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文字数 1,142文字

 修一もいることだし、私はここで別れると言ったのだが、有希ちゃんが「送って行くって約束でしょ? 男前女子が約束破っていいの?」なんて言って、私に彼女を送って行くようにせがんだんだ。
 別に

なんて、最初からそんなもんじゃないが、私も何か、もう少し一緒にいたかったんで、結局、伯母さんの家まで送り届けることにした。
 修一はと云うと、耀子さんに揶揄われるのが余程嫌なのか、有希ちゃんに私と会っていたことは内緒だと念押しし、少し後の、別の電車で帰ると言い出した。
 馬鹿な奴だ。でも分からないではない。私だってそうするだろう。6年後の再会までは会わない筈だから……。

 電車は混んではいない。私と有希ちゃんは並んで座る。時刻はもう9時を廻っていて、学生服の女子高生が園児と連れ立って電車に乗る様は、正直不思議な図柄としか言い様がない。
「晶お姉ちゃん、そういう訳だから、お財布のこと……、コーヒー券とかの代金、気にしなくていいからね」
「そういう訳にはいかないでしょう? 一万円近くしたんじゃない?」
「そんなにしてないよ。それに、あたしが誘ったんだもん。あたしが払いたい。子供だと思われて、お姉ちゃんにばかり世話掛けたくないんだ」
「有希ちゃんは、私よりずっと大人だよ」
「本当にそう思う? そうね、だったら有希、ライバル宣言しちゃおうかな!」
「ライバル宣言?」
「そう、修一兄ちゃんって格好いいでしょう? 私たち、従兄妹(いとこ)同士なんだよ。結婚だって出来るんだよ。もう少し大人になったらだけどね……」
 私は微笑んだ。微笑ましい……。いや、これはヤバいぞ! こいつは6年後、10歳を超えている。それに、既にこの知性と美貌、決して侮れない!
 私が隣を見ると、有希ちゃんは、可笑しそうにクスクスと笑っている。
 有希ちゃんて、やっぱり悪魔の一族の血筋なんだな……。

 駅に着くと、耀子さんが有希ちゃんを迎えに来てくれていた。何か「家まで来ると、修一と顔合わせたくなるでしょう?」と云うのが理由だそうだ。

 もう、逢っちゃいましたよー。

 でも、そんなこと、耀子さんにはお見通しなのかな? きっと、有希ちゃんを心配してたんだな。ま、どっちでもいいか。

 で、この事件も片付いた。長かった1日もこれで終わりだ……。

 って思っていたんだが、とんだ大間違いだった!

 家に帰った早々親父から、「昼飯も食わずに、こんな時間まで何やってやがったんだ! この阿婆擦れ!」とか言われて、夜中遅くまで説教喰わされることになっちまった。
 こりゃ、明日のテストも間違いなく悲惨な結果に終わるな。
 こんな調子で、私、本当に卒業できるのかな? 自分でもちょっと心配だ……。
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