかな。
それはおいおい聞く機会があれば、分かることだろうから。