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文字数 995文字

 私は有希ちゃんと電車に乗って、二つ先の駅まで足を運んでいた。
 電車は混んでいた訳ではなかったが、私たちは開かない方のドアの脇、俗に云う狛犬ポジションに陣取って、立って外を眺めていた。

 有希ちゃん曰く。
「もし、あたしが晶お姉ちゃんを騙して、あのお姉ちゃんのお(うち)を知らなかったら、晶お姉ちゃんが明日でも調べて、一人で行けばいいよ。それなら晶お姉ちゃんは有希を騙していないし、もしそうだとしても、先に嘘を吐いたのは、あたしってことになるもんね」
 そういう訳で、「騙されたと思ってついて来い!」って事らしい。

 兎に角、とんでもない子だ。
 まず、まだ幼児だと云うのに、既に私より魅力的だ。それも女性的な美しさに溢れている。この子が思春期にでもなったら、どうなってしまうのだろう?
 それに加え、この子はどう考えてもお金持ちの娘だ。着ている物の素材もいいし、デザインだって、一流デザイナーがデザインしたものに違いない。それに、習い事の先生にお小遣い貰って、財布の中に万札が何枚もあるなんて、常識では考えられない。
 何と言っても、高校生の私より遥かに頭が切れる。普通の大人じゃ絶対太刀打ち出来ない。知識も幼児のレベルを超えているし、この子が言うと、何でも正しいことの様に聞こえてくる。説得力も並みじゃない。
 人間は平等だ何て言う奴もいるが、絶対そんなのは嘘だ。私には得られないものが、既にこの子には全部揃っている。
 でも、そんなもんだ。
 美人は大抵、性格がいいし、おっとりしている。私みたいにがさつなのは、だいたい貧乏人だし、器量も良くない。女ってのは生まれながらにして、ランク付けされているものなんだ。
 私も、この子みたいに可愛くて、賢くて、性格が良かったら、誰からも愛されて、ちやほやされているに違いない。でも、私の事なんか、可愛いなんて思ってくれる奴は誰もいない……。
「そんなことないよ。みんな、晶お姉ちゃんのこと、好きだって言っているよ。有希も、晶お姉ちゃん、大好きだよ。有希、大きくなったら、晶お姉ちゃんみたいになりたいんだ」
「え?」
 有希ちゃんは私の表情を読んだのか、私を見つめてそう言った。この子は人の心を読む術も心得ているらしい。それも、私以上に。
「ありがとう。そ、そう言えば、有希ちゃんって、どんな習い事しているの?」
魔法(マジック)!」
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