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文字数 916文字

「有希ちゃん!」
 私は有希ちゃんに、喫茶店に戻って待っている様に言おうとした。あいつのことは後日にして、今日は有希ちゃんを送ることに決めていたんだが、本人を見るとやはり黙っていられない……って、有希ちゃんの方が、もう走り出している!

 あいつは、大学生か高校生位の歳の男三人と歩いていた。
 喫茶店から駅と反対側の方に少し行くと、夜は人気の少ないオフィス街に変わる。
 遠目だし、暗くてハッキリしないのだが、私には、何か嫌がるあいつを三人が無理矢理連れ回している様に見えた。
 奴らは道路を左に曲がって行く。

 私がそこまで来ると、有希ちゃんはビルの角で待ってくれていた。
「晶お姉ちゃん、遅い! あいつら、そこの路地を右に入って行った」
 角を左に曲がると、一層暗い道になっていた。有希ちゃんによると、その道の右側にあるビルの中程にある、細い隙間の様な路地にあいつらは入って行ったらしい。
 しかし、それにしても有希ちゃんは走るのが速い。幼児とは思えない位だ。第一私たちは鱈腹食べたばかりだぞ。どうして直ぐに走れるんだ?

 私と有希ちゃんが路地を覗くと、あいつが三人の男に絡まれていた。二人が出口を左右から固め、一人が丁度、女の子憧れの壁ドンって体勢であいつに何か言っている。何でそんなんが嬉しいのか、私にゃ全く分からんけどな。
「お前、どうすんだよ! あの女見つからないじゃないかよぉ!」
「知りませんよ……」
「あいつが警察にでも行ったら、俺達のこと言うんじゃねえぞ! お前一人でやったって言えよな……、よ・こ・や・ま・さん」
「そ、そんな……」
「ドジ踏んだお前が悪いんだろうが? それとも、お前んち火つけられてもいいのかよ? お前んちの場所も学校も、俺達知ってんだぜ……」

 これまでの人生の中で、こういう場面に出くわすと、私はいつもこうなるんだ。そして必ず、後で後悔する。何度こんなことやったんだろう? 本当に懲りないと言うか、学習しないと言うか……。

「てめえら! 寄って集って一人の女の子を苛めやがって、男が恥ずかしいと思わねえのか!」
 私はそう言いながら、馬鹿正直にも、正面から路地へと入って行った。
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