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文字数 1,118文字

 その向こうの女子高生は、私の馬鹿声に驚いたのか、私に目を合わせない様に顔を伏せながら、私の脇を擦り向け、さささっと店の外へと、猛スピードで逃げ出して行ってしまった。

 その時、腕でも掴んで組み伏せておけば、こんなにも面倒なことにならなかったと思う。でも、私だって片手にボディシャンプーを持っていたし、反対側の手は手提げバックを腕に引っ掛けている。
 それに、正直、試験でやった自分の調子に乗った行動を、若干反省している所だったので、咄嗟には手が出なかった……。
 そんな訳で、私はこの女子高生が逃げるのを、つい見逃してしまったんだ。

 それでも、私はあいつを追いかけようと、手に持ってたボディシャンプーを棚に戻そうとしていたんだ。
 そこへと、この店のアルバイトらしい男が商品棚の向う側から小走りにやって来た。
「おい、さっきの奴、万引きして……」
 私がそう言ったのを、聞いたのか、聞いていないのか、男はあの女子高生が万引きしていた棚を眺めると、私の方へと駆け寄ってくる。そして、言うに事欠いて、「万引きしていたな、こっちに来い!」って、訳の分からないこと言い出した。
 確かに、ちょっと見、私の方が不良っぽいし、あっちの方が清純派の女子高生だけど、私を見るなり、なんで万引き犯だと思わなくちゃならないんだ?
「いつも、この店で万引きしてやがったのは、お前だな! 俺はさっきその棚の商品を確認したばかりなんだぞ!」
「知るか、馬鹿!」
 私はそう悪態を吐きたい所、なんとか我慢して耐えた。そして、とりあえず自分は万引きなどしていないことを、この間抜けなアルバイト野郎に、説明する必要があると考えた。私はついこの間、警察のお世話になったばかりなんだ。また何かしでかしたら、今度こそ、学校の先生やうちの両親が、私のことを本気で殺しかねない。

「私じゃないですぅ。さっき、そこにいた女の子が、鞄の中に何か入れていたみたいですぅ。注意しようとしたんですけど、走って逃げちゃったんですぅ」
 私は自分でも少し恥ずかしくなる程、ぶりっ子してアルバイト野郎に潔白を訴えた。嘘など一言も言っていないのだが、無茶苦茶情けない。
「言い訳は奥で聞こうじゃないか! 今店長は休憩してるんで、俺が話しを聞いてやる。さ、奥に休憩室があるから、ちょっと来いよ!」
 もう、試験期間中で早めに学校を引けたと言うのに、これじゃ勉強することも出来ないじゃないか! ま、勉強なんかどうせしないけどな。
 しかし、ここまで疑わられると、正直、警察でも何でも出て、白黒はっきりさせようって気になってくるな。
 親には悪いが、これは性分なんで、どうにも我慢ができない。
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