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文字数 1,049文字

 修一は、横山沙耶とか云う女子高生を説得し、警察の方に自分から行かせる様にした。
 ま、最初が本当に冤罪で、後が脅されて万引きしてたんなら、そんなに罪は重くないだろう。
 私たちはと云うと、「それで、おしまい」って訳にゃいかないので、若干非合法な行動に出るかも知れないが、有希ちゃんと一緒に、例のドラッグストアに殴り込みに向かった。
 勿論、暴力沙汰は相手が抵抗してきた場合だけだ。基本は、「あの女が警察に行って全て吐くから」って言って、あの野郎をとっちめて遣るだけだ。
 でも、不謹慎だが……、少々やけくそになって、抵抗して来て欲しいぞ。

 ドラッグストアは駅の近く。ここから歩いても5分と掛からない。
 その途中、手を繋いで歩く有希ちゃんに、私は一つの疑問を投げかけた。
「有希ちゃん、有希ちゃんは何時から分かってたんだ? で、どうして直ぐに言ってくれなかったんだ?」
「最初からだよ。理由は秘密だけどね。でも、晶お姉ちゃんに言ったって、訳も無く信じてくれないでしょう? それに、信じたら、逆に大暴れするかも知れないと思ったの……。だから、パフェを食べて、先ず頭を冷やして貰ったの……」
 は、はぁ……。返す言葉が無いな……。
「ご免ね。あたし、晶お姉ちゃんのこと、伯母さんたちから聞いて、最初から知ってたんだ。でね、この事件のこと電話で話したら、耀子伯母さんが『晶ちゃんは何しでかすか分からないから、有希ちゃん、悪いけど、晶ちゃんの面倒見てやってくれる?』って頼まれちゃってたの……」
 おいおい、私は、園児にお目付けされなきゃならない程なのかよ……。
「もう一つ謝らなきゃいけないんだけど、あのお財布の件も、あたし、実は電車に乗る前に気付いていたの……。お姉ちゃんが、多分あのお店で落としたってことを……。だって、スカートのポケット、膨れてなくて、何にも入っていないみたいだったもん」
「おい! いくらお金持ちだからって、お金を粗末にし過ぎだぞ! あんな大金、そのまま盗まれたら、どうするんだ?」
「大丈夫だよ、修一兄ちゃんがお店にいたから。あのお財布には連絡先も入っているしね。きっと修一兄ちゃんが拾って、お店に預けてくれてる筈だもん」
 くそ、修一までいたのか……。
「何で、直ぐ言わなかったんだ?」
「ああしとけば、お姉ちゃんとお食事が出来るでしょう? あたしが奢るって言っても、お姉ちゃん、きっと遠慮しちゃうもん。あたし、どうしても、お姉ちゃんともう一度お食事がしたかったんだ!」
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