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文字数 1,016文字

 修一は、今度は例の横山沙耶っていう女子高生の方に言葉を掛ける
「おい、全部吐いちゃえよ」
「嫌よ、あいつら私が喋ったら、私を殺して家に火を点けるって……」
「そんなこと、出来る訳ないだろ? そうやって、お前が逃げてばっかいるから、あいつら調子乗るんじゃないのか?」
「あいつなら、やりかねないよ。あいつ、本物のワルなんだよ!」
「そいつは、俺と晶でこれからボコってくる。あいつだけ無傷じゃ、不公平だもんな」

 横で聞いていたのだが、私には意味が良く分からなかった。
「あいつって、誰なんだ?」
 私の疑問には有希ちゃんが答えてくれた。
「晶お姉ちゃん、横山のお姉ちゃんは『4人組』って言ったんだよ。今3人しかいなかったよね、だったら1人足りないでしょ? そいつがリーダー格。」
「そんな奴がまだいるのか? どこのどいつだ!」
「『4人組』ってことは、ボスと部下の関係じゃ無いってこと。同じような年恰好の奴だよ」
「成程。でも、そんな奴五万といるぜ。あいつらのクラスメートか?」
「良く考えて……。横山のお姉ちゃんは、万引きを疑われ、謝罪して帰された。それを4人組が、次の日強請って万引きの手伝いをさせた。
 こんな筋書きだと思うけど、どうして、横山のお姉ちゃんが罪を認めたことを、4人組が知っていたの?」
 確かにそうだ。こいつは警察に行った訳じゃない。ただ、偽りの謝罪をしただけだ。そんなの、誰が知ってるって言うんだ。
「それに、今日のことも変だと思わない? 晶お姉ちゃんが、万引きした横山のお姉ちゃんを捕まえようとしたら、逆に、晶お姉ちゃんの方が捕まったんだよね。偶然に……。まるで、万引き犯を逃がすかの様に……」
「ま、まさか……」
「何で、横山のお姉ちゃんは大胆に万引き出来たんだろう? こんなに憶病なのに……。まるで、店長とか来るのを、誰かが見張っていたみたいに安心して……」
 私にも、何となく絡繰(からく)りが読めてきた。すると……。
「そう、あのハンドソープを忍ばせたのもあいつ。そうやって罪を認めさせ、手先に使って悪事を働かせようとした……」
 これじゃ、この女子高生が冤罪を認めさせられて操られる訳だ。私だって、あれが手提げから出ていたら、冤罪を認めたかも知れない。
「で、晶、どうする?」
 修一が私に尋ねてきた。勿論、訊くまでも無い。当然、修一だって言ってみただけだろう。そんなの決まっているじゃないか!
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